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† 二十の罪――執剣者(参)
しおりを挟む「感情論? 当たり前だ! 大当たりだよ。非合理的だと馬鹿にすりゃいいさ……でもな、そんな非合理的な存在である人間に生まれて良かったと思っている――それが俺の感情だ。感情をもって生まれたことを嬉しいと思う、その感情が俺を動かす! 俺は自分の感情に基づいて、そのために誰よりも動いてやる!」
あの日そうして、何人にも御せないと畏怖される魔王に、俺が売ったものは――――
「たいそうな理屈もねえ。掲げる理想もねえ。俺はただ、理不尽に奪われる命を全力で護り抜く! そのために、俺は有限を差し出したんだ」
彼に奪われた代償は、自分の存在を終わらせられる権利。
そして、彼から与えられた得物は、対象の存在を打ち消せる魔剣。
「そっちが心を壊すのなら、こっちは存在を消す剣で応じよう……! 塗り潰される前に、喰らい尽くしてやる!」
その刃が本領を発揮すれば、次元だろうと否定する。それが今の俺にとって、この悪趣味なブラックホールから脱出する、唯一にして最善の方法。
「つまりあんたは逃げたんだろ。でも、俺は人と向き合うことを諦めない!」
あの全身が分解しそうな反動に、極限状況下の精神が耐えられる保証はない。
それでも――――
「不可能ってのは、やってみた上で言えることだろ。俺はやるよ」
自分に言い聞かせるようにして“魂喰いの魔剣”に燃料を送った。
「そう決めたんだ」
浴びせられる悪夢を幻と散らせてゆく。
「そう誓ったんだ」
どこが痺れているのか、もはや判別できない。だが、ここで止まろうものなら、永遠に封じられてしまう。
「そう――歩んできたんだ!」
遂に維持できなくなったのか、暗室は灰に帰していった。
「……あんたは怪魔に呑まれたが、俺は飲み干す側なんだよ」
再び対峙した象山を睥睨して、カルタグラを構え直す。
「ならば私一人も倒せずに、何かを救おう等と思い上がるなよ」
「分かってるさ――これで決着だ」
かき乱され、散り散りになっている意識を集中させた。
「この身は常勝不敗なれど、己が手に真なる勝利を掴む日まで、我が渇望は修羅の先に在り」
ルシファーとの連動が復活したからか、技の再現に躊躇がない。
「そ、その詠唱は……!」
象山の隻眼が見開かれる。
「如何なる屍山血河とて、我が歩み止めるに及ばず」
勝者が魔力を回してくれているということは、その歩みは止められてしまったのだろう。
「ふ……ふざけるな、お前が登輝の真似事など……っ!」
限界を迎えたはずの四肢に、みなぎるパワーが心地良い。
「立ちはだかる者を幾度となく討ち果たすだろう」
紡ぎ終わると時を同じくして、満ち溢れた魔力が燦然と輝きを放った。
「――――推参。あんた自身が生み出した秘術に全てをかけた友の奥義で、信じることの強さを思い知ってもらうぜ。“狂気の人間凶器”……!」
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