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† 二十の罪――執剣者(陸)
しおりを挟む振り返れば、いつも彼がいた。
「兄貴、ついに外交官になったんだね! おめでとー!」
「ありがとう。でも、これは第一歩だからさ」
「平和への第一歩だね。兄貴が話し合いで解決できなかったときのために、俺は剣道もっと強くなっとくよ!」
「ははは。それは頼りがいがあるけど、勉強もしなきゃだめだぞ。これからは教えられる時間も少なくなっちゃうけど、ちゃんと頑張れよ」
そばにいられないときでも、俺の心を支えてくれていた。
あのときだって、兄貴の未来を俺が往くって決めたから、とんでもない組織に巻き込まれてもやっていけた。
(――――親父、兄貴、俺は人をやめてしまいました。ちょっと怖いけど、人を超えることで、兄貴の分も人を護れるようになります。俺はまだそっちには行けないけど、誰よりも頑張るから、誰よりも見守っててください)
本当に、誰よりも見ていてくれたんだね。
(兄貴……俺、兄貴の道を歩けてるかな――――)
「手を緩めるな! お前はその身に魔を宿し、魔を討つ戦士だろう? それとも、その自覚が能力に追い付いていないのか!?」
息もつかせぬ攻防の中、彼の大喝が耳朶を打つ。
「お前までもが奴等に屈し、我々兄弟の夢を、夢で終わらせる気か……?」
「……被害者ヅラしやがって。あんたが死んで辛かったのは、あんただけじゃねーよ」
ひときわ激しく紫電を纏わせ、俺は必滅の刃を振り上げた。
「さようなら……兄貴――――」
魔剣に分断された黒霧が消散してゆく。
しかし、
「だが、甘かったな弟よ」
さらなる再生を経て、なおも食い下がる異形。
「この俺がこんな傷で死ぬ小悪党だと思ったか? 何もかも捨てた罪がこの程度で消える訳無いだろう! お前の磨いてきた技を、手に入れた奇跡を、その覚悟の凡てをぶつけろ……!」
彼はすべて、と言った。
(カルタグラでも潰しきれないか……!?)
もはや他に俺の知り得る大技といえば、ルシファーが初めて会った日に怪魔の大群を跡形もなく消し飛ばした、桁外れの奥義しかない。
(だったら――こいつとの重ね技ならどうだ……!?)
目にしたのは、あれが最初で最後。我が魂を燃やしきりかねない反動だろうが、ここで迷うようなら、あんなもの易々と放つような相手なんかに心身を売ったりはしない。
「汝等の滅びを以て」
そう己に言い聞かせたときには、彼の詠唱を口にしていた。
「世界を浄化せん」
莫大な魔力が迸り、俺を内外から焼き尽くそうとする。
「死んじゃうよ!」
三条の叫びが飛び込んできたが、俺はさらに出力を集束させた。
「死ぬようならそんだけの命だったってことだろ? まだまだ終わる気はないんでね。脱落者っつーのは、運命を変えられなかった連中のことを言うんだよ。死を待つだけだった俺の運命を変えてくれたルシファーの一撃で、今度は俺が未来を照らし出す!」
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