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王族の気まぐれなお遊びとして、2時間メイドとして騙せるかの賭けをしたと説明してメイド達にメイドにしてもらった。度無しメガネもかけた。
「似合ってるぞ」
平凡で悪かったわね。
「そうですか」
「…可愛いメイドだ」
「はいはい」
「……肩を揉んでくれ」
「は?メイドの仕事ではありません」
「湯浴みを手伝うか?」
「揉みます」
なんか割に合わない気がするんだけど。
「揉み方に愛情を感じないなぁ」
「あるわけないでしょう」
「……」
「殿下、サンドル侯爵令嬢がお見えになりました」
「通せ。
リリ、肩を揉み続けろ」
「畏まりました」
「エリアス様…ごきげんよう。
…疲れておいでですか」
「ああ。凝ってしまってな」
「茶会を途中で退席なさったのと関係が?」
「まぁ、そうだ」
「殿下、肩はこのへんで」
「続けてくれ」
「仕事ができません」
「分かった」
他のメイドの側に行って並び、メモを取った。
「そんなにか」
「エリアス様?」
「何でもない。そう言えば、先日友人の婚約者の不貞が判明してな。婚約を解消したいと相談があった」
「まぁ!どちらが?」
「男の方だ」
「殿方の浮気ですと、立場にもよりますわね」
「えっ」
つい声が出ちゃった!!
「「……」」
「失礼いたしました」
「すまないな。あのメイドも3ヶ月前に相手の不貞を知って敏感なんだ」
「そうですの」
「まぁ、私達にはそのようなことはないと思うが、一応言っておくぞ。
其方が純潔でなくなれば婚姻は出来ない。前日に身体検査があるからな。
式の前日に不適格者とされたら大恥だ。招待客は身分の高い者ばかりだし、式の費用も莫大だ。
ヘンダーソン侯爵家は取り潰しとなるだろう」
「えっ」
「他国の王族も祝いの品を厳選し、わざわざ参列しにこの国まで足を運んでくださるんだ。何日も、国によっては1ヶ月以上かけてな。護衛も付けて旅をしてくるのだから大金をかけさせてしまう。
なのに中止ですと頭を下げて回らねばならない。
それに王族を謀ったのだから反逆罪に問われる」
「……」
「顔色が悪い。疲れたのか?」
「え、ええ。ちょっと朝から体調が」
「それはいけない。早く帰って身体を休めてくれ」
「ご配慮いただきありがとうございます。失礼いたします」
リュカ様が人払いをするとタイを外しソファにもたれ顔を上に仰いだ。
「リリ、隣に座れ。メモを見せてくれて」
「はい」
「遠い」
「…はい」
「もっと」
「ええっ」
仕方なく真横に座った。
「……6人か。
平民、近衛騎士2人、子爵令息、侯爵令息、…義兄か」
うわぁ。
「この平民は、サンドル家の使用人だろう。聞いたことがある名だ。侍従だった気がする。
子爵令息は体格のいい男だ。
侯爵令息は女遊びが派手で有名だ。
…義兄に初めてを捧げたか。
近衛の日付け…、俺が一緒にいた日だ。
サンドル侯爵家の領地に行った時だ…。しかも2人とも同じ日付けだ。
舐められたものだ」
「……」
「サンドル侯爵令息の名に印を付けたのは何故だ」
「文字が赤いのです」
「赤?」
「多分、愛あるものか否かではないかと私の兄の婚約者は言っていました」
義姉と話していた内容を伝えると、
「つまりサンドル侯爵令嬢は義兄を愛していて抱かれたということだな…
リリ、膝を貸せ」
「えっ?」
そう言うとリュカ様は私の腿に頭をのせソファに仰向けになった。いわゆる膝枕だ。
「ちょっと!」
「例え好かない婚約でも、純潔を守って嫁ぐ令嬢の為に俺はどんな誘いも断ってきたのに。馬鹿みたいだ」
「……相手がどうあれ、リュカ様はそのままでいてください。あんな女の為に己を変える必要などありません。お優しいリュカ様を、王宮のほとんどの方がお慕いいたしますわ」
「リリも?」
「はい。勉強を教えてくださったリュカ様も婚約者の為に誠実であろうと努めたリュカ様も素敵です」
「…ならいい」
リュカ様を落ち着かせるように胸を優しくトントンしていると眠ってしまわれた。
「似合ってるぞ」
平凡で悪かったわね。
「そうですか」
「…可愛いメイドだ」
「はいはい」
「……肩を揉んでくれ」
「は?メイドの仕事ではありません」
「湯浴みを手伝うか?」
「揉みます」
なんか割に合わない気がするんだけど。
「揉み方に愛情を感じないなぁ」
「あるわけないでしょう」
「……」
「殿下、サンドル侯爵令嬢がお見えになりました」
「通せ。
リリ、肩を揉み続けろ」
「畏まりました」
「エリアス様…ごきげんよう。
…疲れておいでですか」
「ああ。凝ってしまってな」
「茶会を途中で退席なさったのと関係が?」
「まぁ、そうだ」
「殿下、肩はこのへんで」
「続けてくれ」
「仕事ができません」
「分かった」
他のメイドの側に行って並び、メモを取った。
「そんなにか」
「エリアス様?」
「何でもない。そう言えば、先日友人の婚約者の不貞が判明してな。婚約を解消したいと相談があった」
「まぁ!どちらが?」
「男の方だ」
「殿方の浮気ですと、立場にもよりますわね」
「えっ」
つい声が出ちゃった!!
