【完結】救済版:ずっと好きだった

ユユ

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ライアン達の子

制裁を受ける人 ブロース家

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【 ブロース公爵家の嫁ヴィヴィアンの視点 】


夫に手配を任せて、兄に相談をしに行った。

「バトラーズ公爵か~。あの方は団長でさえ敬意を払う。多分 公爵の実力は団長に匹敵するかそれ以上なのだろう。

夜会で団長と話す声が聞こえてきた。
本気で言った訳ではないだろうが、公爵が手合わせでもと言うと団長は苦笑いをして、辞表を出さないとならなくなるから止めておきますと答えた。

それと気配を感じ取れるようだ。後ろに人が通ると反応する。

かなりの実力者だ。影が挨拶にくるくらいだからな」

「え!?」

「近衛の制服を着ていたが目が普通じゃない。
あれは影だろう。しかも夫人にも挨拶をしてダンスを踊っていた。

詳しくは話せないが、彼らは普通そんなことはしない。あれでは潜入にもなっていないし、護衛にもなっていない。バトラーズ公爵夫妻がいるから顔を出しただけだ。

もしかしたら夫人も実力があるかもしれない。
彼らは強い者にしか興味がない。

陛下と親しいのも頷けるよ」

兄様は近衛ではないが、王宮騎士団の隊長を務めた人だ。副団長候補だったけど辞退した。
お父様が引退したいと言ったからだ。

婚家で起きたことを説明した。

「しかしブロース公爵家がな。長女の時に断るべきだったな。戻ってきていいんだぞ」

「夫がまともなので、もう一度チャンスを与えているところです」

「そうか。  

とにかくバトラーズ公爵家にはしっかり対応しろ。
保身や言い訳は口にするな。
しっかり謝罪して、許すか許さないか、どうしたいかは相手に委ねて受け入れるんだ」

「はい。お兄様」

「一緒に行くか?」

「夫の試練の時ですので、お兄様のお力はまだとっておきます」

「力などないよ。ヴィヴィアンを案じているだけだ」

「お兄様の存在が私に勇気を与えてくださいます」

「……命がないかもしれない。分かったな?」

「はい」




ベローナを悪魔祓いをしてくださる収容所を完備している教会へ大金と共に送った。

キャスリンは領地外の厳しい修道院へ。

そして世代交代をして義父は領地で働いてもらい。

義母は、受け入れてもらえず戻りたいと手紙を寄越したが、置いて行った離縁届を提出済みだし、義父と一緒に領地に置いても揉めて環境が悪くなるだけ。王都の屋敷は夫ジェイクが公爵として立ったし、使用人達にも気持ちを一新してほしいので、受け入れを断った。

義母は貴金属を根こそぎ持って行ったので、代々伝わるブロース公爵家の宝石だけはいくつか返却して、残りを売って慎ましく暮らしてくれと返事を出した。

もちろん戻さないと揉めると遠回しに書いておいた。

義母が返しに来て、夫に泣きついたが、夫ははっきりと断った。

しかも買取業者を呼んで、義母の荷物をかなり処分した。 

義母は騒いでいたが、無駄に馬車2台とか使わなくて済み、鞄二つでスッキリしただろう。
義母の歳を考えると、死ぬまで裕福な平民として暮らしていける。
郊外なら小さな一軒家も借りれるだろう。二人くらい平民の使用人を雇えばいいと思う。


そして、バトラーズ公爵と面会の約束が取れた。

夫と二人で出向き、全てを正直に報告して改めて謝罪をした。

「悪魔付き?」

「はい。ベローナの行動は愚かで、義母が甘やかした結果ではありますが、記憶も全くなく義父の寝室に行き関係を持つのは普通あり得ません。
顔に出るので嘘は吐いていません。
だとすると、悪魔付きだと判断しました。
あの教会は悪魔祓いをしてくださる方が複数いらして、収容所もございます。
恐らくギリギリ悪魔を払って神の元へ行けるのではないかと」

「死ぬまで祓うということかな?」

「左様でございます」

「夫人が考えたのか」

「夫です」

「なるほど」

「バトラーズ公爵。申し訳ございませんでした。
リリアン嬢はさぞ辛く不快な思いで学園に通っていたことでしょう。

キャスリンに続き、ベローナまで。
お詫びのしようもございません。
リリアン嬢の心の傷が少しでも癒えるなら、ブロース家はできる限りのことをさせていただきます」

「分かった。ブロース公爵。もういいだろう。
二人には災難だったかもしれないが、しっかりと対応してくてたので異論はない。
気持ちを新たに頑張っていこう」

「ありがとうございますバトラーズ公爵」

「夫人とリリアン嬢にも申し訳ございませんとお伝えくださいませ」

「夫人。今度兄君に屋敷の警備の見直しをしてもらうといい」

「必要ありませんわ。その時はまた、神のお叱りと思って受け止めますわ」

「ハハッ、そうか」




帰りの馬車で、夫に聞かれた。

「最後、どういう意味だ?」

「何でもないの。騎士仲間の意思疎通みたいなものよ」


やっぱり、ベローナと義父の件はバトラーズ公爵だったのね。

騎士団長と手合わせができて、工作も可能。

絶対に怒らせては駄目ね。お兄様に相談しに行って、忠告を聞いておいて正解だったわ。

でも、ベローナを背負って外壁を伝って行ったのかしら。それとも運良く廊下から運べたのかしら。
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