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2章:ダンジョン調査編 〜未知の法則を探る〜
第12話:ダンジョンの攻略と静寂
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成虫型の魔物との戦いから、四日が経過した。
その間、一体の魔物も現れていない。
ファシムたちを使って、いつもの出現地点を監視し、洞窟の奥も定期的に調査させている。それでも、新しい芋虫も、サナギも、成虫も見つかっていない。
「……何もいないまま、四日か」
洞窟の奥では、焼却したサナギの灰が風に散っている。死骸はすでに処理済み。足跡も、粘液の跡もない。生き物の気配すら、まるで感じない。
異様な静けさ。
最初の一日、俺はほっとした。二日目には不安になった。三日目には、何かがおかしいと確信した。そして今日、四日目には、ようやく一つの言葉が頭に浮かぶようになった。
「……終わった、のか?」
倒し続けたから?サナギを焼いたから?それとも、別の原因が?
分からない。けれど、この沈黙は確かに異常だ。
俺はファシムたちに命じ、洞窟の奥の出現地点と、縦穴周辺を重点的に再調査させた。何かしらの兆候があるかもしれない。だが、報告はすべて「異常なし」。
サナギが再び形成される様子もなければ、成虫が戻ってきた形跡もない。縦穴から差し込む風が、ただ冷たく流れているだけだった。
「……これで、本当に終わったのか?」
戦って、焼いて、掃除して。ここまでやって、ようやく静寂が訪れた。
けれどそれは、望んでいたはずの平穏であると同時に、予期しなかった“虚無”でもあった。
洞窟内には、今や十二体のファシムが活動している。 毎日一体ずつ、俺は新たなファシムを生み出してきた。死んだファシムは、ひとり。だから今、俺の分身たちは十二体。
水汲み、掃除、監視、探索、火の管理。それぞれが分担し、効率的に拠点を維持してくれている。まるで小さな集団のように、日々の生活は整い始めていた。
そんな中、洞窟の奥から一体のファシムが戻ってきた。
「発見報告。洞窟奥の石壁前、台座の上に物体を確認」
「物体?」
「金属製。形状は細長く、先端が尖っている。表面に加工の痕跡あり。持ち帰った」
そう言って、ファシムはそれを俺に手渡してきた。
それは、見たことのない素材でできた細長い道具だった。木でも石でもない、硬く、冷たい感触。重さは見た目以上にある。台座の上に置かれていたということは、偶然ではなく、何者かが意図して残したものだ。
「……これは」
意味も分からぬまま、俺はその道具にそっと指を触れた。次の瞬間——
「っ……!」
指先に、鋭い痛み。見ると、薄く血がにじんでいた。
切れた?
俺は驚きながら、その細長い金属をもう一度見つめた。……これは、切れる道具。物を、傷つけるためのもの。
「こんな道具があるのか……」
これがあれば、もっと効率的に魔物を倒せるかもしれない。肉を裂き、殻を割り、繭を貫く。火だけに頼らず、手に持って扱える力。
「でも……誰が、こんなものを?」
この洞窟は自然のものだと思っていた。だが、台座の存在。そしてこの“道具”。
ここには、俺以外の“誰か”がいた。あるいは、まだ“いる”のかもしれない。
だが、ふと頭をよぎる。もしかすると——これは、この洞窟、いやダンジョンを攻略した“報酬”なのではないか?
