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6ヶ月後
満開の花の香りを微風が運んで来た先は、大奥様のサロンだ。窓を開けて香りを楽しみながら、3人でお茶を飲んでいる。
変わらず私とタラとモリーで交代で大奥様に仕えている。もう介護メイドではない。専属メイドだ。
大奥様に誘われて、勤務中の私とタラがお茶に誘われた。今日の焼き菓子は私が焼いたものだ。
「アイリーン、今回のお菓子も美味しいわ。アーモンドの香ばしさとバターと蜂蜜が絶妙なバランスで配合されているわね」
「本当ですね、大奥様。アイリーンは食事を作っても美味しいですから、いいお嫁さんになるはずです」
「嫁になんか行かなくていいわ。ずっとここに居ればいいの。ね、アイリーン」
「ありがとうございます」
大奥様は私の協力のもと、少しずつ回復して奇跡的に完治を遂げた人になった。
伯爵様もとても喜んでくださった。
介護が必要なくなれば契約終了となっても良さそうだけど、普通のメイドでもいいなら希望すれば残すと私達3人に打診してくださった。
タラとモリーも残ることになって、大奥様専属ということになった。
だけど問題は一つある。元々大奥様の専属メイドだった5人が、完治したなら自分達を専属に戻すべきだとメイド仲間内で愚痴をこぼしている。
そのうちの3人は貴族出身だという。
だから彼女達とすれ違うとわざとぶつかられ、食堂では嫌味を言われる。
その内、嫌がらせが良くない方へ向いてきた。
「ねえ、また汚れているわ」
「本当だわ」
返ってきた洗濯済みの大奥様のシーツが汚れていた。洗濯メイドに持っていくと、
「ちゃんと洗いましたけど」
「どこでこうなったかは分からないけど、結果的に汚れて大奥様の元まで届くのは問題だと思いませんか?」
「あなたが洗ったらいいじゃない」
「いいですけど、私が洗ったら 多分あなたが叱られることになりますよ?」
「っ!」
「一昨日は大奥様の枕カバーでした」
「あなた達が汚したんでしょう!」
「でも、これ土汚れですよね。大奥様の部屋で土汚れなんて付きませんよ。もし踏んだのだとしたら靴の跡が残りますけど、明らかに違いますよね」
「私達じゃないわ!」
「でしたら、記録で追えるようにするしかありませんが」
「は?」
「今日の大奥様の部屋から出た洗濯物は誰が洗ったのか。それを誰が運んだのか。そして運んで来た人にその場で広げて見せてもらって確認するという手間をかけることになります」
「冗談じゃないわ!」
否定し反発していたけど 止めてくれると思ったのに、翌日は大奥様のハンカチに汚れが付いて届けられた。
「どうするの?」
「ひとまず保管しておきます」
一応洗濯メイドに注意をしに行った。
「また大奥様の物が汚れていました」
「汚したのはあなたでしょう?ハンカチくらい自分で洗ったら」
「でしたら、この状況を上に報告します。一番に疑われるのは洗濯メイドのみなさんになってしまいますよ」
と忠告をしたら、 大奥様専属メイドの洗濯物が汚れて帰ってくるようになった。
「どうする?」
「私、このまま着ます」
「でも」
「言いつけるわけではありません。着るだけです。
洗濯が終わったら着るのが普通ですから」
汚れて返ってきたのはエプロンだった。
そのまま着て仕事に就くと…
「アイリーン、エプロンが汚れているわよ」
「はい大奥様」
「洗濯に出しなさい」
「出して戻ってきたばかりのエプロンです」
「…他にもあるの?」
「……」
「命令よ。報告なさい」
「最初の頃は大奥様のシーツやハンカチに土汚れが付いたものが洗濯済みとして届いたのです。
何度か続いて改善を求めましたが、私達が汚したのだろうと言われました。
昨日も大奥様のハンカチが汚れていたので、話をしに行ったのですが、何が汚れていたのか口にしていないのに、洗濯メイドは“ハンカチ”と口にしたのです。
まだ続くと感じましたので、改善案も受け付けないのであれば上に報告すると伝えました。
その結果がこれです。ですが、エプロンを汚すなら きっと嫌がらせが表に出てもいいと思っているのだと判断しました」
「それで着けて来たのね。分かったわ」
「あの、そのハンカチ、そのまま保管してあります」
「あら、良い子ね」
大奥様は旦那様を昼食に誘った。
部屋食以外の時は私達は付き添わない。だけどこの日は、旦那様がよく見える位置に私を立たせた。
「アイリーン、エプロンを取り換えなさい」
「はい」
「レオナード、アイリーンのせいじゃないのよ。
どうやら洗濯メイドか 運んでくるメイドが私のことを嫌いらしくて、シーツなどを洗濯後にわざわざ土を付けて届けるの。アイリーンが改善を要求したら、矛先がアイリーン達に向かってしまったのよ。
この子達は私の病気を治してくれた子達なのに申し訳なくて……ううっ」
大奥様は汚れの付いたハンカチで目元を押さえた。
「ハドソン!!」
「はい、伯爵様」
「母上の洗濯物に触れる者たちを全員集めて尋問してくれ」
「かしこまりました」
「母上、ご安心ください。
アイリーン、悪かったね」
「お手を煩わせてしまい申し訳ございません」
ハドソンとは、伯爵の側で護衛をしている騎士様だ。
