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新妻の魔法
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【 クリストファーの視点 】
「夫人ですよ」
「え?」
「ブラージェル夫人が大改革したのです。
下働きから漁師にいたるまで、挨拶の仕方などを教えてくださいました。自分は漁師だから関係ないとかではダメなのです、話しかけられたときに、全員が同じ礼儀で接することができないとダメだと指導を受けました。
とにかく清潔に、ゴミは拾う。
臭い場所では食事どころか滞在もしたくないと思うのが普通だし、ゴミが落ちていると別のゴミを呼ぶからダメだと徹底なさいました。
ゴミを捨てるお客様が激減しました。
案内板も効果抜群です。見れば分かるので、いちいち仕事の手を止めて案内しなくて済みます。
文字の読めない人には応対が必要ですが。
公衆トイレというものを建てて、専属の掃除人を置いて清潔にしています。まるでお城のトイレですよ。お城なんて行ったことがありませんがね。
鏡付きの化粧台も椅子もあって、化粧直しができますし、男女ともに出入口に大きな鏡を置いて全身写して身だしなみを確認できるのです」
「かなり金をかけているようだが、大丈夫なのか?」
「ブラージェル夫人が寄付してくださいました。
改革案を無償で出していただいているのにお金まで寄付していただくのは申し訳ないとお伝えしましたら、“私、鉱山オーナーなのよ”と笑っておられました。
お金も、改善案や改装デザイン、食べ物のレシピも全部夫人からいただきました。
夫人は本当に素晴らしい方です。思い浮かんだ案をサッと指示してしまうので同時進行ができました。
難しいこともありませんし、指示が具体的なので分かりやすいのです。
飴は、内職の女性を2日だけ集めて指導して、後は菓子職人が家庭訪問して合格が出るまで指導しました。スタンプラリーの台紙は夫人がイメージを簡単に書いて、それをベースに絵の上手い子供が作成しました。スタンプも木彫りが趣味のお爺さんに頼みました。
“専門職人じゃなくたっていいの。やれる人がやればいいの。だってもったいないじゃない?”と言って町民で適した人に声を掛けて作らせてしまうのです。
建物などの修繕も職人だけではなく、港のみんなで手伝いました。
“難しい部分だけ職人に任せて、後は手が空いている人がやればいいの。建物が誰のものかとか誰が使っているかなんて関係ないの”と言って、子供から年寄りまで声を掛けて一緒に作業なさっておりました。
夫人の魔法にかかった町民が使えるものを持ち寄って工夫するようになりました。
廃屋の使える板を使って、外置きの休憩用の椅子を作った者もいますし、着られなくなった服を解いて幼子用の食事エプロンを作ってレストランで貸し出したり、貝殻を砕いて公衆トイレの内外装の飾りにしたり、ドライフラワーを作ってポプリをつくり、美しいガラス瓶に入れて芳香剤としてトイレに置いたり。今まで人任せだったのが嘘のようです。
そうなると本職達が触発されてあっという間に今の状態まで整いました。まだ道など途中の場所もありますがそれ程時間はかからないでしょう。
料理のレシピも実際に夫人が一緒に作って見せてくださるのです。夫人は多才でいらっしゃいますね。
もう小さな漁港のある町というよりは小さな水の都になりそうです。
礼儀正しくなりましたから喧嘩も減りました。
賑わって忙しいので我々の心も豊かになって、些細なことで揉めることもなくなりました。
王都新聞を読んで悔しくなりました。
あんなに素晴らしい人に何て仕打ちをなさるのか。
ですが王子…レアンドル様が手放してくださったから、我々の元に来ていただけたのですよね。
とにかく、絶対に夫人に逃げられてはいけません。
どうか頑張ってください」
「そうだな」
既にやらかしていて 手遅れだとは言えなかった。
港町のレストランで食事をしたが、どれも美味しくて見た目もいいし食べやすい。
店内は以前とは全然違う。シンプルなのに品がある。
あっちには子供用の椅子があり、向こうのテーブルでは乳幼児用に転落しない作りになっている。
これなら親も安心だな。
「見てください。離乳食を食べる子供向けのヒヨコプレートがありますよ。
トロトロ野菜煮込みパスタ、チーズ、フルーツが無料らしいです。
大人が一人前を注文すればヒヨコプレートが一人分無料で提供してもらえるみたいですね。
これはすごいですね」
「全くだ。
エリーズの屋敷に寄るぞ」
「先触れが無いと嫌がられますよ」
「予定になかったから仕方ない」
突然行って様子を確認したい。
「かしこまりました」
エリーズの屋敷に到着すると、来客があったようで見送りのためにエリーズが外に出ていた。
よくは見えないが、誰かと腕を組んで微笑んでいる。そして…男と抱き合っていた。
「こういうこともあるから先触れは必要なのだな」
「旦那様、」
