討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 四の罪――現世(うつしよ)の邂逅(参)

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「虫ではないわ! なにゆえここには吾輩も知らぬ阿呆しかおらんのだ。まさか、ご主人さまも存ぜぬというのならば、たっ……ただじゃおかぬぞッ!」
 まくし立てて、顔を近づけてくる。小学生ほどの体格だが、羽を小刻みに動かして、目線を合わせているようだ。語勢に反して、高度を維持するのに精一杯なのか、必死にプルプルしている様子が申し訳ないけど滑稽だった。
「ああ、あいつなら俺ん中だ」
「なっ――そち、喰ったのか……ご主人さまを喰いおったのかー!」
 さらに顔を赤くするベルゼブブ。
「いや、どっちかっつーと、あいつの方から侵入してきた」
「フン、そちごときにご主人さまが敗れるなど有り得ぬものな」
 彼女は一変して、鼻を鳴らす。忙しいヤツだ。
「……なんであんたが偉そうなんだよ」
 恐ろしい悪魔と有名だが、残念ながら威厳は皆無である。しかし、三条のばつの悪そうな表情と、室内の空気がこの僅かな間で腐敗するかのように濁ったことから、本物に相違なさそうだ。
「偉そう? 当然だ。吾輩はバアル、ベリアル、アスモデウス、アシュタロトとともに魔界四天王としていふされ、その中でも筆頭として――」
「四天王なのに五人いんのかよ」
「まあ今さら名を変えるのもな…………」
「って、ホントにベルゼブブかいー! 最強クラスの悪魔が二体も……やめて! 中間管理職おじさんの胃袋をこれ以上痛めつけないでー。ってなわけで、成仏してもらうのってだめ?」
「こっくりさんじゃねーんだし、戻し方なんてわからんすよ。ほら、アドラー先生だっけ? 多聞さんのお気に入りの学者さんも未来志向がうんたらっつーノリじゃないすか」
「……ええっと、霊とちがって式神みたいに、地獄にいる悪魔のコピーが契約者の魂を燃料に維持されてるんだっけ?」
「うむ、そうじゃぞ」
 胸を張って、本人が回答する。
「だからなんで自慢げなんだよ」
「……たしかに、召喚しちゃったものは仕方ない。よし、その代わり、条件が一つある!」
 やはり頼れる上司。多聞さんに視線が集まる。なんだかんだで、この人は解決策を考えてくれるから、俺たちはついて来られた。
「僕のこと、お父さんって呼ぶこと。そしたらチーム多聞丸で面倒見てもいいです」
 本能的な危険を察知したのか、壁際までベルゼブブが飛び退く。
「……いや、だってお父さんって呼ばれたいじゃん」
「まだ俺らは何も言ってないっすよ」
「ほら、この前さ、同級生を見かけたら親子連れで……やっぱ憧れるよねー。いや、まあ僕だってこの仕事じゃなかったら、選り取りみどりでとっくに美女とゴールインしてるけどね」
「ま、こいつよりは望みあるんじゃないすかね」
 口を閉ざしたまま多聞さんを凝視している三条の肩に、手を乗せた。
「き……きみだって似たようなものでしょ! って、勝手にさわらないで。今の犯罪だよ」
「軽くポンってしただけじゃねーか。くっそ、どうせ犯罪になんなら胸にしときゃ良かった……」
「やっぱり下心あるじゃん。法廷で会おう!」
「あんた法廷がどんだけ大変か知ってんのかよ」
「そういうそっちこそ知ってるの?」

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