よく見ると、大奥様の目からは涙は出ていなかった。
変わらず私とタラとモリーで交代で大奥様に仕えている。もう介護メイドではない。専属メイドだ。
大奥様に誘われて、勤務中の私とタラがお茶に誘われた。今日の焼き菓子は私が焼いたものだ。
「アイリーン、今回のお菓子も美味しいわ。アーモンドの香ばしさとバターと蜂蜜が絶妙なバランスで配合されているわね」
「本当ですね、大奥様。アイリーンは食事を作っても美味しいですから、いいお嫁さんになるはずです」
「嫁になんか行かなくていいわ。ずっとここに居ればいいの。ね、アイリーン」
「ありがとうございます」
大奥様は私の協力のもと、少しずつ回復して奇跡的に完治を遂げた人になった。
伯爵様もとても喜んでくださった。
介護が必要なくなれば契約終了となっても良さそうだけど、普通のメイドでもいいなら希望すれば残すと私達3人に打診してくださった。
タラとモリーも残ることになって、大奥様専属ということになった。
だけど問題は一つある。元々大奥様の専属メイドだった5人が、完治したなら自分達を専属に戻すべきだとメイド仲間内で愚痴をこぼしている。
そのうちの3人は貴族出身だという。
だから彼女達とすれ違うとわざとぶつかられ、食堂では嫌味を言われる。
その内、嫌がらせが良くない方へ向いてきた。
「ねえ、また汚れているわ」
「本当だわ」
返ってきた洗濯済みの大奥様のシーツが汚れていた。洗濯メイドに持っていくと、
「ちゃんと洗いましたけど」
「どこでこうなったかは分からないけど、結果的に汚れて大奥様の元まで届くのは問題だと思いませんか?」
「あなたが洗ったらいいじゃない」
「いいですけど、私が洗ったら 多分あなたが叱られることになりますよ?」
「っ!」
「一昨日は大奥様の枕カバーでした」
「あなた達が汚したんでしょう!」
「でも、これ土汚れですよね。大奥様の部屋で土汚れなんて付きませんよ。もし踏んだのだとしたら靴の跡が残りますけど、明らかに違いますよね」
「私達じゃないわ!」
「でしたら、記録で追えるようにするしかありませんが」
「は?」
「今日の大奥様の部屋から出た洗濯物は誰が洗ったのか。それを誰が運んだのか。そして運んで来た人にその場で広げて見せてもらって確認するという手間をかけることになります」
「冗談じゃないわ!」
否定し反発していたけど 止めてくれると思ったのに、翌日は大奥様のハンカチに汚れが付いて届けられた。
「どうするの?」
「ひとまず保管しておきます」
一応洗濯メイドに注意をしに行った。
「また大奥様の物が汚れていました」
「汚したのはあなたでしょう?ハンカチくらい自分で洗ったら」
「でしたら、この状況を上に報告します。一番に疑われるのは洗濯メイドのみなさんになってしまいますよ」
と忠告をしたら、 大奥様専属メイドの洗濯物が汚れて帰ってくるようになった。
「どうする?」
「私、このまま着ます」
「でも」
「言いつけるわけではありません。着るだけです。
洗濯が終わったら着るのが普通ですから」
汚れて返ってきたのはエプロンだった。
そのまま着て仕事に就くと…
「アイリーン、エプロンが汚れているわよ」
「はい大奥様」
「洗濯に出しなさい」
「出して戻ってきたばかりのエプロンです」
「…他にもあるの?」
「……」
「命令よ。報告なさい」
「最初の頃は大奥様のシーツやハンカチに土汚れが付いたものが洗濯済みとして届いたのです。
何度か続いて改善を求めましたが、私達が汚したのだろうと言われました。
昨日も大奥様のハンカチが汚れていたので、話をしに行ったのですが、何が汚れていたのか口にしていないのに、洗濯メイドは“ハンカチ”と口にしたのです。
まだ続くと感じましたので、改善案も受け付けないのであれば上に報告すると伝えました。
その結果がこれです。ですが、エプロンを汚すなら きっと嫌がらせが表に出てもいいと思っているのだと判断しました」
「それで着けて来たのね。分かったわ」
「あの、そのハンカチ、そのまま保管してあります」
「あら、良い子ね」
大奥様は旦那様を昼食に誘った。
部屋食以外の時は私達は付き添わない。だけどこの日は、旦那様がよく見える位置に私を立たせた。
「アイリーン、エプロンを取り換えなさい」
「はい」
「レオナード、アイリーンのせいじゃないのよ。
どうやら洗濯メイドか 運んでくるメイドが私のことを嫌いらしくて、シーツなどを洗濯後にわざわざ土を付けて届けるの。アイリーンが改善を要求したら、矛先がアイリーン達に向かってしまったのよ。
この子達は私の病気を治してくれた子達なのに申し訳なくて……ううっ」
大奥様は汚れの付いたハンカチで目元を押さえた。
「ハドソン!!」
「はい、伯爵様」
「母上の洗濯物に触れる者たちを全員集めて尋問してくれ」
「かしこまりました」
「母上、ご安心ください。
アイリーン、悪かったね」
「お手を煩わせてしまい申し訳ございません」
ハドソンとは、伯爵の側で護衛をしている騎士様だ。
よく見ると、大奥様の目からは涙は出ていなかった。
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