23 / 93
第1章:魔法学院入学編
第22話:最強賢者は教師を助ける
しおりを挟む
行き止まりにつくと、教員たち六人は手足を縛られて身動きが取れなくなっていた。俺を見つけた教員たちは必死に何かを話そうとするが、口を布で塞がれていて、何を言っているのかは聞き取れなかった。
ゴブリンは、ダンジョン内に落ちていたロープや布を使って縛っていたらしい。……俺の知っているゴブリンよりかなり知能が高い。
不思議で仕方なかったのだが、俺の疑問はすぐに解決することになる。
「今助けます。もうしばらく待っていてください」
俺は背中から剣を抜いた。
魔法はトグルオン状態で【最短経路】を使えば、指のみの極少の動きで発動が可能になる。
今は手を抜いていられない。剣で戦いつつ、魔法を使うというやり方で行く。
ゴブリンの村には、ボスと思しき大きなゴブリン――ゴブリンリーダーが一匹と、ボスを取り巻く大量のゴブリンが待ち構えている。数はざっと百を超えている。
しかし、ここまで侵入しているのに先制攻撃をしてこないというのは、意外だった。思ったよりも統率が取れている。……俺たちが攻撃を仕掛ければ奴らは一斉に反撃してくるに違いない。
「二人とも聞いてくれ。俺はデカいゴブリンを叩きに行く。リーナとエリスは小さいほうを倒してくれ。……さすがに、強行突破は無理だ」
俺の説明を聞いたリーナは、意外そうな顔をした。
「ユーヤのことだから一人で突っ込むんだと思ってた。……私を頼るなんて思わなかったわ」
……確かに一人で突っ込むという方法もなくはない。だが、さすがにあの軍勢が相手だと剣だけでは対処できず、魔法を連発することになる。魔力が尽きればイレギュラーに対応できなくなってしまう。
二人の能力ならゴブリン程度は余裕で倒すことができるのだから、手伝ってもらった方が確実に殲滅できると考えたのだ。
短い付き合いではあるが、俺は二人の腕をそれなりには信頼している。この程度のことはやってのけるはずだ。
「今はもはや『訓練』じゃないからな。俺たち三人と、教員六人の命がかかってる。より確実にするためには二人の力が必要だと思ったんだ。……ダメか?」
「ううん、やっと班員らしいことができて嬉しい」
「……そうか、頼んだ。……ちなみにエリスはやってくれるか?」
「私はたとえ班長の命令でも間違っていると思ったら死んでも従わない。……でも、私も今回はそれがベストだと思う。協力するわ」
「よし、じゃあ始めるか」
俺はゴブリンの軍勢に向かって全力疾走で駆けていく。ゴブリンが襲ってきたので、俺は思いっきり地を蹴り、さらに魔法による跳躍を駆使してゴブリンリーダーに近づいていく。
同時に、エリスが剣による斬撃で俺の近くにいるゴブリンを蹴散らす。
やはり、協力を頼んで正解だった。
一方リーナは【火球】を五つ同時に放った。
五つ同時に――それもそれなりに高火力で――放つというのは同世代では俺を除けば他にいないだろう。
ゴブリンたちを焼き払い、ほとんど全ての殲滅に成功する。
「さて、ここからが本番だな」
俺は跳躍を駆使してゴブリンリーダーの背後に回り込む。
その瞬間、俺は少しだけ意識が逸れてしまった。そのせいで剣は避けられてしまった。
俺の意識が逸れたのは、奴の背中に予想外のものがあったからだ。いや……むしろ納得させられた。
【刻印】が刻まれていたのだ。
五センチくらいの黒い半月系の紋様が刻まれている。
つまり、このゴブリンリーダーは何者かに服従させられている。
強制服従魔法【テイム】は『賢者』あるいは『狂戦士』が使うことのできる魔法だ。LLOではテイムをするよりもプレイヤーが戦った方が強かったので事実上の死にスキルと化していたが、こういう使い方をするとはな。
ゴブリンリーダーがここに村を作ったのは偶然でも何でもない。誰かが仕組んだのだ。
……とはいえ、俺がするべきことは何も変わらない。
【氷柱】
十個ほどの氷柱を出し、ゴブリンリーダーを狙う。
敵は動きが速いため何発か打ち漏らしたが、三発ほどが肩に直撃し、一発は肩を貫いた。
「グオオオオオオオオォォォォォ!」
ゴブリンリーダーの呻き声が上がる。
よし、大ダメージを与えられた。もうどうにでもなる。
剣を強く握り、ゴブリンリーダーに襲い掛かる。
その直後、ゴブリンリーダーが急に方向転換した。
まずい! そっちにはエリスが……!
