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第2章:第二学院創設編
第31話:最強賢者は確認する
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翌日はレムとアミを交えていつもの筋トレだ。終わった後は、俺とティアナ以外死にそうになっている。それでも、筋トレが終わるとリーナとエリス、ティアナは俺が与えた宿題をこなした。
そして次の日、三人はしっかりと俺の書いた本を読破してきたようだ。内容を理解したかどうかはともかく、全部に一度目を通し、全体像を把握するのは大切なことなのだ。
「どうだ、オリジナル魔法は作れそうか?」
リーナに訊ねると、
「魔法式の使い方はわかったけれど、どんな魔法を作っていいかわからなくて」
「そこで悩んでいるのなら上出来だ。オリジナル魔法は自分にとって足りないものを補えるものがベストだと俺は思ってる。……そのうち自分が求めていることに気づけるさ。……ところで、エリスの方はどうだ?」
「とりあえず作ってみたんだけど……これでいいのかなって不安かな」
「ふむ、じゃあ見せてくれるか?」
「わかったわ」
エリスは腰から剣を抜き、両手で構えた。
魔法式を理解していると詠唱の必要がない。そのため、ここにいる三人は詠唱を使わずとも魔法を使うことができる。
エリスは魔法式をその場で組んで、発動させる。
彼女の剣に炎が纏い、攻撃力が上昇する。……いわゆる強化魔法だ。
「――こんな感じ」
「初めてにしちゃかなりいいんじゃないか?」
「そ、そう?」
「ああ、上昇幅が低いのだが難点なんだが、他の属性も使えるなら実践レベルで使えると思うぞ」
俺がそう言った途端、エリスの目が曇る。……あれ? 褒めているつもりだったんだが、またなんか余計なこと言っちゃったかな?
「他の属性も使えるように頑張ってみたんだけど、できなくて……やっぱりこれじゃダメよね」
「なるほど、不安ってのはそこか」
これは難しい問題だ。魔法式のソースコードを聞いて俺が修正してやればそれで済むのだが、それではエリスのためにならない。一度それをやってしまうと、エリスは俺に頼らないと何もできなくなってしまう。魔法式の問題点を洗い出し、自分で解決できてこそ一人前だ。そうじゃないとオリジナル魔法とは言えない。
逆に一度でもそれができるようになれば自信がつくし、慣れれば必要に応じてその場で簡易のオリジナル魔法を作ることもできるようになる。
「……よし、俺に名案がある」
「なにかしら?」
二人の目線が俺に突き刺さる。
「リフレッシュだ」
「……へ?」
「オリジナル魔法の創造は一度沼にはまるとしばらく抜け出せなくなる。最短で抜け出すには、リフレッシュするのが一番だよ」
「で、でも学院対抗戦はもうあんまり日がないし……」
「そんな時だから、時間は有効に使うべきだ。焦って当日まで何の対策もできないのが一番もったいないからな」
「……そんなものかしら」
エリスはどこか不満がありそうで、リーナは不安が籠ったような、そんな顔をしていた。
「ティアナはどのくらいできるようになった?」
「ええと……とりあえず剣を形にするところまではできました。……でも不安定で」
「本を読み終えてからだと実戦は何度もできてないんだろ? めちゃくちゃ順調だぞ」
「そ、そうなんですか!?」
「ああ、いやまさかティアナがここまでできるとは思わなかったよ。魔力操作が苦手だって言ってたからな」
「……いえ、多分魔力操作がうまくいかなくて剣の形が安定しないんだと思います」
ティアナは少し伏し目がちで答える。
「ほう……」
素直に感心してしまった。これは俺の想定以上に順調だ。
「ど、どうかしましたか?」
「自分の問題点まで認識できているのなら、マスターするのも時間の問題だな。半年くらいかかるかもと思ってたが、案外もっと早く使えるようになるかもしれないぞ?」
「本当ですか!?」
「それはティアナの頑張り次第だけどな」
「……私、頑張ります!」
ティアナは両手をグ―の形にして、やる気に燃えていた。
「早速だから、二人のリフレッシュも兼ねてティアナの剣製を確認しようと思うんだが、大丈夫そうか?」
