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4.あらすじと一連の流れ

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 まずこの宴は、学園卒業祝宴とそれに伴い社交界に出る学生たちのための祝宴でした。
この祝宴でそこまで多くはないが、そこそこに婚姻関係を結ぶ人たちがいます。

今回は私の兄、ピオニーとその婚約者であるロザリア様もそうだったのです。

さてそんなお二人の出会いは、小さいころ辺境にて行われた狩猟大会だったそうです。
(あと言いたくないのですが、アスター殿下も参加されており、この時お兄様に一目ぼれされたそうです)

この時のお兄様は実は体が弱く、日に当たってないために色白で華奢な体躯をしており、余計に女の子のような姿でした。

対するロザリア様は日に焼け浅黒く、当時にしては大きめな体、男勝りな口調のため男の子の様に見えたそうです。

そんな二人が出会い、互いの容姿をうらやましがるのは必然でした。

二人は邂逅以降、手紙のやり取りをして交流を深めていき、公爵家よりお兄様に婿入りを前提としての婚約話がきたのでした。

ちなみにお兄様は嫡男でしたが、体の問題で家を継げるかわからなかっため私も当主となるべく勉学を励んでいたので、お兄様が婿入りするには何も問題はありませんでした。

こうしてお兄様とロザリア様は祝宴日にて婚姻と相成なるのですが、そうは問屋が卸さないと申しますか。

例の第二王子、アスター殿下が祝宴にてリリー様と婚約を解消し、お兄様にプロポーズしようとする動きがあるとタレコミが入りました。
その情報をもたらしたのはリリー様ご本人でしたが。

リリー様とロザリア様はご友人で、お兄様とはご学友関係で仲が良く、アスター殿下に困らされていることをよくご相談しあっていました。

そしてついに恐れていた事態が起こり、急遽王城にて緊急会議が行われたのでした。
関係者が一堂に会した部屋では、重々しい空気満ちていた。

「それでアスターは今期行われる卒業の宴にリリー嬢に婚約を解消するよう告げる、と」

最初に口を開いたのは国王陛下で、頭が抱えながら悩ましげでした。
その隣では同じように悩まし気に顔を青くした王妃様が座っていました。

「はい。アスター殿下についている方々からそのように報告が上がっております」

リリー様は平然そうに告げる隣では、苦々しい顔で聞いているのは父親であるサヴェッチーナ侯爵様。
実はこの婚約は王家からの打診だったので、はらわたが煮えくり返っているのだろう。
けれどもリリー様自身はそこまでの感情はないように見えましたね。

「で、婚約を解消しようとする理由が、バストア伯爵家のピオニー子息、と」

「そのとおりにござます」

この一言にはお怒りが感じられました。
先ほども述べた通り、学友であるお兄様に粉をかけているのは遺憾なものだったのでしょう。
何よりその対面に座るロザリア様は、空気そのものが怒りの塊でした。

「陛下。私はピオニー様の婚約者として、アスターを許しません」

ロザリア様の隣には父親であるディゴロス公爵もいらっしゃいますが、こちらは面白そうに笑っているだけですね。
補足ですが、公爵は陛下の弟君です。
王位争いが起こる前に、自ら公爵家へと養子に行かれた方で争いをあまり好まない方と思われがちですが、そうではなく、国王になって国を治めるのが面倒くさいという理由で、養子に行かれた方です。
そんな彼ですから、今回の件で彼がどのように出るのか皆様気をもんで見守っております。

「陛下。いえ、ここではあえて兄上と呼ばせていただきますが」

「なんだ」

「兄上は、彼をどうするおつもりでしょう?」

お怒りの様子に陛下もお顔が余計に青くされております。

「はっきり言ってしまえば、王族籍を抜き、辺境に兵として送り込もうとも思っている」

「ほう、そうですか」

にこやかな顔の下では何を考えておられるのでしょうか。
ですが、これでアスター殿下はもうお仕舞いですね。

(それとこの会議には当事者のピオニーお兄様と付き添いでお父様の名代の私アイリスも参加させていただいておりました。)

これにてある程度にはことが決まったので、あとのことは祝宴当日となったのでした。
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