「「……」」
「失礼いたしました」
「すまないな。あのメイドも3ヶ月前に相手の不貞を知って敏感なんだ」
「そうですの」
「まぁ、私達にはそのようなことはないと思うが、一応言っておくぞ。
其方が純潔でなくなれば婚姻は出来ない。前日に身体検査があるからな。
式の前日に不適格者とされたら大恥だ。招待客は身分の高い者ばかりだし、式の費用も莫大だ。
ヘンダーソン侯爵家は取り潰しとなるだろう」
「えっ」
「他国の王族も祝いの品を厳選し、わざわざ参列しにこの国まで足を運んでくださるんだ。何日も、国によっては1ヶ月以上かけてな。護衛も付けて旅をしてくるのだから大金をかけさせてしまう。
なのに中止ですと頭を下げて回らねばならない。
それに王族を謀ったのだから反逆罪に問われる」
「……」
「顔色が悪い。疲れたのか?」
「え、ええ。ちょっと朝から体調が」
「それはいけない。早く帰って身体を休めてくれ」
「ご配慮いただきありがとうございます。失礼いたします」
リュカ様が人払いをするとタイを外しソファにもたれ顔を上に仰いだ。
「リリ、隣に座れ。メモを見せてくれて」
「はい」
「遠い」
「…はい」
「もっと」
「ええっ」
仕方なく真横に座った。
「……6人か。
平民、近衛騎士2人、子爵令息、侯爵令息、…義兄か」
うわぁ。
「この平民は、サンドル家の使用人だろう。聞いたことがある名だ。侍従だった気がする。
子爵令息は体格のいい男だ。
侯爵令息は女遊びが派手で有名だ。
…義兄に初めてを捧げたか。
近衛の日付け…、俺が一緒にいた日だ。
サンドル侯爵家の領地に行った時だ…。しかも2人とも同じ日付けだ。
舐められたものだ」
「……」
「サンドル侯爵令息の名に印を付けたのは何故だ」
「文字が赤いのです」
「赤?」
「多分、愛あるものか否かではないかと私の兄の婚約者は言っていました」
義姉と話していた内容を伝えると、
「つまりサンドル侯爵令嬢は義兄を愛していて抱かれたということだな…
リリ、膝を貸せ」
「えっ?」
そう言うとリュカ様は私の腿に頭をのせソファに仰向けになった。いわゆる膝枕だ。
「ちょっと!」
「例え好かない婚約でも、純潔を守って嫁ぐ令嬢の為に俺はどんな誘いも断ってきたのに。馬鹿みたいだ」
「……相手がどうあれ、リュカ様はそのままでいてください。あんな女の為に己を変える必要などありません。お優しいリュカ様を、王宮のほとんどの方がお慕いいたしますわ」
「リリも?」
「はい。勉強を教えてくださったリュカ様も婚約者の為に誠実であろうと努めたリュカ様も素敵です」
「…ならいい」
リュカ様を落ち着かせるように胸を優しくトントンしていると眠ってしまわれた。
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