50 / 139
† 八の罪――剣戟の果てに(漆)
しおりを挟む「お前……何者だ?」
「しがない外交官だ――――」
そう返すと、彼は声を落とし、付け加える。
「……アダマースという組織に顔がきく、というだけのな」
「ア、アダマース……!?」
満足気に首肯して、おもむろに歩み寄る青年。
「そこなら政府も手が出せない。これ程の大事をしでかして揉み消せるような社会ではないことぐらい、お分かりであろう? 駆け込み寺も選ばねばな。世間を欺いて生きるとあらば、裏組織以上に適した隠れ蓑は無い。なにせ、とある軍人が戦地に赴く折、自らが敵兵になすであろう所業が耳に入らぬよう、保護していた少女の預け先に選んだのだとかな。確か、三条桜花といったか。アダマース入りすれば、彼女との再会も果たせよう」
あれほど緊張感に包まれていた人質たちが、彼ら二人を残して、眠りに落ちてゆく。
「次は共に変えてやろうではないか。貴殿が与して下さるというのであれば、今回の件、上手く収拾をつけよう」
若き外交官は、銃を押し退けると、不敵な笑みと共に右手を差し出した。
「……やっとわかったよ、あの日の外交官さん」
屍の山を背に、返り血で染まった高機動三輪に乗り込む中年男。
「真に倒すべき敵は、近すぎて見えていなかったんだねえ――――」
そう呟いて愛機を始動させると、彼は来た道を遡って疾走り出した。
† † † † † † †
気づかれるようでは、刺客として二流。つまり、多聞さんが足止めした連中とは別に、本命が――――
「お出ましか」
小高い丘の上に、大鎌を携えた少女を頂点とし、十数人の人影が並んでいた。
「北畠みつき……」
緊張が混じっている三条の息。
「きみは彼女と戦ったことがあるよね。雑魚は引き受けるから、みつきをなんとかして」
とんでもないことを勝手に言ってくれる。俺は深呼吸をすると駆け出し、
「いや、その必要はねーよ」
天高く跳躍した。
「まとめて突破する」
剣に竜巻を纏わせ、上空から一薙ぎで大半を吹き飛ばす。茅原がやっていた技だが、ルシファーと一体化しているからか、見真似でそれっぽいのは出せたようだ。
「寝過ぎちゃったみたいだわ。ちょっとウォーミングアップに付き合ってくれよ」
着地すると間髪入れず、生き延びた数人が襲いかかってきた。残らず蹴散らす。みつきとの攻防にこいつらが割り込めるとは思えないが、彼女に挑むからには、どんなに小さな懸念でも取り除いておきたかった。
「どうした? 俺らを殺しにきたんじゃなかったか?」
遅い。茅原の後だと、止まって見える。
みつきは一歩も動くことなく眺めていたが、同僚が全滅したのを見届けると、デスペルタルを起動させ、大鎌を成した。
「よう。また踊ってくれるとは照れるぜ」
模擬戦のときと同じように、約十メートルを挟んで相対する二人。
ただ、あの日と違うのは――どちらかが死なねばならないということだった。
0
あなたにおすすめの小説
結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。
佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。
結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。
アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。
アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる