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ライアン達の子
それは交流とは言わない
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【 ヘイゼルの視点 】
周辺諸国は行けるとこは行ったけどつまらなかった。
少し遠くの国を覗くことにした。
第一王子が婚約を解消したらしい。
会ってみると品行方正な王子といった感じで見目も悪くはない。まあまあだ。
警戒心が強いな。
王妃に令嬢達の話を聞くと一人面白そうな子がいた。バトラーズ公爵家の娘。会いたい。
令嬢達を呼んでもらい、いつものように質問をしていくが、やはり物足りない。
やっとリリアン・バトラーズの番が来た。
流石公爵家。完璧なカーテシーだ。
この美しさには及ばないが、彼女もまあ美しいと言えよう。
彼女は質問に完璧に答えてくれたが少し機嫌が悪そうだ。試したことが分かっちゃったかな?
王族に媚びる様子はない。寧ろこの場にいたく無さそうだ。
ん? ゼイン王子が反応してる。そんな目で見つめていたら丸わかりだ。
片思いか?
彼女に婚約者はいないと聞いた。
公爵家の16歳の娘が?
何故王子は求婚しない。
最近まで婚約していたから時間を空けようとしているとか?
彼女は王子と目も合わさないな…嫌われてる?
令嬢達との交流を終えて、リリアンを部屋へ連れて行こうとしたらストップがかかった。
王族の使う応接間を使えという。そして人払いは出来ないと。
他国の王女に何かあってはまずいから?
いや、警備もメイドも目線は彼女へ向いている。
彼女が危険なのか、彼女を守りたいのか。
……面白い。
それに、一人だけつけられた護衛騎士は雰囲気が普通じゃない。彼女を座らせる位置を決めて彼女の側に立つ。
彼女を守るためにいるのだな。
それほど彼女が大事か?
「さっきの質問は不快だったかしら」
「ヘイゼル王女殿下の目的が私には分かりません」
「仲良くなりたいだけですわ」
「交流したいと招待された席で、試すなど。恥をかかされたと思う方もいらしたでしょう」
「ドレスの流行りだの宝石だの醜聞だの、そんな話を聞きたいなら自国で事足りますわ。
私は楽しませてくださる友人が欲しかったのです」
「友人の定義は何でしょう」
「つまり?」
「友人が欲しいと思っている側が相手を楽しませず突然品定めを始めてしまう。これは交流や友人探しではありません。おもちゃを探す行為ですわ」
「でも、私は王族ですし」
「身分を口にした瞬間から友人関係ではない別の関係となります。
楽しませてくれる友人ではなく、自分の気分を損ねない人形が欲しいだけですわ。
あのような質問をする場合は友人ではなく側近探しです」
「情報は貴族にとって大事ではありませんか?」
「そうです。
ですが、貴族だからといって何でも情報が手に入るわけでもありません。それに家の方針や財力、教師によって与えられる知識は違いますし、求められるものも違うのです。
王女殿下は城の者を使わずにその情報を得ましたか?
貴族令嬢達の各家門が、外交や国際情報のエキスパートを抱えているわけではありません。
密偵、情報員などを抱えているわけではありません。
王女殿下のように資金が潤沢でもありません。
そんな彼女達を試し心の中で蔑んでいて友人なんて作れるわけがありませんわ」
「……リリアン」
「はい」
「私が浅慮で傲慢であった。許して欲しい」
「こちらこそ王女殿下に生意気を、」
「ヘイゼルと呼んで欲しい。嫌か?殿下でも何でもない。ヘイゼルだ」
「ヘイゼル様。もっと楽になさいませ」
「楽に?」
「せっかく生きていて周りは興味深いもので溢れています。
確かに私も刺繍とかいかにも貴族令嬢の嗜みみたいなものを押し付けられるのは嫌ですが、敬意は持っています。
ヘイゼル様のお召し物も、習えば出来るというものではございません。たっぷり使われたレースは、根気と修練と才能の賜物です。
興味が無いのは構いませんが下に見てはなりません。
下に見たければ、見たいものを極めてからになさいませ。その頃には、世界が少し変わりますわ」
「下にはみていないよ」
「失礼しました。
同調しなくても構いません。押し付けて来ない限り相手の趣味を尊重しませんか」
「そうだな」
「このカップも、あのチェストも、この建物も、掘り下げれば実に興味深いと思いませんか?
ヘイゼル様のカップも私のカップも、型押しクッキーとは違います。これほど違わぬ物を手作りするのですからすごいと思いませんか?ソーサーも比べてください。私にはとても出来ませんわ。
きっとヘイゼル様は庭園の散策もお好きではありませんね?