「屋敷に戻るから出してくれ」
馬車はブラージェル邸に向けて出発した。
「夫人ですよ」
「え?」
「ブラージェル夫人が大改革したのです。
下働きから漁師にいたるまで、挨拶の仕方などを教えてくださいました。自分は漁師だから関係ないとかではダメなのです、話しかけられたときに、全員が同じ礼儀で接することができないとダメだと指導を受けました。
とにかく清潔に、ゴミは拾う。
臭い場所では食事どころか滞在もしたくないと思うのが普通だし、ゴミが落ちていると別のゴミを呼ぶからダメだと徹底なさいました。
ゴミを捨てるお客様が激減しました。
案内板も効果抜群です。見れば分かるので、いちいち仕事の手を止めて案内しなくて済みます。
文字の読めない人には応対が必要ですが。
公衆トイレというものを建てて、専属の掃除人を置いて清潔にしています。まるでお城のトイレですよ。お城なんて行ったことがありませんがね。
鏡付きの化粧台も椅子もあって、化粧直しができますし、男女ともに出入口に大きな鏡を置いて全身写して身だしなみを確認できるのです」
「かなり金をかけているようだが、大丈夫なのか?」
「ブラージェル夫人が寄付してくださいました。
改革案を無償で出していただいているのにお金まで寄付していただくのは申し訳ないとお伝えしましたら、“私、鉱山オーナーなのよ”と笑っておられました。
お金も、改善案や改装デザイン、食べ物のレシピも全部夫人からいただきました。
夫人は本当に素晴らしい方です。思い浮かんだ案をサッと指示してしまうので同時進行ができました。
難しいこともありませんし、指示が具体的なので分かりやすいのです。
飴は、内職の女性を2日だけ集めて指導して、後は菓子職人が家庭訪問して合格が出るまで指導しました。スタンプラリーの台紙は夫人がイメージを簡単に書いて、それをベースに絵の上手い子供が作成しました。スタンプも木彫りが趣味のお爺さんに頼みました。
“専門職人じゃなくたっていいの。やれる人がやればいいの。だってもったいないじゃない?”と言って町民で適した人に声を掛けて作らせてしまうのです。
建物などの修繕も職人だけではなく、港のみんなで手伝いました。
“難しい部分だけ職人に任せて、後は手が空いている人がやればいいの。建物が誰のものかとか誰が使っているかなんて関係ないの”と言って、子供から年寄りまで声を掛けて一緒に作業なさっておりました。
夫人の魔法にかかった町民が使えるものを持ち寄って工夫するようになりました。
廃屋の使える板を使って、外置きの休憩用の椅子を作った者もいますし、着られなくなった服を解いて幼子用の食事エプロンを作ってレストランで貸し出したり、貝殻を砕いて公衆トイレの内外装の飾りにしたり、ドライフラワーを作ってポプリをつくり、美しいガラス瓶に入れて芳香剤としてトイレに置いたり。今まで人任せだったのが嘘のようです。
そうなると本職達が触発されてあっという間に今の状態まで整いました。まだ道など途中の場所もありますがそれ程時間はかからないでしょう。
料理のレシピも実際に夫人が一緒に作って見せてくださるのです。夫人は多才でいらっしゃいますね。
もう小さな漁港のある町というよりは小さな水の都になりそうです。
礼儀正しくなりましたから喧嘩も減りました。
賑わって忙しいので我々の心も豊かになって、些細なことで揉めることもなくなりました。
王都新聞を読んで悔しくなりました。
あんなに素晴らしい人に何て仕打ちをなさるのか。
ですが王子…レアンドル様が手放してくださったから、我々の元に来ていただけたのですよね。
とにかく、絶対に夫人に逃げられてはいけません。
どうか頑張ってください」
「そうだな」
既にやらかしていて 手遅れだとは言えなかった。
港町のレストランで食事をしたが、どれも美味しくて見た目もいいし食べやすい。
店内は以前とは全然違う。シンプルなのに品がある。
あっちには子供用の椅子があり、向こうのテーブルでは乳幼児用に転落しない作りになっている。
これなら親も安心だな。
「見てください。離乳食を食べる子供向けのヒヨコプレートがありますよ。
トロトロ野菜煮込みパスタ、チーズ、フルーツが無料らしいです。
大人が一人前を注文すればヒヨコプレートが一人分無料で提供してもらえるみたいですね。
これはすごいですね」
「全くだ。
エリーズの屋敷に寄るぞ」
「先触れが無いと嫌がられますよ」
「予定になかったから仕方ない」
突然行って様子を確認したい。
「かしこまりました」
エリーズの屋敷に到着すると、来客があったようで見送りのためにエリーズが外に出ていた。
よくは見えないが、誰かと腕を組んで微笑んでいる。そして…男と抱き合っていた。
「こういうこともあるから先触れは必要なのだな」
「旦那様、」
「屋敷に戻るから出してくれ」
馬車はブラージェル邸に向けて出発した。
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