妄想魔法~科学を添えて~

るいす

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第3話 離脱

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 勇次たちが冒険者ギルドで受けた初めての依頼は、思ったよりも過酷だった。掃除や物資の運搬という単純な依頼ながら、異世界の環境に不慣れな彼らは見知らぬ道具に苦戦し、体力を使い果たしていた。

 夕暮れが近づくころ、ようやく依頼を終えてギルドに戻った彼らは、わずかな銅貨数枚を手にした。これが彼らの新たな生活のスタートを意味していた。

「お疲れ様、よくやったな」

 ギルドの男性は、労いの言葉と共に銅貨を手渡してくれた。その表情には同情の色が見え隠れしていた。勇次はその視線に気づきつつも、笑顔で礼を述べ、生徒たちを連れてギルドを後にした。外に出ると、石畳の街が夕日に染まり、通りを行き交う人々の影が長く伸びていた。

「先生…次はどうしますか?」

 生徒の一人、田中が尋ねた。彼の顔には疲労が色濃く、他の生徒たちも同様に疲れ切っていた。

「まずは宿を見つけよう。少しでも休んで、明日のために体力を回復しよう」

 勇次はそう言い、一行を導いた。街を進むと、小さな宿屋の看板が目に入った。古びた木製の看板には「旅人の休息所」と書かれており、その下には灯りがともった窓が並んでいた。

 宿屋に入ると、中は暖かく、安らぎのある雰囲気が漂っていたが、全員で雑魚寝の部屋を1つとるのがやっとだった。生徒たちは疲れ切っていたが、その場で力を振り絞り、少しだけ笑顔を見せた。

「今日は本当にお疲れ様。明日はまた新しい一日が待っている。まずはゆっくり休んで、力を蓄えよう」

 勇次はそう言って生徒たちを寝かしつけ、自分もベッドに横になった。しかし、彼の心は休まることはなかった。この異世界で生き抜くためには、彼らの知識と力だけでは限界がある。何か、もっと強力な手段が必要だと感じていた。

「妄想魔法…本当にこの世界で役に立つのか…?」

 彼は自問自答しながら、深い眠りに落ちていった。次の行動への計画が徐々に形を成し始めていた。

 翌朝、勇次が目を覚ますと、部屋には男子生徒たちと中村の姿が見えなかった。彼は慌てて周囲を探すと、宿のカウンターに残された書置きを見つけた。書置きには、田中、鈴木、佐藤と中村が駅馬車の資金を調達し、街から離れる決断をしたことが記されていた。

「街の外に出るには、ここではどうにもならないと判断しました。勇次先生、どうかご自愛ください」

 書置きを読み終えた勇次は、深いため息をついた。残された高橋と中村は、まだ宿に残っていた。

「残った二人と話し合い、現状からの脱却を計画しなければ」

 勇次は高橋と中村を部屋に呼び、スキルを確認しながら今後の計画を立てることにした。

「おはようございます、勇次先生」

 高橋が眠そうな目をこすりながら挨拶した。中村もまた、朝の陽射しを浴びながら、少し困った表情を浮かべていた。

「おはよう。みんな、すっかり寝てしまって…残念だったが、書置きを見たか?」

 勇次は書置きを取り出し、二人に見せた。高橋は読み終えた後、少し考え込むように眉をひそめた。

「田中たちは、駅馬車で街を出る決断をしたんですね…それだけ状況が厳しかったってことか」

 中村も頷きながら言った。「そうね。私たちも今のままではどうにもならないかもしれないわ。スキルをうまく使って、現状を打破する方法を考えましょう」

「その通りだ」と勇次は応じた。「高橋さんのスキル『原子操作』は、物資や資源の管理に役立つかもしれないし、中村さんの『鑑定』で周囲の状況を分析して、最適な行動を決めるための情報を集めることができる」

 高橋は少し考えた後、「例えば、街で手に入る物資や資源を効率よく管理して、私たちの手元に必要なものを揃えることができるかもしれません。それに、私のスキルで資源の特性を調べることもできますから、無駄なく使えるようにしましょう」

 中村はうなずきながら、「それに加えて、私の『鑑定』で見つけた情報をもとに、どこで物資を調達するのが最も効果的かを判断できます。何か価値のあるアイテムや情報があれば、それを元に次の行動を考える手助けになるかもしれません」

 勇次はその提案を受け入れ、「なるほど、それならうまく連携すれば、現状を打破するための方法が見つかるかもしれない。まずは情報収集と物資の整理から始めよう」

 三人はそれぞれのスキルを最大限に活用し、状況改善に向けた計画を立てるための準備を始めた。高橋は街で入手できる物資の選別や管理方法について考え、中村は周囲の状況を詳細に分析するための調査を始めた。勇次はその様子を見守りながら、次のステップに向けた計画を練り続けた。

「今の状況を打破し、少しでも良い方向に進めるために、私たちの力を最大限に活用しよう」

 勇次は決意を新たにし、計画を進めるための準備を進めた。新たな試練が待ち受ける中、彼らの奮闘が続いていく。
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