ゴブリンリーダーは腰に提げた袋から瓶を取り出した。
瓶の中には黄色く光る液体が入っている。
あれは間違いなく【麻痺薬】だ。格上の魔物を相手にするときは、【麻痺薬】や【毒薬】などのアイテムを駆使して状態異常を起こしてからジリジリと削っていくという戦い方をすることがある。
……拉致された教員から奪ったものだろう。
ゴブリンリーダーは麻痺薬をエリスに投げつけると、その巨体で踏みつぶそうと襲い掛かる。
エリスの脚に瓶が直撃する。
中の液体がエリスに激しく降りかかる。
だが、エリスは麻痺薬の効果をものともしなかった。
そのまま襲い掛かるゴブリンリーダーに向かって剣を振る。
油断した魔物への攻撃でクリティカル補正がかかり、強烈な一撃がゴブリンリーダーを襲う。
もともと俺の攻撃で大ダメージを受けていたゴブリンリーダーはそのまま倒れた。
……ピクリとも動かない。絶命したようだ。
「エリス!大丈夫か!? 麻痺薬が……」
「え? ……確かにかかったんだけど、全然普通に動けるけど……もしかしてあれ不良品だったのかしら」
いや、黄色い液体は発光していた。不良品ということはまずないはずだ。
その時、俺は自分がかけた強化魔法を思い出す。
「……そういえば、【麻痺耐性】をつけてたんだった」
何かあった時のための保険でつけていたのだが、こんな風に役立つとはな。
「麻痺耐性って……本当なんでもありなのね」
「まあ、無事でなによりだよ」
俺がそういうと、エリスは照れ臭そうに頬をかいた。ほんのり赤くなっている気もする。
「一応、礼を言っておくわ。……あ、ありがとね」
「ああ、どういたしまして」
ゴブリンは、ダンジョン内に落ちていたロープや布を使って縛っていたらしい。……俺の知っているゴブリンよりかなり知能が高い。
不思議で仕方なかったのだが、俺の疑問はすぐに解決することになる。
「今助けます。もうしばらく待っていてください」
俺は背中から剣を抜いた。
魔法はトグルオン状態で【最短経路】を使えば、指のみの極少の動きで発動が可能になる。
今は手を抜いていられない。剣で戦いつつ、魔法を使うというやり方で行く。
ゴブリンの村には、ボスと思しき大きなゴブリン――ゴブリンリーダーが一匹と、ボスを取り巻く大量のゴブリンが待ち構えている。数はざっと百を超えている。
しかし、ここまで侵入しているのに先制攻撃をしてこないというのは、意外だった。思ったよりも統率が取れている。……俺たちが攻撃を仕掛ければ奴らは一斉に反撃してくるに違いない。
「二人とも聞いてくれ。俺はデカいゴブリンを叩きに行く。リーナとエリスは小さいほうを倒してくれ。……さすがに、強行突破は無理だ」
俺の説明を聞いたリーナは、意外そうな顔をした。
「ユーヤのことだから一人で突っ込むんだと思ってた。……私を頼るなんて思わなかったわ」
……確かに一人で突っ込むという方法もなくはない。だが、さすがにあの軍勢が相手だと剣だけでは対処できず、魔法を連発することになる。魔力が尽きればイレギュラーに対応できなくなってしまう。
二人の能力ならゴブリン程度は余裕で倒すことができるのだから、手伝ってもらった方が確実に殲滅できると考えたのだ。
短い付き合いではあるが、俺は二人の腕をそれなりには信頼している。この程度のことはやってのけるはずだ。
「今はもはや『訓練』じゃないからな。俺たち三人と、教員六人の命がかかってる。より確実にするためには二人の力が必要だと思ったんだ。……ダメか?」
「ううん、やっと班員らしいことができて嬉しい」
「……そうか、頼んだ。……ちなみにエリスはやってくれるか?」
「私はたとえ班長の命令でも間違っていると思ったら死んでも従わない。……でも、私も今回はそれがベストだと思う。協力するわ」
「よし、じゃあ始めるか」
俺はゴブリンの軍勢に向かって全力疾走で駆けていく。ゴブリンが襲ってきたので、俺は思いっきり地を蹴り、さらに魔法による跳躍を駆使してゴブリンリーダーに近づいていく。
同時に、エリスが剣による斬撃で俺の近くにいるゴブリンを蹴散らす。
やはり、協力を頼んで正解だった。
一方リーナは【火球】を五つ同時に放った。
五つ同時に――それもそれなりに高火力で――放つというのは同世代では俺を除けば他にいないだろう。
ゴブリンたちを焼き払い、ほとんど全ての殲滅に成功する。
「さて、ここからが本番だな」
俺は跳躍を駆使してゴブリンリーダーの背後に回り込む。
その瞬間、俺は少しだけ意識が逸れてしまった。そのせいで剣は避けられてしまった。
俺の意識が逸れたのは、奴の背中に予想外のものがあったからだ。いや……むしろ納得させられた。
【刻印】が刻まれていたのだ。
五センチくらいの黒い半月系の紋様が刻まれている。
つまり、このゴブリンリーダーは何者かに服従させられている。
強制服従魔法【テイム】は『賢者』あるいは『狂戦士』が使うことのできる魔法だ。LLOではテイムをするよりもプレイヤーが戦った方が強かったので事実上の死にスキルと化していたが、こういう使い方をするとはな。
ゴブリンリーダーがここに村を作ったのは偶然でも何でもない。誰かが仕組んだのだ。
……とはいえ、俺がするべきことは何も変わらない。
【氷柱】
十個ほどの氷柱を出し、ゴブリンリーダーを狙う。
敵は動きが速いため何発か打ち漏らしたが、三発ほどが肩に直撃し、一発は肩を貫いた。
「グオオオオオオオオォォォォォ!」
ゴブリンリーダーの呻き声が上がる。
よし、大ダメージを与えられた。もうどうにでもなる。
剣を強く握り、ゴブリンリーダーに襲い掛かる。
その直後、ゴブリンリーダーが急に方向転換した。
まずい! そっちにはエリスが……!
ゴブリンリーダーは腰に提げた袋から瓶を取り出した。
瓶の中には黄色く光る液体が入っている。
あれは間違いなく【麻痺薬】だ。格上の魔物を相手にするときは、【麻痺薬】や【毒薬】などのアイテムを駆使して状態異常を起こしてからジリジリと削っていくという戦い方をすることがある。
……拉致された教員から奪ったものだろう。
ゴブリンリーダーは麻痺薬をエリスに投げつけると、その巨体で踏みつぶそうと襲い掛かる。
エリスの脚に瓶が直撃する。
中の液体がエリスに激しく降りかかる。
だが、エリスは麻痺薬の効果をものともしなかった。
そのまま襲い掛かるゴブリンリーダーに向かって剣を振る。
油断した魔物への攻撃でクリティカル補正がかかり、強烈な一撃がゴブリンリーダーを襲う。
もともと俺の攻撃で大ダメージを受けていたゴブリンリーダーはそのまま倒れた。
……ピクリとも動かない。絶命したようだ。
「エリス!大丈夫か!? 麻痺薬が……」
「え? ……確かにかかったんだけど、全然普通に動けるけど……もしかしてあれ不良品だったのかしら」
いや、黄色い液体は発光していた。不良品ということはまずないはずだ。
その時、俺は自分がかけた強化魔法を思い出す。
「……そういえば、【麻痺耐性】をつけてたんだった」
何かあった時のための保険でつけていたのだが、こんな風に役立つとはな。
「麻痺耐性って……本当なんでもありなのね」
「まあ、無事でなによりだよ」
俺がそういうと、エリスは照れ臭そうに頬をかいた。ほんのり赤くなっている気もする。
「一応、礼を言っておくわ。……あ、ありがとね」
「ああ、どういたしまして」
10
あなたにおすすめの小説
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる
暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。
授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる