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第1章:魔法学院入学編
第16話:最強賢者は入学する
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入学式はつつがなく終わった。
特筆するようなトラブルもなく平穏そのものだった。史上初の特待生が二人だと言うことで注目はされていたようだがそれだけだ。
クラス編成は成績順に割り振られた。
入試成績の1位~20位までがSクラス、21位~50位までがAクラスといった具合で入学者200名はS、A、B、C、D、E、Fクラスの合計7クラスに分けられた。
俺とリーナは当然Sクラスだ。ここでは他のクラスに比べてより先進的な教育が施され、通常の教育プログラムに拠らない試験的な授業もあるらしい――オリエンテーションで聞いたことだ。
「答辞……あんなに緊張するなんて思わなかった!」
特待生として合格した俺たちは入学式で新入生代表として答辞を担当した。一人ずつ二度に分けるという無駄っぷりである。
「そうなのか? 俺はあまり緊張しなかったが」
「私はこんなの初めてなのよ……」
「ふむ、そういうものなのか」
入学式には何百人という生徒を目の前にして喋らなければならないわけだが、考えてみれば俺は成績トップで、観客は俺より下の成績しかいないのだ。多少の語弊はあるかもしれないが、俺には目の前の人間がカボチャにしか見えなかったな。
見るに値しないということだ。
カボチャ相手に緊張などするだけ無駄だろう?
「1-S……ここね」
入学式でもらった構内案内図を頼りに俺たちは教室に辿り着いた。
教室の中には既に半数以上の生徒が集まっている。
入学早々は知り合いのいない生徒ばかりなので、教室は静寂に包まれていた。
俺としてはウェーイ系の馬鹿が大はしゃぎしているやつがいるより落ち着くので大変結構なことである。
願わくばずっとこんな感じだといいんだが。
席も成績順で決められている。
主席は窓際の一番後ろの席で、次席はその一つ前だ。
俺が座ると、リーナは前の席に座った。
「リーナ……気づいたか?」
「気づいたって……?」
俺は入学式の時からずっと思っていたことがあった。
思っていたけれど聞く時間がなかった。
「この制服……明らかに俺だけおかしい気がするんだが」
俺の制服はリクルートスーツのように真っ黒で、他の生徒の制服とはまったく見た目が違っていた。
魔法学院にも制服はあるのだが、何種類かあるらしい。
肩には首席の証として金の紋章がワッペンのように張り付いている。
次席のリーナの肩にも銀の紋章があるんだが、制服が黒ではなく、白である。
……白も少ないが、たまに見かけることがあった。
「魔法学院の制服は職業によって分けられているらしいわ。『聖騎士』が白で馬鹿にされることは有名だったけれど……『賢者』は入学者が今まで一人もいなかったから、特注でしょうね」
「制服……分ける意味あるのか?」
「そこは私も甚だ疑問だけど、職業の優越を誇示したい輩がこの制度を決めたんでしょうね。……ずっと昔からの伝統だからいまさら言い合っても仕方ないわ」
「しかし黒は目立つよなあ……」
見る奴がみれば……いや、誰が見ても俺が『賢者』だと一発でわかってしまう。
入学試験で目立たないようにと努力していたことも水の泡だぞ。
試験結果はなぜか名前の横に職業の記載もあったし……。
「初めまして、賢者さんと聖騎士さん」
俺とリーナが話をしていると、見知らぬ女生徒に話しかけられた。
その肩には銅の紋章……三位合格者の印だ。
赤に近いピンクの髪。髪は腰まで伸びていて、瞳はルビーのような高級感がある。凛々しい顔をしていて、リーナに負けず劣らずの美少女だった。
「初めまして……えーと、君は?」
「私の名前はエリス・ウィットフォード。職業は剣士よ。……それで、あなたがユーヤ・ドレイク……賢者なの?」
「ああ、そうだけど」
俺が答えると、エリスはキッと睨んで、
「私と決闘しなさい」
腰に提げた剣を抜き、俺に向けるエリス。
「……初対面でそれはないだろ」
「あなたはファーガス・マグワイアに勝ってしまった。伝説の剣豪の一人……私がずっと目標にしてきた人だった。くじ運が悪くて入学試験で戦えなかったのが悔しかった。……でも、入学してから戦う機会はあると思った。……なのに、なのに……あなたは勝ってしまった」
「……いや、それは逆恨みだろ」
「そうよ! これは逆恨み。でも、私はあなたと勝負しないと気が収まらない。今すぐ校庭に出てきて私と決闘しなさい」
いきなり話しかけてきたと思えばめちゃくちゃ変なやつだった。
血気盛んなのはいいことだが、俺は無駄に目立ちたくないんだ。
俺はドスの利いた声でエリスに尋ねる。
「お前さ……俺に勝てる自信があって勝負を吹っかけてるのか? ファーガスでも勝てなかった男に、お前程度の実力で、本当に勝てると。本気で思っているのか?」
エリスはキリキリと奥歯を噛んだ。
「そ、それでも――」
「はーいホームルームを始めるので席についてくださいねー」
エリスが答えようとしたとき。
間が悪いことに、担任の女性教師が入室してきたのだった。
エリスは拳に力を込め、言いたかったであろう言葉を飲み込むと、席に着いた。
やれやれ、時間稼ぎは成功だったようだな。
特筆するようなトラブルもなく平穏そのものだった。史上初の特待生が二人だと言うことで注目はされていたようだがそれだけだ。
クラス編成は成績順に割り振られた。
入試成績の1位~20位までがSクラス、21位~50位までがAクラスといった具合で入学者200名はS、A、B、C、D、E、Fクラスの合計7クラスに分けられた。
俺とリーナは当然Sクラスだ。ここでは他のクラスに比べてより先進的な教育が施され、通常の教育プログラムに拠らない試験的な授業もあるらしい――オリエンテーションで聞いたことだ。
「答辞……あんなに緊張するなんて思わなかった!」
特待生として合格した俺たちは入学式で新入生代表として答辞を担当した。一人ずつ二度に分けるという無駄っぷりである。
「そうなのか? 俺はあまり緊張しなかったが」
「私はこんなの初めてなのよ……」
「ふむ、そういうものなのか」
入学式には何百人という生徒を目の前にして喋らなければならないわけだが、考えてみれば俺は成績トップで、観客は俺より下の成績しかいないのだ。多少の語弊はあるかもしれないが、俺には目の前の人間がカボチャにしか見えなかったな。
見るに値しないということだ。
カボチャ相手に緊張などするだけ無駄だろう?
「1-S……ここね」
入学式でもらった構内案内図を頼りに俺たちは教室に辿り着いた。
教室の中には既に半数以上の生徒が集まっている。
入学早々は知り合いのいない生徒ばかりなので、教室は静寂に包まれていた。
俺としてはウェーイ系の馬鹿が大はしゃぎしているやつがいるより落ち着くので大変結構なことである。
願わくばずっとこんな感じだといいんだが。
席も成績順で決められている。
主席は窓際の一番後ろの席で、次席はその一つ前だ。
俺が座ると、リーナは前の席に座った。
「リーナ……気づいたか?」
「気づいたって……?」
俺は入学式の時からずっと思っていたことがあった。
思っていたけれど聞く時間がなかった。
「この制服……明らかに俺だけおかしい気がするんだが」
俺の制服はリクルートスーツのように真っ黒で、他の生徒の制服とはまったく見た目が違っていた。
魔法学院にも制服はあるのだが、何種類かあるらしい。
肩には首席の証として金の紋章がワッペンのように張り付いている。
次席のリーナの肩にも銀の紋章があるんだが、制服が黒ではなく、白である。
……白も少ないが、たまに見かけることがあった。
「魔法学院の制服は職業によって分けられているらしいわ。『聖騎士』が白で馬鹿にされることは有名だったけれど……『賢者』は入学者が今まで一人もいなかったから、特注でしょうね」
「制服……分ける意味あるのか?」
「そこは私も甚だ疑問だけど、職業の優越を誇示したい輩がこの制度を決めたんでしょうね。……ずっと昔からの伝統だからいまさら言い合っても仕方ないわ」
「しかし黒は目立つよなあ……」
見る奴がみれば……いや、誰が見ても俺が『賢者』だと一発でわかってしまう。
入学試験で目立たないようにと努力していたことも水の泡だぞ。
試験結果はなぜか名前の横に職業の記載もあったし……。
「初めまして、賢者さんと聖騎士さん」
俺とリーナが話をしていると、見知らぬ女生徒に話しかけられた。
その肩には銅の紋章……三位合格者の印だ。
赤に近いピンクの髪。髪は腰まで伸びていて、瞳はルビーのような高級感がある。凛々しい顔をしていて、リーナに負けず劣らずの美少女だった。
「初めまして……えーと、君は?」
「私の名前はエリス・ウィットフォード。職業は剣士よ。……それで、あなたがユーヤ・ドレイク……賢者なの?」
「ああ、そうだけど」
俺が答えると、エリスはキッと睨んで、
「私と決闘しなさい」
腰に提げた剣を抜き、俺に向けるエリス。
「……初対面でそれはないだろ」
「あなたはファーガス・マグワイアに勝ってしまった。伝説の剣豪の一人……私がずっと目標にしてきた人だった。くじ運が悪くて入学試験で戦えなかったのが悔しかった。……でも、入学してから戦う機会はあると思った。……なのに、なのに……あなたは勝ってしまった」
「……いや、それは逆恨みだろ」
「そうよ! これは逆恨み。でも、私はあなたと勝負しないと気が収まらない。今すぐ校庭に出てきて私と決闘しなさい」
いきなり話しかけてきたと思えばめちゃくちゃ変なやつだった。
血気盛んなのはいいことだが、俺は無駄に目立ちたくないんだ。
俺はドスの利いた声でエリスに尋ねる。
「お前さ……俺に勝てる自信があって勝負を吹っかけてるのか? ファーガスでも勝てなかった男に、お前程度の実力で、本当に勝てると。本気で思っているのか?」
エリスはキリキリと奥歯を噛んだ。
「そ、それでも――」
「はーいホームルームを始めるので席についてくださいねー」
エリスが答えようとしたとき。
間が悪いことに、担任の女性教師が入室してきたのだった。
エリスは拳に力を込め、言いたかったであろう言葉を飲み込むと、席に着いた。
やれやれ、時間稼ぎは成功だったようだな。
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