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49話 最悪の正体
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「ふっ、よけいなことを」
白衣の堕天使のその言葉から、どうやら、炎の壁を生み出したのは奴本人ではなく、銀仮面だったようだ。
「お怪我はありませんか?」
銀仮面はバルサロッサの隣に降臨した。銀仮面の声音に僕の心臓が跳ねる。
どこか聞き覚えのある声……違う、僕はその声を確実に知っている。まさか……いや、そんなことが……あるはずがない……。頭の中でよぎるそのまさかを全力で否定する。
「そんなことより、首尾はどうだった?」
「はい、うまくいきました。まもなく、両国とも陥落するでしょう」
「なに言ってんのよ! 今、侵攻してるクラシカル軍の中にレベルレッドが数人いたとしても、
そんな簡単に落ちるわけないわ! 」
「せやで! 四天翼が守護してるんやからな!」
ミランとルンが銀仮面の言葉に反論しているが、僕の頭の中は銀仮面が何者なのか? それだけだった。
心の底からその正体に怯えている自分がいる。
「まあ! 犬みたいにワンワン吠えて、うるさいわねぇ。あっ、でもこれを聞けば、すぐにキャンキャンに変わるかしらぁ」
ベルリッタは憎らしい笑みをこぼして、
「その四天翼が仇なのよねぇ」
「どういうこと?」とミランが即座に反応した。
「えっとねぇ、バル」
「ベルリッタ!」
なにかを説明しようとしたオカマ悪魔を鋭い口調で制す銀仮面。顔をこわばらせて、押し黙るベルリッタ。これだけで、どちらが力関係において上なのかがわかる。
「絶望は小出しにしてやらないと面白くないだろ。何度でも、絶望で歪む顔を見たいからな。くくく……それと……」
銀仮面の視線が僕を見据える。ドクンと再び心臓が飛び跳ね、瞬間冷たいものが背中を幾度も走り抜ける。
そして、奴は僕が想像していた最悪の名前を言い放つ。
「久しぶりだな。神月アレル」
人間だった時の恐怖の記憶がフラッシュバックする。
消えろ……消えろ……消えろ消えろ……消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろー!!!
「うわああああああー!」
僕は頭の中が真っ白になり、いつのまにか全力で雷系の攻撃魔法を放っていた。
「……むん!」
しかし、奴は片手でそれを打ち消した。奴の尾は赤く発光していた。それを見た途端、無力感に絶望する。
「感動の再会だというのにたいそうな挨拶じゃないか。また、俺を殺すつもりだったのか……神月ちゃんよぉ」
奴は銀仮面を外した。そこには僕の脳裏にこびりついて離れない顔が存在していた。奴はニヤリと口角を上げた。ゾワゾワと恐怖の塊が心の底から込み上げてくる。
「なんでお前がこの世界に……」
「ふん、そんな事……俺はバルサ様に悪魔にしてもらったんだよ!」
そして、恨みや憎しみとも取れる目つきを僕に浴びせる。
白衣の堕天使のその言葉から、どうやら、炎の壁を生み出したのは奴本人ではなく、銀仮面だったようだ。
「お怪我はありませんか?」
銀仮面はバルサロッサの隣に降臨した。銀仮面の声音に僕の心臓が跳ねる。
どこか聞き覚えのある声……違う、僕はその声を確実に知っている。まさか……いや、そんなことが……あるはずがない……。頭の中でよぎるそのまさかを全力で否定する。
「そんなことより、首尾はどうだった?」
「はい、うまくいきました。まもなく、両国とも陥落するでしょう」
「なに言ってんのよ! 今、侵攻してるクラシカル軍の中にレベルレッドが数人いたとしても、
そんな簡単に落ちるわけないわ! 」
「せやで! 四天翼が守護してるんやからな!」
ミランとルンが銀仮面の言葉に反論しているが、僕の頭の中は銀仮面が何者なのか? それだけだった。
心の底からその正体に怯えている自分がいる。
「まあ! 犬みたいにワンワン吠えて、うるさいわねぇ。あっ、でもこれを聞けば、すぐにキャンキャンに変わるかしらぁ」
ベルリッタは憎らしい笑みをこぼして、
「その四天翼が仇なのよねぇ」
「どういうこと?」とミランが即座に反応した。
「えっとねぇ、バル」
「ベルリッタ!」
なにかを説明しようとしたオカマ悪魔を鋭い口調で制す銀仮面。顔をこわばらせて、押し黙るベルリッタ。これだけで、どちらが力関係において上なのかがわかる。
「絶望は小出しにしてやらないと面白くないだろ。何度でも、絶望で歪む顔を見たいからな。くくく……それと……」
銀仮面の視線が僕を見据える。ドクンと再び心臓が飛び跳ね、瞬間冷たいものが背中を幾度も走り抜ける。
そして、奴は僕が想像していた最悪の名前を言い放つ。
「久しぶりだな。神月アレル」
人間だった時の恐怖の記憶がフラッシュバックする。
消えろ……消えろ……消えろ消えろ……消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろー!!!
「うわああああああー!」
僕は頭の中が真っ白になり、いつのまにか全力で雷系の攻撃魔法を放っていた。
「……むん!」
しかし、奴は片手でそれを打ち消した。奴の尾は赤く発光していた。それを見た途端、無力感に絶望する。
「感動の再会だというのにたいそうな挨拶じゃないか。また、俺を殺すつもりだったのか……神月ちゃんよぉ」
奴は銀仮面を外した。そこには僕の脳裏にこびりついて離れない顔が存在していた。奴はニヤリと口角を上げた。ゾワゾワと恐怖の塊が心の底から込み上げてくる。
「なんでお前がこの世界に……」
「ふん、そんな事……俺はバルサ様に悪魔にしてもらったんだよ!」
そして、恨みや憎しみとも取れる目つきを僕に浴びせる。
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