俺がいつのまにか勇者になるまで

カフェイン

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第38話 広域拡散魔法

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 記者会見が終了して全員が控室に戻る。
 俺はなんだか少しめまいがしているが、激しい閃光を目にしたせいだろうか?
 すこしフラフラとしていると理香子と忠司が声をかけてきた。

 「弘樹くんお疲れ様。大丈夫? 顔色良くないけど」
 「弘樹、お前大丈夫か?」
 「うーん、さすがにちょっと疲れたかな、それより皆も大変なことになったね」
 「まぁそうだけど、お前の助けになるなら願ったりかなったりだわ」

 裕也や大智も会話に混じってくる。

 「ここの所、おまえしんどそうだったもんな、何か手伝えないかって思ってたわけだし、丁度いいよ」
 「でも俺たちに何ができるんだろうな」
 「そんなのあたし達が心配する事じゃないと思うわよ? どうせあの内藤さんが私たちを引っ掻き回すんでしょ」

 「杉浦君分かってるじゃないか! ワハハハハ! みんなお疲れ!」
 「うわっ!?  ご、ごめんなさい内藤さん」

 俺達がそんな話をしていると、内藤さんが彩の背後から近寄りツッコミを入れると、他の関係者もぞろぞろと入って次々に座り始める。
 
 「「「みなさんお疲れ様です」」」
 「あとは、今夜か明日のニュースで報道されてからどうなるかって所ですかね」
 「まぁ、大丈夫じゃろ」
 「一時はどうなるかと思いましたけどね」

 西園寺さんと笹山さんも終わって一安心といった感じのようだ。
 内藤さんは、他の出席者に改めてお礼を言う。

 「みなさん本当にご協力ありがとうございました、これで炎上が収まれば、サイテックもサイテリジェンスも、北村君も神代君も救われることになります。本当にありがとうございました」

 筋書きを描いた俺も手伝ってくれた人たちにお礼を言う。

 「皆さんのおかげで本当に救われました、ありがとうございました」
 「わ、私もご迷惑おかけしました」

 神代も便乗して頭を下げると内藤さんが話し出す。

 「それに、従業員自由勧誘制度の方もご検討いただければと思います」
 「JMNでは週末にも検討に入る」
 「私は、来週頭に会合があるので、そこでこの件を議題にするつもりですよ」

 西園寺さんに加え、大泉さんまで本気で考えてくれるようだ。
 恐らく、政治家や権力者が集まるような会合でこの制度を討議しれくれるという事だろう。本当に日本が動き出しそうな勢いだ。

 「そうそう、それと、事後の確認で申し訳ないが、杉浦君の言う通り市川君達はこれから少し私に振り回されてもらう事になるけど大丈夫かな?」
 「検品作業の方はどうなるんでしょうか」
 「新しい従業員が増え始めてるから、今後スケジュールに余裕が出てくると思うんだ、その辺管理してるのは北村君だし多分大丈夫でしょう、アハハハ」

 「内藤さん! スケジュール管理結構大変なんですよ?」
 「頑張ってくれたまえ! 君は勇者だろ? ワッハッハッハ」

 まぁ、終わったというか、俺的にはついに始まってしまったという感じだ。
  
 今までプロモーション撮影やテレビ収録など、怒涛の様な数週間を過ごしてきたが、まだそれらはほとんど表には出ていない訳だが、今日の会見が今晩か明日の、新聞やニュースで報道され初めて表に出て行く事になる。

 今後どうなっていくのかはまだ分からないが、これからは忠司や理香子を含めた6人パーティとして魔人に振り回されていくんだろう。
 メンバー全員がそんな覚悟をし、今回助けてくれた沢山の人に感謝をしつつ、日本を動かすかもしれない壮大な出来レースは終わった。





 会見後自宅の部屋に戻ると、少し具合が悪い俺はベッドで横になっていたらいつのまにか眠ってしまった。

 そして、いつか見た変な夢を見る。
 俺が勇者で皆を連れて冒険しているRPGの様な夢だ。
 以前見た時は、中ボスに工場長の堀川さんが現れたが、今回は違った。
 
 俺はゲームの様な世界観のどこか懐かしい景色の街並みを6人パーティで歩いている。すれ違う町の人は俺達を歓迎してくれ、小さな子供が寄ってきて花飾りを渡してきたり、見知らぬ大柄なオッサンが俺の肩をバンバン叩いてなぜか泣いて喜んでいる。

