【完結】救済版:ずっと好きだった

ユユ

文字の大きさ
65 / 73
ライアン達の子

経緯

しおりを挟む
【 ヘイゼルの視点 】



ガウンを羽織り、髪を拭きながらリリアンの元に戻ってソファに座った。

「自惚れじゃなくてさ、僕、美し過ぎるんだ。

自国ではそれは大変でね。

お妃様にしてくれ、愛人にしてくれと、令嬢達が煩いんだ。夫人方も夫の隙をついて誘ってくるんだよ。

他国からは王女が結婚しろと煩いし。

一応婚約者は居たんだよ?政略だけど。
一人目と二人目は心を病んで辞退した。
三人目は鬱陶し過ぎて冷遇したら騎士とデキていた。
四人目は他国の王女と乱闘して投獄された。

僕は何の相手もしていないのに令嬢達が争うんだ。
無意味だよね。

ウンザリしてさ、他国に王女として出向くんだ。
そこの貴族を婚約者候補にして令嬢達を女の姿で見極めた。

今度は美し過ぎる王女が男漁りに来たと陰口を叩かれる。

美し過ぎるのも不便だよ。

この顔を見た女性は、大抵 陶酔するか自己嫌悪に陥るかのどちらかだ。

君は大丈夫そうだね?リリアン」

「何故、受け入れ前に気が付かないのでしょう」

「第二王女はヘイデリーといって側妃の産んだ娘がいるから、疑問に思わないみたいだ」

「似た名前を付けられたのですね」

「父上が酔って付けてしまった。
一度神の前で付けると変えられない」

「神の前?」

「産まれて一週間後に司教を呼んで祝福を授けて貰いながら、名を信徒の名簿に書くことで名前がきまるんだ。
間違えて、二日前に産まれた僕の名前を書いてしまった。
慌てて側妃が付け足してヘイデリーとなった。馬鹿でしょ」

「……」

「姉王女からは虐められたよ。
隣に並ぶな、近寄るなってね。
弟王子も妹王女も嫌がった。

だけど王太子のフィンリーはそんなことはしない。問題が起きると困った顔をするけど、可愛がってくれた。僕にとっては救いだったよ」

「どんな方ですか」

「少し支配的な感じかな。
努力家で賢い人だ。器用な人でもある。

ガッシリとした体でダークグレーの髪にアイスブルーの瞳。
僕は兄上のような容姿に生まれたかった。

剣の稽古を受けても、女みたいだと揶揄われるしさ。そんなに弱くないけど、見た目がね。体付きは仕方ないだろう? もう少し歳を重ねれば厚みも出ると思うけど。

リリアンは僕みたいなのは嫌?」

「嫌ではありません。
理想が父というだけです」

「今夜会えるんだよね」

「会えますね」

「リリアン、夜、君と踊りたい」

「女同士でですか?」

「バラしたら怒られるかな」

「どうでしょう。国際問題になるのかどうか、前例が無いので見当も付きません」


そこにノックがあった。

僕の侍女に応対させた。

「公女様のドレスが到着いたしました。お支度をお願いします」

「時間のようですわ。支度をしますので失礼いたします」

「会場で会おう」

「はい、ヘイデル様」



リリアンが護衛を連れて退室した。


「ゾイ。僕達も支度をしよう」

「かしこまりました」

ゾイは僕付きの侍女で同性愛者だ。彼女のおかげでこんなことができている。

そして護衛騎士の内のこの二人が一番側にいる。
カイとモーガンだ。

僕「ゾイ、カイ、モーガン。
リリアンをどう思う?」

ゾ「私は 小動物のように可愛い系の 怯えた歳下の女に欲情します」

僕「…違うよ。僕の伴侶にだよ」

カ「難しいかもしれません」

モ「よく調査なさらないと」

僕「僕はリリアンが気に入ったんだけど、妃に向かないか?」

カ「そうではなく、何故あの者に守られているのか気になります」

モ「それに、彼女はゼイン王子殿下が目を付けているのでは?」

僕「でも彼が手に入れたわけではない」

やっぱり あの護衛は気になるな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

モブは転生ヒロインを許さない

成行任世
恋愛
死亡ルートを辿った攻略対象者の妹(モブ)が転生ヒロインを断罪します。 .

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

完結 王族の醜聞がメシウマ過ぎる件

音爽(ネソウ)
恋愛
王太子は言う。 『お前みたいなつまらない女など要らない、だが優秀さはかってやろう。第二妃として存分に働けよ』 『ごめんなさぁい、貴女は私の代わりに公儀をやってねぇ。だってそれしか取り柄がないんだしぃ』 公務のほとんどを丸投げにする宣言をして、正妃になるはずのアンドレイナ・サンドリーニを蹴落とし正妃の座に就いたベネッタ・ルニッチは高笑いした。王太子は彼女を第二妃として迎えると宣言したのである。 もちろん、そんな事は罷りならないと王は反対したのだが、その言葉を退けて彼女は同意をしてしまう。 屈辱的なことを敢えて受け入れたアンドレイナの真意とは…… *表紙絵自作

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

10年前に戻れたら…

かのん
恋愛
10年前にあなたから大切な人を奪った

処理中です...