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殺気の理由
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父の説明が現実だと受け止めることができないでいた。
「エリアスは危篤だったがファニアが治癒したんだ。リガス殿も命に関わる怪我だったが本人の生命力の強さが重篤状態を維持しているし、ある程度銀目のヘビ獣人が治癒してくれた。ただ運良く助かっても元の生活に戻れるかは分からない。ファニアが助けてくれたら元通りになるのだが、怒っていてとても無理だ」
さっきのファニアとの会話を思い出した。
“好きな男が死にかけていたら治してあげると思っていたから”
“治した”
ファニアは少し照れていた。
「あのとき獣化したままファニアはエリアスから離れなくて、エレクトラとソロン先生が説得してエリアスを医棟の特別室に運ぶことができた。
ファニアは人化した後、部屋に籠った。かなり力を使っていたのか疲れ果てていた。
リガス殿の治癒をしてくれないか他の銀目のドラゴンに聞いたが、銀目同士のテレパシーのようなものがあるのだろう。拒否された。
だからヘビ領に連絡を入れて銀目のヘビ獣人を連れてきてもらったんだ。数人到着してリガス殿の治療をしていたが深層部までは無理なようで昏睡状態なんだ。
疲れが取れたファニアに聞いてみたが、“エリアスを攻撃した奴は助けない”ときっぱり断られてしまった」
「殺気は?何度も殺気を送ったのは何なのですか!」
その質問にはクリストが答えた。
「嫉妬だ。エリアスが他の女と仲良くしているのが気に入らなくて女に向けて殺気を漏らしてしまったんだ。わざとじゃないしファニアには攻撃するつもりはない。ファニアがいつもうろうろしているのはエリアスを探して遠くから見ていたからだ。
あの日もエリアスを探していたらリガスに襲われる瞬間を見たからリガスを攻撃したらしい。リガスが締め技を使っていなければ彼は死んでいただろう。締め上げている中にエリアスがいると知っているからファニアは手加減をしたんだ」
「そんな…だってファニアはあいつに好きって…」
「あいつのことじゃなくてヘビのことじゃないのか?とにかくファニアはおまえが大好きなんだ。留学前からな」
「私のところにエリアスからの報告の手紙が届くと、ファニアは読みにきていた。初めてエリアスからファニア宛に手紙が届いたときはかなり興奮していたよ。返事を書くのに何枚も便箋を使って、やっと書き上げたのがアレだ。ファニアも不器用だったんだ」
父の話に蒼白になった。
「僕…とんでもないことを」
「私とクリストは捜索隊を組んで探しに行きます。ファニアは強いドラゴンですから精鋭じゃないと追跡は無理でしょう」
「頼んだぞ、イニアス、クリスト。ファニアは銀目だから狙われる。本人が強いから早々には捕まらないはずだが戦いの駆け引きを知らない。罠などの経験がないから心配だ」
「分かりました」
兄達はファニアを探しに行った。
その後、王様が現れた。
「まったくおまえ達は」
「申し訳ございません」
「ファニアは何を飲んでも効果はないから安心しろ」
「はい?」
「聖獣人に毒は効かないんだ」
「っ!」
「安心して泣いている場合じゃないぞ。記憶があるということは今も胸を痛めているということだ。
エリアスはファニアをどう思っているんだ?」
「僕は…獣化出来ないドラゴン獣人ですから」
「だが、誰も成し得なかった獣化の薬を作ったじゃないか。いつか完成品が仕上がるはずだ。
それにファニアは最強の私の求婚を断ったのはエリアスのためだ。ファニアには君が獣化できるかどうかは関係ないんだ。
ファニアを見つけたら可愛がってやれ」
「はい」
だけど2日、3日、4日と経っても見つからなかった。
ザクッザクッザクッ
ゴリゴリ ゴリゴリ ゴリゴリ ゴリゴリ
コポコポコポコポ
グツグツ グツグツ
“父上、母上、兄姉弟のみんな、ソロン先生、王様
いつも僕のせいでご迷惑をかけてしまい
申し訳なく思っています。
僕はファニアを見つけるまで限り戻りません。
試験薬をこれから飲みます。
また失敗するかもしれませんが獣化なしに
ファニアを見つけることは叶いませんので。
僕が飲む薬の配合量は書きました。
もし僕が死んだら討伐隊のジュシアに
死体の重さを量ってもらって記録してから
解体して心臓の状態を絵で描いてください。
後世のドラゴン獣人族のために役立ててください。
イニアス兄上、クリスト兄上。
心から感謝しています。
エリアス・ラーヴァ”
手紙を書いて、出来立ての薬を飲んだ。
「ゴクッ ゴクッ ゴクッ」
ガシャン!
