ミゼラブルの雫

玖莉李夢 心寧

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番外2 君への誓い side翔

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 俺は雪斗のことを、実は最初嫌いやった。


  自分に無い優しさが眩しすぎて俺は嫌いやった。


  予知の能力がありながら、助けられた命は微々たるもの。


  特に人の生死が関わるものにはブロックが掛かっていて、手の施しようがなかった。


  何かできそうになっても、見た未来以上に悲惨なことになることが多くて俺は何度も一人で己の罪に嘆いとった。



  中でも自分の身内がそうなった時、俺は今までにないほどの悲しみと苦しさを知ったんや。



  それから俺は極力自分にとっての特別を作らんように、周りに壁を作って冷たくなるようになった。


  今の俺とは想像もつかないくらい、トゲトゲしかったかもしれへん。笑顔の仮面の下はいつも無表情やった。


  誰にでも優しくて接する雪斗は、俺にとってただの馬鹿な奴としか思えなかったと同時に、羨ましくもあった。


  こんな力が無ければ、俺は周りに冷たくすることもなく、雪斗以上にみんなに好かれる存在になるんだと思っていた。


  己の罪を、開き直れたらどれだけいいんやろうか。己の無力さをどれだけ嘆けば気持ちは晴れるんやろうか。


  そんな時に雪斗が声を掛けてきた。あまりに暗い雰囲気を出すから邪魔くさくって、と後に雪斗言った。雪斗が辛口になるのも、大抵が俺だけやから、結構嬉しかったりする。


  その時の雪斗はこう言ってきた。


 「なんか思い悩んでるみたいだけどさ、難しく考えない方がいいんじゃない? 事情は知らないし、境遇は人それぞれあるんだろうけどさ、夏目は色々考えすぎだと思うんだよね。とりあえずさ、全部忘れたら?」


  何を勝手なことを言っているんだろうと、内心憤ったのを覚えている。


 「忘れるのは罪でも逃げでもないよ。人にとって大切なことだよ。それこそどうしようもない理不尽な事なら尚更にね。思い出すのは全部落ち着いて向き合える時にゆっくりでいいんだよ」


  何も知らないはずの雪斗だったが、その言葉はすとんと俺の胸の中に落ちた。


  何故だかほっと知っている己に驚いた。


  そして皆に好かれている理由を知ったと同時に、俺は雪斗に惹かれ始めていることに気が付いた。


  それからちょっかいを掛けない日は無かった。


  幼馴染という瀬那 隼人と風紀委員長の土御門 晴明の牽制に何とか耐えながら雪斗といられる時間が幸福だった。


  しかし、それがすぐに崩れ去ってしまうことを、己が嫌っていた力で知ることになる。


  転校生がきて、雪斗の周りは変わった。今まで以上に雪斗の周りを牽制する土御門に俺は近づくことすらままならなかった。


  土御門の態度も無理もないことだろう。あれほど雪斗を真綿で包むみたいに大切にしていた瀬那が、雪斗を裏切ったのだから。


  俺も何とかしようとするも、やはりブロックが掛かってしまう。


  結局最期まで雪斗を救うことは敵わなかった。


  雪斗と出会う前のように絶望するも、俺はまたある未来を見た。


  雪斗が復讐の為にこの学園に戻ってくることを。俺は歓喜した。


  見た未来では、雪斗は俺の事を覚えていないようだったがそれでもいい。


  今度こそ、俺は雪斗の為に力になろう。そう誓った。
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