植物も生命の神秘です。姿も香りも役割もそれぞれ違いますし、効果も違います。
もっと力を抜いて深呼吸して、葉や花弁に触れてみませんか。人間のように花や木も同じに見えて違うのですよ」
「リリアン。今から花を見に行こう」
「喜んで」
周辺諸国は行けるとこは行ったけどつまらなかった。
少し遠くの国を覗くことにした。
第一王子が婚約を解消したらしい。
会ってみると品行方正な王子といった感じで見目も悪くはない。まあまあだ。
警戒心が強いな。
王妃に令嬢達の話を聞くと一人面白そうな子がいた。バトラーズ公爵家の娘。会いたい。
令嬢達を呼んでもらい、いつものように質問をしていくが、やはり物足りない。
やっとリリアン・バトラーズの番が来た。
流石公爵家。完璧なカーテシーだ。
この美しさには及ばないが、彼女もまあ美しいと言えよう。
彼女は質問に完璧に答えてくれたが少し機嫌が悪そうだ。試したことが分かっちゃったかな?
王族に媚びる様子はない。寧ろこの場にいたく無さそうだ。
ん? ゼイン王子が反応してる。そんな目で見つめていたら丸わかりだ。
片思いか?
彼女に婚約者はいないと聞いた。
公爵家の16歳の娘が?
何故王子は求婚しない。
最近まで婚約していたから時間を空けようとしているとか?
彼女は王子と目も合わさないな…嫌われてる?
令嬢達との交流を終えて、リリアンを部屋へ連れて行こうとしたらストップがかかった。
王族の使う応接間を使えという。そして人払いは出来ないと。
他国の王女に何かあってはまずいから?
いや、警備もメイドも目線は彼女へ向いている。
彼女が危険なのか、彼女を守りたいのか。
……面白い。
それに、一人だけつけられた護衛騎士は雰囲気が普通じゃない。彼女を座らせる位置を決めて彼女の側に立つ。
彼女を守るためにいるのだな。
それほど彼女が大事か?
「さっきの質問は不快だったかしら」
「ヘイゼル王女殿下の目的が私には分かりません」
「仲良くなりたいだけですわ」
「交流したいと招待された席で、試すなど。恥をかかされたと思う方もいらしたでしょう」
「ドレスの流行りだの宝石だの醜聞だの、そんな話を聞きたいなら自国で事足りますわ。
私は楽しませてくださる友人が欲しかったのです」
「友人の定義は何でしょう」
「つまり?」
「友人が欲しいと思っている側が相手を楽しませず突然品定めを始めてしまう。これは交流や友人探しではありません。おもちゃを探す行為ですわ」
「でも、私は王族ですし」
「身分を口にした瞬間から友人関係ではない別の関係となります。
楽しませてくれる友人ではなく、自分の気分を損ねない人形が欲しいだけですわ。
あのような質問をする場合は友人ではなく側近探しです」
「情報は貴族にとって大事ではありませんか?」
「そうです。
ですが、貴族だからといって何でも情報が手に入るわけでもありません。それに家の方針や財力、教師によって与えられる知識は違いますし、求められるものも違うのです。
王女殿下は城の者を使わずにその情報を得ましたか?
貴族令嬢達の各家門が、外交や国際情報のエキスパートを抱えているわけではありません。
密偵、情報員などを抱えているわけではありません。
王女殿下のように資金が潤沢でもありません。
そんな彼女達を試し心の中で蔑んでいて友人なんて作れるわけがありませんわ」
「……リリアン」
「はい」
「私が浅慮で傲慢であった。許して欲しい」
「こちらこそ王女殿下に生意気を、」
「ヘイゼルと呼んで欲しい。嫌か?殿下でも何でもない。ヘイゼルだ」
「ヘイゼル様。もっと楽になさいませ」
「楽に?」
「せっかく生きていて周りは興味深いもので溢れています。
確かに私も刺繍とかいかにも貴族令嬢の嗜みみたいなものを押し付けられるのは嫌ですが、敬意は持っています。
ヘイゼル様のお召し物も、習えば出来るというものではございません。たっぷり使われたレースは、根気と修練と才能の賜物です。
興味が無いのは構いませんが下に見てはなりません。
下に見たければ、見たいものを極めてからになさいませ。その頃には、世界が少し変わりますわ」
「下にはみていないよ」
「失礼しました。
同調しなくても構いません。押し付けて来ない限り相手の趣味を尊重しませんか」
「そうだな」
「このカップも、あのチェストも、この建物も、掘り下げれば実に興味深いと思いませんか?
ヘイゼル様のカップも私のカップも、型押しクッキーとは違います。これほど違わぬ物を手作りするのですからすごいと思いませんか?ソーサーも比べてください。私にはとても出来ませんわ。
きっとヘイゼル様は庭園の散策もお好きではありませんね?
植物も生命の神秘です。姿も香りも役割もそれぞれ違いますし、効果も違います。
もっと力を抜いて深呼吸して、葉や花弁に触れてみませんか。人間のように花や木も同じに見えて違うのですよ」
「リリアン。今から花を見に行こう」
「喜んで」
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