討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

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† 六の罪――第三の悪魔(弐)

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「アダマースの何代も前身が退治にかかわったっていう千年前のおっかない鬼だって、首を斬られたら死んだ。茅原くんがとろうとしているのは日本の頭。同僚が怪魔を見逃せないことを知る彼が、ここにアダマースうちらを釘付けにして狙うのは――」
「筆頭執政官のいる、行政省……?」
 政治はさっぱりな俺でも、内閣制度が廃止されてから日本の舵取りをしている機関ぐらいは答えられた。
「――千代田区で茅原知盛と思わしき人物が目撃されたようです!」
 飛び込んできた無線に、顔を見合わせる。
「やっぱ怪魔は囮だったかー。たのんだよ。所長にも応援を派遣するよう言ってみる」
 曇ってもいなかった空が、ふいに泣き出した。それどころではないのに、じっと三条が手の平を眺めている。
「この雨……」
「んだよ、雨ぐらいで気を取られてる場――え、赤……い……?」
 ぞっとして多聞さんに目を移すと、彼は大海原の果てにいる何かを睨むように見つめていた。
「悪魔の現れる前兆だよ。血の洗礼、だったかな。たしか地獄大公――」
「夏でもないのに陽炎が……!」
 続きを遮るようにして、口々に騒ぎ始める後方の兵士たち。多聞さんは溜息をつき、煙草を手に取る。
「行きな。もうすぐここは、地獄になる」


 大穴と火災で変わり果てた路上。十数人の兵士が倒れ、苦悶の呻きを上げている。
(今ので全員やられたか――なんて腕だ……!)
 辛うじて生き残った俺は、ビルの影に転がり込み、息を整えていた。行政省の屋上に、僅かな手勢と立つ茅原を発見し、先手を取ることに成功。開幕一斉射撃で茅原以外を全滅させたが、それからの数十秒は、誰一人として一撃も与えられなかった。
「って、うおァッ! ちょ、跳弾!? こっちの位置は見えねーハズ……やはり使い魔のサポートか」
 何発かの銃弾が意思を持っているかのように、頬を掠めてゆく。
(……止んだ、のか……?)
 再び訪れた静寂。まるで空気までもが彼の殺意の的になることを恐れ、息を潜めているようだった。
「――ッ!? いきなり風が……!」
 風に乗って、茅原の足音が聞こえてきそうなほどの威圧感に、身震いする。
「あらゆる要素から瞬時に判断し、最適な動作を最短で行う。研ぎ澄まされた直感と磨き上げられた予見。武の頂に至らずして達せない極地。お前に見破れるか」
 近づいてくる声は、落ち着いていながら、心の奥底にまで刺さるようだった。方向を見極め、両脇のビルを壁蹴りで駆け上って、彼の頭上から銃撃を放つ。が、
「不意討ち以外に芸はないのか」
 呆れたように目を瞑った茅原に、真後ろに滑り退いて易々と躱された。
「うそ……だろ……?」
 着地してからも、すかさず追撃を浴びせ続けるが、波にでも乗っているかのように身体を揺らして避けられるばかりだ。
「……この距離なら剣の方が速い。抜け」

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