魔物が現れなくなったタイミング、明らかに不自然な静けさ、そして偶然とは思えない台座の存在。あまりに出来すぎている。だが、そう考えれば筋は通る。
この道具は、俺が生き延び、戦い抜いた結果として与えられた“何か”なのかもしれない。
洞窟の静寂は、戦いの終わりを告げる鐘のようだった。けれど同時に、何か新しいものの始まりでもある——そんな気がしていた。
《現在のファシム数:12体(新たに1体生成)》
1体:洞窟の入り口で監視
2体:洞窟の奥の探索(縦穴調査含む)
2体:周辺の見回りと警戒
2体:死骸処理・清掃
2体:生活支援(水汲み・調理補助)
1体:外部環境の調査補助
1体:ナイフ発見・報告
1体:控え(予備待機)
その間、一体の魔物も現れていない。
ファシムたちを使って、いつもの出現地点を監視し、洞窟の奥も定期的に調査させている。それでも、新しい芋虫も、サナギも、成虫も見つかっていない。
「……何もいないまま、四日か」
洞窟の奥では、焼却したサナギの灰が風に散っている。死骸はすでに処理済み。足跡も、粘液の跡もない。生き物の気配すら、まるで感じない。
異様な静けさ。
最初の一日、俺はほっとした。二日目には不安になった。三日目には、何かがおかしいと確信した。そして今日、四日目には、ようやく一つの言葉が頭に浮かぶようになった。
「……終わった、のか?」
倒し続けたから?サナギを焼いたから?それとも、別の原因が?
分からない。けれど、この沈黙は確かに異常だ。
俺はファシムたちに命じ、洞窟の奥の出現地点と、縦穴周辺を重点的に再調査させた。何かしらの兆候があるかもしれない。だが、報告はすべて「異常なし」。
サナギが再び形成される様子もなければ、成虫が戻ってきた形跡もない。縦穴から差し込む風が、ただ冷たく流れているだけだった。
「……これで、本当に終わったのか?」
戦って、焼いて、掃除して。ここまでやって、ようやく静寂が訪れた。
けれどそれは、望んでいたはずの平穏であると同時に、予期しなかった“虚無”でもあった。
洞窟内には、今や十二体のファシムが活動している。 毎日一体ずつ、俺は新たなファシムを生み出してきた。死んだファシムは、ひとり。だから今、俺の分身たちは十二体。
水汲み、掃除、監視、探索、火の管理。それぞれが分担し、効率的に拠点を維持してくれている。まるで小さな集団のように、日々の生活は整い始めていた。
そんな中、洞窟の奥から一体のファシムが戻ってきた。
「発見報告。洞窟奥の石壁前、台座の上に物体を確認」
「物体?」
「金属製。形状は細長く、先端が尖っている。表面に加工の痕跡あり。持ち帰った」
そう言って、ファシムはそれを俺に手渡してきた。
それは、見たことのない素材でできた細長い道具だった。木でも石でもない、硬く、冷たい感触。重さは見た目以上にある。台座の上に置かれていたということは、偶然ではなく、何者かが意図して残したものだ。
「……これは」
意味も分からぬまま、俺はその道具にそっと指を触れた。次の瞬間——
「っ……!」
指先に、鋭い痛み。見ると、薄く血がにじんでいた。
切れた?
俺は驚きながら、その細長い金属をもう一度見つめた。……これは、切れる道具。物を、傷つけるためのもの。
「こんな道具があるのか……」
これがあれば、もっと効率的に魔物を倒せるかもしれない。肉を裂き、殻を割り、繭を貫く。火だけに頼らず、手に持って扱える力。
「でも……誰が、こんなものを?」
この洞窟は自然のものだと思っていた。だが、台座の存在。そしてこの“道具”。
ここには、俺以外の“誰か”がいた。あるいは、まだ“いる”のかもしれない。
だが、ふと頭をよぎる。もしかすると——これは、この洞窟、いやダンジョンを攻略した“報酬”なのではないか?
魔物が現れなくなったタイミング、明らかに不自然な静けさ、そして偶然とは思えない台座の存在。あまりに出来すぎている。だが、そう考えれば筋は通る。
この道具は、俺が生き延び、戦い抜いた結果として与えられた“何か”なのかもしれない。
洞窟の静寂は、戦いの終わりを告げる鐘のようだった。けれど同時に、何か新しいものの始まりでもある——そんな気がしていた。
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