 町中が俺達勇者一考を歓迎ムードで迎えてくれている。
 そうして石畳に馬車が行きかっている大通りを歩いていると、また誰かに突然声を掛けられる。

「おおお!? 北村達君じゃないか! どうしてここに!?」

 夢に内藤さんが現れた。
 俺の夢の中でも神出鬼没過ぎる魔人だが、まぁ元々そういうイメージを持ってるからこうなるのは必然なんだろう。
 
「どうしてって、俺達、世界を救うために冒険をしてるんですけど、内藤さんこそなんでここに?」
「私か? 私は、つまり、そうだな……色々と準備があってだな……」
「なんの準備ですか?」
「それはまだ言えないなぁ、でもいいのかい? こんなところでウロウロしてて」

 そう言うと内藤さんは、いつものニヤリ顔をする。

「こんなところ? というか、ここはどこだ?」
「ほら、誰かが呼んでるよ?」
「呼んでる? 誰が……?」

 ん、なんだっけ、なんか俺大変なことになってたはずだよな……。
 その瞬間、電話のコール音に驚いて目を覚ます。

「んお!? なんだ、何時だ?」

 俺は早めに寝てしまっていたみたいだが、中途半端に起されてまだ寝ぼけたまま慌ててスマホを手に取ると。

「弘樹かい!? あんたなにやってんのよ!?」
「ほぁ? かーちゃん? 何って寝てたよ……」

 時計を見ると夜の12時過ぎだった。

「さっきテレビでニュース見てたら、突然あんたが出てきてびっくりしたわよ!」

 母は23時のニュースを見たんだろう。
 そこでおそらく今日の会見の様子が報道されたんだと思う。
 俺は眠い目をこすりながら言う。

「あー、色々忙しくて事前に伝えられなくて無くてごめん。早く伝えようとはしてたんだけど、俺にも驚く事ばかり続くんで連絡できんかったんよ、ごめん」

「あんたどういうことになってるのよ!? なんであんた元総理大臣といっしょにテレビにでてるのよ!」

 そりゃ驚くよな、息子が突然元総理大臣やテレビ局の大物とテレビに出てるんだもんな。

「ええっと……説明すると、バイトしてた会社に引き抜かれて社員になったら広報課に入れられてタレントになることになってテレビ番組にでたんだけどネットで炎上してそれが会社にも飛び火したから炎上を鎮めるためにいろんな人に手伝ってもらってどんどん大ごとになってその結果記者会見することになったって感じ?」

「ちょっと何言ってるのか全然わかんないわよ! ちゃんと説明しなさい! お父さんも心配してるのよ?」

そっか、そりゃそうだよな、一人息子が突然テレビ出て世間を騒がせたんだから。

「じゃ、明日帰って説明しようかなって思うんだけどどうかな?」
「明日!? まぁ、別に大丈夫だけど……」

 やっぱ一度会いに行ってちゃんと説明するべきだろう。
 でも大学中退のままの俺的に親父に合わせる顔が無いというのが、今まで連絡できなかった理由でもある。面と向かって話すのには勇気がいる。
 そんな事を思っていると……。

「あ、お父さんが変われっていうから、変わるわね」
「う、うん……」
「おー、弘樹か?」
「親父ごめん。突然テレビとか出ててびっくりしたよな、心配かけてほんとごめん。明日、行ってちゃんと説明しようと思ってるんだけど……」
「そんなのはどうでもいい」
「どうでもって……」

「そんな事より嫁はまだか? お前もうじき25だろ。以前彼女連れてくるって言うから待ってるんだぞ?」
「う、わかったよ、一緒に行ってくれるか聞いてみるよ」
「そうか! かあさん……明日弘樹が来るそうだぞ!」
「ガチャン! ツーツーツー」

「う、それだけ聞いたらいきなり切るか……流石親父だ」

 いつも心配してくれてるのは知ってるのに、大学中退して顔合わせづらいという理由で色々説明してなかったし、今は理香子の事もある、今後の事もある。そういうもろもろ含めて今回の事もちゃんと説明しに行かないとだよな。

 でも明日会社に行けば、きっと色々な人に聞かれるだろう。この先サンライズビルでのお披露目もあるだろうし、雑誌の取材とか車内広告とか色々あるんだろう。

 「これから忙しくなるんだろうなぁ、その前にちゃんと説明しなきゃな……」

 記者会見という名の広域拡散魔法により俺の顔が日本全国に知れ渡った訳だが、俺のやるべき事は山積みである。

「頑張ら、ない、と、なぁ……ふわぁぁぁ」

 しかし、母からの電話でたたき起こされた俺は、また謎のRPGの様な夢の世界へいざなわれるのであった。
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