「えっ!? これからすぐですか?」
「うん? そのつもりだが」
「わ、わかりました……! 頑張ります」
リーナとエリス、ティアナを連れて、魔法演習室を出た。
そして次の日、三人はしっかりと俺の書いた本を読破してきたようだ。内容を理解したかどうかはともかく、全部に一度目を通し、全体像を把握するのは大切なことなのだ。
「どうだ、オリジナル魔法は作れそうか?」
リーナに訊ねると、
「魔法式の使い方はわかったけれど、どんな魔法を作っていいかわからなくて」
「そこで悩んでいるのなら上出来だ。オリジナル魔法は自分にとって足りないものを補えるものがベストだと俺は思ってる。……そのうち自分が求めていることに気づけるさ。……ところで、エリスの方はどうだ?」
「とりあえず作ってみたんだけど……これでいいのかなって不安かな」
「ふむ、じゃあ見せてくれるか?」
「わかったわ」
エリスは腰から剣を抜き、両手で構えた。
魔法式を理解していると詠唱の必要がない。そのため、ここにいる三人は詠唱を使わずとも魔法を使うことができる。
エリスは魔法式をその場で組んで、発動させる。
彼女の剣に炎が纏い、攻撃力が上昇する。……いわゆる強化魔法だ。
「――こんな感じ」
「初めてにしちゃかなりいいんじゃないか?」
「そ、そう?」
「ああ、上昇幅が低いのだが難点なんだが、他の属性も使えるなら実践レベルで使えると思うぞ」
俺がそう言った途端、エリスの目が曇る。……あれ? 褒めているつもりだったんだが、またなんか余計なこと言っちゃったかな?
「他の属性も使えるように頑張ってみたんだけど、できなくて……やっぱりこれじゃダメよね」
「なるほど、不安ってのはそこか」
これは難しい問題だ。魔法式のソースコードを聞いて俺が修正してやればそれで済むのだが、それではエリスのためにならない。一度それをやってしまうと、エリスは俺に頼らないと何もできなくなってしまう。魔法式の問題点を洗い出し、自分で解決できてこそ一人前だ。そうじゃないとオリジナル魔法とは言えない。
逆に一度でもそれができるようになれば自信がつくし、慣れれば必要に応じてその場で簡易のオリジナル魔法を作ることもできるようになる。
「……よし、俺に名案がある」
「なにかしら?」
二人の目線が俺に突き刺さる。
「リフレッシュだ」
「……へ?」
「オリジナル魔法の創造は一度沼にはまるとしばらく抜け出せなくなる。最短で抜け出すには、リフレッシュするのが一番だよ」
「で、でも学院対抗戦はもうあんまり日がないし……」
「そんな時だから、時間は有効に使うべきだ。焦って当日まで何の対策もできないのが一番もったいないからな」
「……そんなものかしら」
エリスはどこか不満がありそうで、リーナは不安が籠ったような、そんな顔をしていた。
「ティアナはどのくらいできるようになった?」
「ええと……とりあえず剣を形にするところまではできました。……でも不安定で」
「本を読み終えてからだと実戦は何度もできてないんだろ? めちゃくちゃ順調だぞ」
「そ、そうなんですか!?」
「ああ、いやまさかティアナがここまでできるとは思わなかったよ。魔力操作が苦手だって言ってたからな」
「……いえ、多分魔力操作がうまくいかなくて剣の形が安定しないんだと思います」
ティアナは少し伏し目がちで答える。
「ほう……」
素直に感心してしまった。これは俺の想定以上に順調だ。
「ど、どうかしましたか?」
「自分の問題点まで認識できているのなら、マスターするのも時間の問題だな。半年くらいかかるかもと思ってたが、案外もっと早く使えるようになるかもしれないぞ?」
「本当ですか!?」
「それはティアナの頑張り次第だけどな」
「……私、頑張ります!」
ティアナは両手をグ―の形にして、やる気に燃えていた。
「早速だから、二人のリフレッシュも兼ねてティアナの剣製を確認しようと思うんだが、大丈夫そうか?」
「えっ!? これからすぐですか?」
「うん? そのつもりだが」
「わ、わかりました……! 頑張ります」
リーナとエリス、ティアナを連れて、魔法演習室を出た。
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