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積極的な旦那様
故郷の町のみんなに歓迎され、サロウ男爵邸でたっぷりおもてなしを受けた後は、真っ直ぐセイラス邸へ向かった。
両親の公認を経て、旦那様は少しずつ積極的に私との距離を縮めようとした。髪や頬に触れたり、手を握ったり、ハンドキスをしたり。途中の宿で夜に話をした後に抱きしめたり。
デリックとは違う肉感や香り、何より大人の色気が私の鼓動を大きくさせる。抱きしめられて鼓動が伝わるのではないかと恥ずかしかった。
旦那様の鼓動も少し早い気がした。
いい人なのは知っている。だけど傷付きたくない。それに伯爵夫人なんて…。
もしかしたら大奥様が賛成なさっているというのは旦那様の勘違いなのではないかと密かに怪しんでいる。
セイラス邸に到着すると、早速旦那様が大奥様を呼んだ。
「疲れているだろうがアイリーンも同席して欲しい」
「かしこまりました」
大奥様が居間に入室し、執事と旦那様の護衛のハドソン卿が続いて入り、5人だけになった。
「お帰りなさい。問題はなかった?」
「ただいま戻りました。
アイリーン、座りなさい」
「…失礼します」
3人がソファに座ると旦那様が報告をした後、最後に私とのことに触れた。
「アイリーンの両親には承諾をもらいました。
後はアイリーンが求婚を受けてくれるだけです」
「良かったわ。反対されるかと思ったのよ」
え!?本当に大奥様も賛成を!?
「ですがアイリーンは伯爵夫人が重荷みたいで、心を開いてくれないのです」
「アイリーン。うちは中立派だし権力争いもしていないし、領地のことだけ考えていればいいのだから、それほど伯爵夫人という名に警戒しなくてもいいのよ?
レオナードや補佐達が屋敷のことまでやっているし、何かを変えたいときは相談するだけでいいの。
セイラス邸での催しは領内や親戚に向けたものだから、準備は任せていればいいのよ。
アイリーンに望むことは、レオナードの側にいてくれること、できれば跡継ぎを産んでくれること、夫婦で参加することが必要な招待に連れ添うこと。私の話し相手よ。
貴族の出ではないあなたを私達が望んで迎えるのだから、無理をさせるつもりもないし大事にするわ」
「……」
「もしかして、私を男として見ることが出来ないか?それとも嫌いか?」
「私…」
「何でも言ってくれ」
「旦那様のお気持ちを受け入れるということは職を失くすことになります。
旦那様に必要とされなくなればこの領地にさえ居られなくなります。
それにもう…傷付きたくないのです」
「傷付くということは、アイリーンの気持ちが多少なりとも私に向いていると捉えていいのだろうか」
「っ!」
旦那様は立ち上がって私の前へ来ると跪いた。
そしてポケットから四角い箱を取り出して開けた。
そこには美しい宝石の付いた指輪が2つ並んでいた。
「こちらのダイヤは最高級のものを注文して作らせた婚約指輪だ。
もう一つのルビーは代々受け継がれてきた指輪だ。
どうか、私の妻となると言って、この指輪をはめて欲しい。
君を愛し守らせて欲しい。
今は私への好意は小さくとも いつか愛してると返してもらえるように尽くすから」
「旦那様…」
「レオナードと呼んでくれ」
「お願いよ、アイリーン。息子の嫁はあなたじゃなきゃ嫌なのよ」
旦那様は私に指輪を箱ごと握らせて、その上から手で包み、頭を下げるように額を乗せた。
「お願いだ…愛しているんだ」
「……………はい」
「アイリーン!!」
旦那様は私を力強く抱きしめながら頬にキスをした。
「ありがとう!アイリーン!」
「ほら、アイリーンの気が変わらないうちに指輪をはめて署名してもらいなさい」
執事がテーブルの上に紙とペンとインク瓶を置いた。
旦那様は立ち上がって私の隣に座り、先に署名をした。
「さあ、アイリーン」
ペンを渡された。
紙を覗き込むと“婚姻契約書”と書かれていて、立会人の欄にお父さんの署名も大奥様の署名も既にしてあった。
「よ、読まないと署名出来ません」
旦那様は私の隣でずっとソワソワしていた。
言葉で表すなら“早く署名をしてくれ”だと思う。
「あの、旦那様にかなりの制約がありますが」
「私が決めたことだ」
「でも」
「アイリーンに不利な内容ではないから署名してくれ」
「……」
「頼む!」
ペンを手に取り署名をした。
「ありがとう、アイリーン!」
