【完結】孤独なドラゴン獣人と内気な聖獣人

ユユ

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ウサギ獣人族の母

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父はドラゴン獣人族、母はウサギ獣人族。
獣化したままなら交尾はあり得ない。ウサギは死ぬ。

僕も兄弟達もウサギ獣人族の母から産まれたから、卵が小さ過ぎて怖かったと聞いたことがある。
王の後宮にいる雌獣人にはウサギ獣人族はおらず、王も卵を見て驚いたとか。
獣化したヘビも大きい身体だし、他の獣人族が獣化しても 獣化したウサギよりもはるかに大きかった。

父と母は恋愛結婚だ。
母はウサギ獣人族の中でも1番の兎毛を持つ種で 澄んだ湖のような美しい青い瞳を持っていた。ウサギ獣人族は普通は黒 赤 黄 しかない。稀に母のような個体も生まれる。
母の属する種は狙われやすい。毛皮を高値で取り引きされるからだ。もちろんキツネ獣人族でもヤギ獣人族でも同じように高級毛皮となるために狙われる希少種はいる。獣化したときに襲ったり 拐ってストレスをかけたりして獣化させて殺して毛皮を剥ぐ。それを防いでいるのもドラゴン獣人族だ。
許可のない領地侵犯は原則できないが、空域は飛行できる。異種族に襲われているところを目撃した場合は急降下して助けることもある。
例えばウサギ領でオオカミ獣人が狩りをしていたら、上空からオオカミ目掛けて急降下して、ドラゴン掴みをしてドラゴン領に連れ去る。獣人なら法で罰するが、人化しなければ食糧としてしまう。

ウサギ領にとってドラゴン領は大事な存在だ。

ウサギ領は隣接していて、父が視察に行ったときに幼い母に出会った。父に圧倒されて怖かったのか失禁して人化を解いてしまったらしい。
ウサギ獣人族の中でも高値のつく毛皮を持った母の種は 身を守るために他獣族の前で獣化を避けていた。

周囲のウサギ獣人族も怯える中、父は上着を脱いで幼いウサギを包んで抱き上げた。母は失神したらしい。
父は幼ウサギの母に愛おしさを感じて求婚。成人するまで母の元へ通い続け、ついに成人した母と結婚し連れ帰ったと教えてもらった。

父は自分の部屋から母を出さない。母が部屋から出るときは必ず父が付き添う。
ストレスになったり運動不足にならないか心配になるが、父達の部屋はとても広い。しかも母のために木で作った運動コースを部屋に作っている。トンネルがあったり坂があったり 一見水車のような形をしていて、中に入って走ると回り出して延々とその場で走れるものまで作ってあった。
母をウサギ獣人族の使用人が付きっきりで見張っている。一度、走って回している最中に脱出に失敗して怪我をした。父は撤去しようとしたが、母が嫌がった。だからウサギ獣人族を付き添わせて、止まりたいときは彼女達が手伝う。

母は外の世界が怖いから、外に出ようとしない。
意外にも運命の出会いを果たした2人だった。



「ただいま戻りました」

「…また虐められたのかい?」

「はい」

「アザになりそうか?」

「はい」

「服を脱ぎなさい」

服を脱ぐと痛みと内出血を治す軟膏を塗ってくれた。

「よし。今日は休んでいなさい」

「大丈夫です」

彼は母の弟ソロン。ウサギ獣人族の普通種。ウサギ獣人族だけど薬の知識に優れているのでスカウトされた。
医棟を任されていて、獣化できない僕を預かってくれている。

今のところ、ドラゴン族の強さの順位は王、父、長兄イアニス、ブロンテオ家の主カイファ、カラザ家の次男ヨティス、そして妃の産んだ雌のカーリと続く。


ある日、薬草を煮出して抽出していると父に呼ばれた。ソロン先生と一緒に迎えに来た使用人について行った。

入室すると父と父の側近と 知らない男と小さな女の子がいた。
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