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茶葉
しおりを挟む「カザハ公爵夫人はタランの作り方をご存知ですか」
「懐かしいわね」
「母上、タランとは何ですか」
「私の祖国の伝統菓子よ」
「先日、レストランに行ってお土産にいただいたのです。美味しかったので再現しようと屋敷の料理人に頑張ってもらっているのですが、なかなか上手くいかなくて」
「どんな風なのかしら」
「食感が」
「ああ、多分2度焼きしていないのね。時間はわからないけど1度目は低温で焼いて、少し休ませて2度目は高温で焼くのよ」
「ありがとうございます。挑戦してみます」
「祖国から連れてきた侍女がいるから、知っているか聞いてみるわね」
「ありがとうございます」
「何処のレストランなの?母上の故郷の味を食べてみたいな」
「貴族街と平民街の境辺りのディッチャというレストランで、平民寄りのお店なのです」
「リリアーナ様が?」
「私のお慕いしている方のお勧めのレストランなのです」
けっこう聞いているのね。皆がこっち向いたわ。
「リリアーナ」
リュカ様が遠くからでも分かるくらい怒ってる!
「実は、王宮の侍女長を尊敬しておりまして、お食事にお誘いしたのです。
何度かご一緒いたしました」
「まぁ、侍女長?」
「はい。気が合うといいますか、落ち着くといいますか。職業柄、私に合わせてくださるからだとは思いますが、病気の時に手を握って欲しい人第一位の方です。とても素敵なのです」
「そうなのか?」
「はい陛下。オデットは特にリリアーナを可愛がっています。私など素通りですよ」
「大袈裟ですわ」
「そうか。厳しいオデットと外食するくらいなのか。王宮新聞に載せたいくらいだ」
そんなに!?あんなに優しいオデット侍女長なのに!?
「あの侍女長を攻略したのね、凄いわ」
王妃様まで…。
「まぁ、これだけ素晴らしい令嬢なら文句無しに気に入るだろう。今度遊びに来なさい」
「ありがとうございます、カザハ公爵様」
ランドルフ様は穴があきそうなくらい見てくるし、サンドル侯爵令嬢は睨んでるし。
食後のお茶は…
「このお茶はカザハ公爵領で僅かに採れる希少なお茶ですね」
「よく分かったな」
「先日、侍女長が私好みのお茶だろうからと手に入れて飲ませてくださったのです。
少し甘い香りがするのに、何故か飲むとすっきりとする不思議なお茶で、甘すぎる菓子でもこのお茶と食すると苦にならないのです。
渋みを感じさせない魔法のようなお茶だと感激していました」
「そこまで言ってくれると嬉しいよ。
侍女長の伝手は凄いな」
「そこまで希少だとは存じ上げませんでした。
今度侍女長にお礼をしようと思います」
「侍女長を呼んでくれないか」
ごめんなさい!侍女長、侍女長と言い過ぎたわ!
「ハハッ、リリアーナそんな顔をするな。大丈夫だ」
「お呼びでしょうか」
「侍女長が素晴らしい人だとリリアーナが絶賛していてね。話を聞いたら侍女長が博識で優秀で面倒見のいい人だとわかったよ。
うちの領地の茶葉は何処で知ったのかな」
「実はカザハ領へ観光に行かせていただきました。高級なので滅多に手に入れられませんが、お店の方と仲良くなって特別に少しだけ確保していただいております」
「そうか。来てくれたのか。感謝する」
「行った時は丁度満月で、とても美しく大きく見えました。あの日は月を見逃したくなくて夜明けまで月を眺めていました。食事も美味しくて、親切な方ばかりでございました」
「いいなぁ」
!!
つい声にだしちゃった!!
「失礼しました」
「ハハハハッ、是非遊びに来なさい。侍女長と一緒に」
オデット侍女長!
「ありがとうございます。リリアーナ様とお邪魔させていただきます」
本当!?
「ありがとうございます!嬉しいです」
「可愛いわね。きっと侍女長と旅が出来ると喜んでいるのね」
「本当に可愛いご令嬢だ。
リリアーナ、まずはタウンハウスに遊びにおいで。良かったら侍女長も一緒に。
リリアーナが病気の時に手を握って欲しい人第一位の貴女が付き添ってくれたら、リリアーナももう少し緊張が解れるだろう」
「はい!」
「ありがとうございます」
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