ペンを置く暇も与えられずにギュウギュウと抱きしめられた。
両親の公認を経て、旦那様は少しずつ積極的に私との距離を縮めようとした。髪や頬に触れたり、手を握ったり、ハンドキスをしたり。途中の宿で夜に話をした後に抱きしめたり。
デリックとは違う肉感や香り、何より大人の色気が私の鼓動を大きくさせる。抱きしめられて鼓動が伝わるのではないかと恥ずかしかった。
旦那様の鼓動も少し早い気がした。
いい人なのは知っている。だけど傷付きたくない。それに伯爵夫人なんて…。
もしかしたら大奥様が賛成なさっているというのは旦那様の勘違いなのではないかと密かに怪しんでいる。
セイラス邸に到着すると、早速旦那様が大奥様を呼んだ。
「疲れているだろうがアイリーンも同席して欲しい」
「かしこまりました」
大奥様が居間に入室し、執事と旦那様の護衛のハドソン卿が続いて入り、5人だけになった。
「お帰りなさい。問題はなかった?」
「ただいま戻りました。
アイリーン、座りなさい」
「…失礼します」
3人がソファに座ると旦那様が報告をした後、最後に私とのことに触れた。
「アイリーンの両親には承諾をもらいました。
後はアイリーンが求婚を受けてくれるだけです」
「良かったわ。反対されるかと思ったのよ」
え!?本当に大奥様も賛成を!?
「ですがアイリーンは伯爵夫人が重荷みたいで、心を開いてくれないのです」
「アイリーン。うちは中立派だし権力争いもしていないし、領地のことだけ考えていればいいのだから、それほど伯爵夫人という名に警戒しなくてもいいのよ?
レオナードや補佐達が屋敷のことまでやっているし、何かを変えたいときは相談するだけでいいの。
セイラス邸での催しは領内や親戚に向けたものだから、準備は任せていればいいのよ。
アイリーンに望むことは、レオナードの側にいてくれること、できれば跡継ぎを産んでくれること、夫婦で参加することが必要な招待に連れ添うこと。私の話し相手よ。
貴族の出ではないあなたを私達が望んで迎えるのだから、無理をさせるつもりもないし大事にするわ」
「……」
「もしかして、私を男として見ることが出来ないか?それとも嫌いか?」
「私…」
「何でも言ってくれ」
「旦那様のお気持ちを受け入れるということは職を失くすことになります。
旦那様に必要とされなくなればこの領地にさえ居られなくなります。
それにもう…傷付きたくないのです」
「傷付くということは、アイリーンの気持ちが多少なりとも私に向いていると捉えていいのだろうか」
「っ!」
旦那様は立ち上がって私の前へ来ると跪いた。
そしてポケットから四角い箱を取り出して開けた。
そこには美しい宝石の付いた指輪が2つ並んでいた。
「こちらのダイヤは最高級のものを注文して作らせた婚約指輪だ。
もう一つのルビーは代々受け継がれてきた指輪だ。
どうか、私の妻となると言って、この指輪をはめて欲しい。
君を愛し守らせて欲しい。
今は私への好意は小さくとも いつか愛してると返してもらえるように尽くすから」
「旦那様…」
「レオナードと呼んでくれ」
「お願いよ、アイリーン。息子の嫁はあなたじゃなきゃ嫌なのよ」
旦那様は私に指輪を箱ごと握らせて、その上から手で包み、頭を下げるように額を乗せた。
「お願いだ…愛しているんだ」
「……………はい」
「アイリーン!!」
旦那様は私を力強く抱きしめながら頬にキスをした。
「ありがとう!アイリーン!」
「ほら、アイリーンの気が変わらないうちに指輪をはめて署名してもらいなさい」
執事がテーブルの上に紙とペンとインク瓶を置いた。
旦那様は立ち上がって私の隣に座り、先に署名をした。
「さあ、アイリーン」
ペンを渡された。
紙を覗き込むと“婚姻契約書”と書かれていて、立会人の欄にお父さんの署名も大奥様の署名も既にしてあった。
「よ、読まないと署名出来ません」
旦那様は私の隣でずっとソワソワしていた。
言葉で表すなら“早く署名をしてくれ”だと思う。
「あの、旦那様にかなりの制約がありますが」
「私が決めたことだ」
「でも」
「アイリーンに不利な内容ではないから署名してくれ」
「……」
「頼む!」
ペンを手に取り署名をした。
「ありがとう、アイリーン!」
ペンを置く暇も与えられずにギュウギュウと抱きしめられた。
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