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第1章:魔法学院入学編
第8話:最強賢者は盗賊を更生させる
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ユーヤの転移魔法によて衛兵駐屯地に転送された山賊たちは、強制労働施設で真面目に働いていた。
地下労働施設『クーネの洞窟』。
労働場所は洞窟だった。この洞窟では魔石を取ることができる。魔石は魔物を倒した時にも手に入る可能性があるが、地下にも埋まっていることがある。石油資源で言う油田であり、ここで人間が魔石を採掘する。
『クーネの洞窟』は衛兵駐屯地が所有しているので、収監者に労働させているのだ。
「アニキ、今日も精が出ますねぇ!」
「うむ、もう少しで今日のノルマ達成だ!」
収監者には一日のノルマが課せられている。
そのノルマは一日で百個の魔石を採掘すれば完了となる。
百個というのはそれほど難しくなく、真面目に採掘すれば二、三時間もあれば集められる数だ。
強制労働と言っても体調不良や怪我と認められれば免除されるし、いたってホワイトである。
「うっし! これで百個!」
「お疲れ様です! アニキ!」
朝の九時から初めて正午になるまでに山賊たちは採掘を終えたのだった。
昼食を摂ると、午後からは授業が始まる。
罪人は学がないためまともな仕事に就けず、犯罪に走ってしまうケースが多かった。
そのため、『教育』こそが最も重要になる。
そして、教育は単なる勉強だけではない。
眼鏡をかけたインテリ風の教員が生徒(収監者)に質問を投げる。
「町を出たら弱そうな旅人が魔物に襲われていました! あなたならどうしますか?」
「先生! それわかるぜ!」
「では答えてみてください」
髭無しの山賊の一人が指名される。自信満々のドヤ顔で答える。
「魔物を倒して旅人を助けるんだ!」
「その通りです。では、その後はどうしますか?」
「もちろん、助けてやったんだから追い剥ぎすればいい!」
教員からチョークが飛ぶ。
チョークは近くの山から採れる石灰岩を使って作られている。
「いてっ!」
チョークが山賊に眉間に直撃した。山賊はあまりの痛みに眉間を抑えた。
「バカもん! そんなことやるのは山賊だけだ。わかるやつはいるか?」
「ん」
髭有りの山賊が手を上げる。山賊たちのリーダーでアニキと呼ばれている男だ。
「助けるところまでは俺も同じだが、その先が違う。正解は安全に町まで送り届けてやるんだ」
教員は眼鏡をクイっと持ち上げ、興味深そうに眺める。
「ほう、しかしそれではあなたには何の利益にもならないのではないですか?」
「確かに、一見なんの得にもならないように見えるが、そうじゃない。『情けは人の為ならず』っていうことわざに照らせば、親切にすれば巡り巡って自分に還ってくるんだ」
教員は感服したようにうんうんと頷き、髭有りの山賊に拍手を送る。
適切な答えを示した者にはしっかりと褒めるのだ。大げさなくらい褒めることによって、収監者は満足感を得ると言われているのだ。
「まさにその通り! 親切を押し売りしてはいけない! 見返りを求めちゃいけない! パーフェクトッ!」
髭の山賊は満足そうに笑った。
「アニキすげえええ!!!!」
「その発想はなかった!!」
「やっぱりアニキは天才だ!」
「一生ついていきます!!」
☆
山賊たちの刑期は一年。
彼らは最初こそ反抗したが、衛兵の持つ『矯正プログラム』によって今では普通の青年たちになっている。いや、普通以上の好青年かもしれない。
「お前ら! 聞いてくれ!」
強制労働施設では、衛兵立ち合いなら自由に仲間を集めて言葉を交わすこともできる。
この日、髭ありの山賊が全員を集めていた。
「俺たちはここで学を手に入れた! 精神力、そして真の力も手に入れることができた! しかし、元はと言えばこれは誰のおかげだぁ?」
「ア、アニキのおかげです!」
「ちゃうわボケェ!」
「す、すみません! 衛兵の方々のおかげです!」
「それも違う! 違うこともないが、元を辿れ。俺たちを悪の道から救ってくださった偉大なお方だ!」
「も、もしかしてあの旅人……!」
「そうだ! 衛兵の方々から名前を教えていただいた。あの旅人の正体はユーヤ・ドレイクという『賢者』様だ!」
「うおおおおおおお!」
会場は大盛り上がりになる。
「お前ら、恩を受けたらどうすればいいと学んだ?」
「恩返しです!」
「そうだ! だから俺はここを出たら、俺たちをお救いくださったユーヤ様に恩返しをしたい! お前らはどうだ!」
髭の山賊は、仲間に問いかけた。
「お、俺はアニキについていきます! 恩返し、やりましょう!」
「俺もついていく!」
「俺も!」
「俺もだ!」
なんと、髭の山賊の呼びかけに全員が応じたのだった。
