討妖の執剣者 ~魔王宿せし鉐眼叛徒~ (とうようのディーナケアルト)

LucifeR

文字の大きさ
64 / 139

† 十一の罪――さくら花 散りぬる風の なごりには(弐)

しおりを挟む

 目覚めた彼の視界に広がっていたのは、見たことのない天井だった。
「お目覚めかい? あ、左目は開けないほうがいい。まあ開けたところで適合しかけている段階だろうから、今は見えにくいと思うけどね」
「……病院じゃねーな。これはなんのつもりだ?」
 少年は傍らの中年男性に、自身の身動きを封じている不可視の何物かについて問う。
「助かったと思いきや、俺は答えらんねーようなことをされてるっつーわけだ」
「どうするんですか? その高校生」
 ドアの向こうから、ふと若い女の声が発せられた。
「気になる? おじさんに聞かれても、上層部が決めることだからさ。ま、異性との新たな出会いに胸躍らせたくなる年ごろなのはわかるけどねー」
「そ、そういうのじゃありませんっ!」
「じゃあどういうのかなー」
 勢い良く入ってきたのは、凛としていながらも可憐さを兼ね備えた少女。
「うおっ、すっげーかわいい子……!」
 思わず信雄が感嘆すると、彼女は一瞬だけ寂しげに表情を曇らせ、口をつぐんだ。
「あんた俺と同じぐらいの歳だろ? いい予感はしなかったが、こんな女の子も戦うような組織か……俺の鼻も正常に機能してるらしい」
 両名の視線を同時に感じ、彼は付け加える。
「あー、ちょっと武人の臭いには敏感でよぉ。そっちのおっさんも、相当やべーな」
「にしては、ずいぶん落ち着いてるねー」
「こいつを上手いこと外せたとこで、二人ともなんとかできるような相手じゃねーっつーことも同時になんとなく理解ったもんでね。警察呼んで好転するとも考えにくくてよ」
「いい読みだ。うちらは日本を含む各国首脳の理解と援助の元で活動してる組織でね。任務地でのことは政治、国防関係によっぽど影響がない限りは、法律や警察に左右されないってわけ」
「ベラベラしゃべっちゃってくれてっけど、俺を帰すつもりはねーってことか」
 それまで飄々としていた大男は、目つきを一変させて信雄を見定めた。
「……だったら、どうする?」
「弁護士を呼んでくれ」
「……ふっ。いやー、おもしろいねー、君っ! 警察がだめなのに弁護士ときたかー。気に入ったよ。えらい人たちにお任せする気まんまんだったけど、ちょっくら上にかけあってみるかな」
 上機嫌そうに部屋を後にする男。残された少女も、早足で退室する。
「……新たな出会いなんかじゃ、ないもん――――」
 廊下に出た彼女は、名残惜しげに振り返り、憂いを帯びた瞳でドアを見つめた。


「えー、喜多村班が武蔵野市で怪魔との戦闘中に保護した少年・緑川信雄の処遇じゃな。柚木」
 日本支部の面々が大テーブルを囲んで着席すると、柚木が指名される。
「過去の目撃者同様に処理すればよい話かと」
「記憶を消す、と」


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

魚夢ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他

猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。 大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。

処理中です...