「エリアスは危篤だったがファニアが治癒したんだ。リガス殿も命に関わる怪我だったが本人の生命力の強さが重篤状態を維持しているし、ある程度銀目のヘビ獣人が治癒してくれた。ただ運良く助かっても元の生活に戻れるかは分からない。ファニアが助けてくれたら元通りになるのだが、怒っていてとても無理だ」
さっきのファニアとの会話を思い出した。
“好きな男が死にかけていたら治してあげると思っていたから”
“治した”
ファニアは少し照れていた。
「あのとき獣化したままファニアはエリアスから離れなくて、エレクトラとソロン先生が説得してエリアスを医棟の特別室に運ぶことができた。
ファニアは人化した後、部屋に籠った。かなり力を使っていたのか疲れ果てていた。
リガス殿の治癒をしてくれないか他の銀目のドラゴンに聞いたが、銀目同士のテレパシーのようなものがあるのだろう。拒否された。
だからヘビ領に連絡を入れて銀目のヘビ獣人を連れてきてもらったんだ。数人到着してリガス殿の治療をしていたが深層部までは無理なようで昏睡状態なんだ。
疲れが取れたファニアに聞いてみたが、“エリアスを攻撃した奴は助けない”ときっぱり断られてしまった」
「殺気は?何度も殺気を送ったのは何なのですか!」
その質問にはクリストが答えた。
「嫉妬だ。エリアスが他の女と仲良くしているのが気に入らなくて女に向けて殺気を漏らしてしまったんだ。わざとじゃないしファニアには攻撃するつもりはない。ファニアがいつもうろうろしているのはエリアスを探して遠くから見ていたからだ。
あの日もエリアスを探していたらリガスに襲われる瞬間を見たからリガスを攻撃したらしい。リガスが締め技を使っていなければ彼は死んでいただろう。締め上げている中にエリアスがいると知っているからファニアは手加減をしたんだ」
「そんな…だってファニアはあいつに好きって…」
「あいつのことじゃなくてヘビのことじゃないのか?とにかくファニアはおまえが大好きなんだ。留学前からな」
「私のところにエリアスからの報告の手紙が届くと、ファニアは読みにきていた。初めてエリアスからファニア宛に手紙が届いたときはかなり興奮していたよ。返事を書くのに何枚も便箋を使って、やっと書き上げたのがアレだ。ファニアも不器用だったんだ」
父の話に蒼白になった。
「僕…とんでもないことを」
「私とクリストは捜索隊を組んで探しに行きます。ファニアは強いドラゴンですから精鋭じゃないと追跡は無理でしょう」
「頼んだぞ、イニアス、クリスト。ファニアは銀目だから狙われる。本人が強いから早々には捕まらないはずだが戦いの駆け引きを知らない。罠などの経験がないから心配だ」
「分かりました」
兄達はファニアを探しに行った。
その後、王様が現れた。
「まったくおまえ達は」
「申し訳ございません」
「ファニアは何を飲んでも効果はないから安心しろ」
「はい?」
「聖獣人に毒は効かないんだ」
「っ!」
「安心して泣いている場合じゃないぞ。記憶があるということは今も胸を痛めているということだ。
エリアスはファニアをどう思っているんだ?」
「僕は…獣化出来ないドラゴン獣人ですから」
「だが、誰も成し得なかった獣化の薬を作ったじゃないか。いつか完成品が仕上がるはずだ。
それにファニアは最強の私の求婚を断ったのはエリアスのためだ。ファニアには君が獣化できるかどうかは関係ないんだ。
ファニアを見つけたら可愛がってやれ」
「はい」
だけど2日、3日、4日と経っても見つからなかった。
ザクッザクッザクッ
ゴリゴリ ゴリゴリ ゴリゴリ ゴリゴリ
コポコポコポコポ
グツグツ グツグツ
“父上、母上、兄姉弟のみんな、ソロン先生、王様
いつも僕のせいでご迷惑をかけてしまい
申し訳なく思っています。
僕はファニアを見つけるまで限り戻りません。
試験薬をこれから飲みます。
また失敗するかもしれませんが獣化なしに
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僕が飲む薬の配合量は書きました。
もし僕が死んだら討伐隊のジュシアに
死体の重さを量ってもらって記録してから
解体して心臓の状態を絵で描いてください。
後世のドラゴン獣人族のために役立ててください。
イニアス兄上、クリスト兄上。
心から感謝しています。
エリアス・ラーヴァ”
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「ゴクッ ゴクッ ゴクッ」
ガシャン!
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