この中にユーヤを恨んでいる者はいない。
この後、彼らは本当にユーヤの危機を救うことになるのだが、それはまだ先の話。
地下労働施設『クーネの洞窟』。
労働場所は洞窟だった。この洞窟では魔石を取ることができる。魔石は魔物を倒した時にも手に入る可能性があるが、地下にも埋まっていることがある。石油資源で言う油田であり、ここで人間が魔石を採掘する。
『クーネの洞窟』は衛兵駐屯地が所有しているので、収監者に労働させているのだ。
「アニキ、今日も精が出ますねぇ!」
「うむ、もう少しで今日のノルマ達成だ!」
収監者には一日のノルマが課せられている。
そのノルマは一日で百個の魔石を採掘すれば完了となる。
百個というのはそれほど難しくなく、真面目に採掘すれば二、三時間もあれば集められる数だ。
強制労働と言っても体調不良や怪我と認められれば免除されるし、いたってホワイトである。
「うっし! これで百個!」
「お疲れ様です! アニキ!」
朝の九時から初めて正午になるまでに山賊たちは採掘を終えたのだった。
昼食を摂ると、午後からは授業が始まる。
罪人は学がないためまともな仕事に就けず、犯罪に走ってしまうケースが多かった。
そのため、『教育』こそが最も重要になる。
そして、教育は単なる勉強だけではない。
眼鏡をかけたインテリ風の教員が生徒(収監者)に質問を投げる。
「町を出たら弱そうな旅人が魔物に襲われていました! あなたならどうしますか?」
「先生! それわかるぜ!」
「では答えてみてください」
髭無しの山賊の一人が指名される。自信満々のドヤ顔で答える。
「魔物を倒して旅人を助けるんだ!」
「その通りです。では、その後はどうしますか?」
「もちろん、助けてやったんだから追い剥ぎすればいい!」
教員からチョークが飛ぶ。
チョークは近くの山から採れる石灰岩を使って作られている。
「いてっ!」
チョークが山賊に眉間に直撃した。山賊はあまりの痛みに眉間を抑えた。
「バカもん! そんなことやるのは山賊だけだ。わかるやつはいるか?」
「ん」
髭有りの山賊が手を上げる。山賊たちのリーダーでアニキと呼ばれている男だ。
「助けるところまでは俺も同じだが、その先が違う。正解は安全に町まで送り届けてやるんだ」
教員は眼鏡をクイっと持ち上げ、興味深そうに眺める。
「ほう、しかしそれではあなたには何の利益にもならないのではないですか?」
「確かに、一見なんの得にもならないように見えるが、そうじゃない。『情けは人の為ならず』っていうことわざに照らせば、親切にすれば巡り巡って自分に還ってくるんだ」
教員は感服したようにうんうんと頷き、髭有りの山賊に拍手を送る。
適切な答えを示した者にはしっかりと褒めるのだ。大げさなくらい褒めることによって、収監者は満足感を得ると言われているのだ。
「まさにその通り! 親切を押し売りしてはいけない! 見返りを求めちゃいけない! パーフェクトッ!」
髭の山賊は満足そうに笑った。
「アニキすげえええ!!!!」
「その発想はなかった!!」
「やっぱりアニキは天才だ!」
「一生ついていきます!!」
☆
山賊たちの刑期は一年。
彼らは最初こそ反抗したが、衛兵の持つ『矯正プログラム』によって今では普通の青年たちになっている。いや、普通以上の好青年かもしれない。
「お前ら! 聞いてくれ!」
強制労働施設では、衛兵立ち合いなら自由に仲間を集めて言葉を交わすこともできる。
この日、髭ありの山賊が全員を集めていた。
「俺たちはここで学を手に入れた! 精神力、そして真の力も手に入れることができた! しかし、元はと言えばこれは誰のおかげだぁ?」
「ア、アニキのおかげです!」
「ちゃうわボケェ!」
「す、すみません! 衛兵の方々のおかげです!」
「それも違う! 違うこともないが、元を辿れ。俺たちを悪の道から救ってくださった偉大なお方だ!」
「も、もしかしてあの旅人……!」
「そうだ! 衛兵の方々から名前を教えていただいた。あの旅人の正体はユーヤ・ドレイクという『賢者』様だ!」
「うおおおおおおお!」
会場は大盛り上がりになる。
「お前ら、恩を受けたらどうすればいいと学んだ?」
「恩返しです!」
「そうだ! だから俺はここを出たら、俺たちをお救いくださったユーヤ様に恩返しをしたい! お前らはどうだ!」
髭の山賊は、仲間に問いかけた。
「お、俺はアニキについていきます! 恩返し、やりましょう!」
「俺もついていく!」
「俺も!」
「俺もだ!」
なんと、髭の山賊の呼びかけに全員が応じたのだった。
この中にユーヤを恨んでいる者はいない。
この後、彼らは本当にユーヤの危機を救うことになるのだが、それはまだ先の話。
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