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† 三の罪――死神と演武(ワルツ)を(伍)
しおりを挟む「惜しい方をなくしましたね。展男さんほどの実力者がまさか倒れるとは」
「まさか、あの戦闘が彼との別れになるなんて……最後に見た、少し疲れましたって言った彼の後ろ姿、今でも忘れられないよ」
「……激しい戦いだったんですね。やっぱプロでも怪魔の前じゃいつ死ぬかわかったもんじゃねーな」
追憶の扉も程々で閉ざし、俺も会話に戻る。
「いや、死んでないよ。植物状態だけどね」
言葉づかいこそ柔和なままの多聞さんだが、仲間を慈しむようなまなざしが、戦闘の壮絶さや、助けられなかった無念を物語っていた。
「誰もあのときの彼に近づける状況ではなくてね」
やはり、彼らでも余裕がないほどの死闘だったのか。
「あの現場、むごかったですね。頭が派手に割れて…………」
「真っ赤に染まったタイル、痛々しかったなあ」
「タイル……?」
「ああ――――」
俺の疑問に、遠くにいる彼を見つめるかのように顔を上げる多聞さん。
「戦闘後、シャワーを浴びに行って二度と目覚めぬことになるとは思わなんだ」
「えっ、シャワー? タイル…………」
ようやく理解した。つまり、俺は風呂場で足を滑らせて再起不能になった人より下らしい。
何はともあれ、まだまだ修行が足りないということを痛感させられた一日だった。
† † † † † † †
(また、信雄が強くなってる…………)
口ではああ言ったものの、新人の頃より見てきた桜花は、彼の成長を最も実感していた。
「ぼくも早く強くならないと、チーム多聞丸の初期メンバーで残っているのは、もうぼくだけ……このままじゃ、次はぼくが――――」
独り言をこぼしながら、夜の回廊をゆく。日本支部の最下層、地下五階の奥にある倉庫の隠し扉を開け、彼女はまだ進んだ。
(……緊急用の裏通路――よし、だれも来てないみたい)
さらに細工された床面をずらし、僅かな隙間から滑り込む。内部は意外に開けており、儀式の痕跡を消した痕跡と、霊脈上に位置しているゆえか、ほのかに、しかし黒々と澱んだ魔力が漂っていた。
日本支部の開設が二〇一七年。最初から何らかの意図でこれを仕組んだか、あるいは九年の間に何者かが改造して活用したのか。いずれにせよ、過去に使われたのは年単位の昔であり、組織の関係者、それも高等な魔術に通じ、本部の構造を知り尽くしている地位の人間だ。桜花が魔術型の妖屠でなければ見逃してしまっただろうが、この異様な空気に足を踏み入れれば魔術師でなくとも、あまり気持ちの良いことが行われたのではない、と直感するに違いない。
そして、悪魔の召喚は「名目上」厳禁。このような場所を把握している立場の者が表だって破ることはできないというのも、予測を裏づける。
(……少なくとも一柱や二柱じゃない……悪魔の大量召喚。つまり、この部屋は――――)
一度、地獄とつながった。
(ともかく、ルシファー並の悪魔を召喚するには――ここしかない……!)
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