【完結】責任など取らなくて結構です!

ユユ

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身の程知らず


【 アナベル視点 】


お母様から、王太子殿下が領地の屋敷に滞在すると手紙をもらい、慌てて帰った。

コルセットをキツく締め上げ、魅惑的なドレスでお出迎えをした。

完璧な王子様は馬車から降りると私に目を止めた。

だけどすぐ同乗していた令嬢に手を差し伸べた。

彼女は誰?

若くて可愛らしい令嬢だった。


後で聞いたらヴェリテ公爵令息の実習先がうちで、令嬢と殿下は公子に会いに来たらしい。

令嬢はヴェリテ公爵家の娘で殿下の従兄妹。なら仕方ないわね。


案内をしていたが殿下は全く私を見てくれない。
いつもならコレで好意を引けるのに。
しかも腕さえ貸してくれない。

に転倒して恥ずかしい姿を晒してしまった。だけど手を貸してもくれない。
もしかして そういう王族の決まりがあるのかもしれない、

気を取り直して…


晩餐の席に着いてお客様を待つと殿下が令嬢をエスコートしていた。
扱いも表情もまるで違う。
愛しい者を見るかのような甘い顔で彼女の椅子を引く。

私は隣にいても一瞬も見てくれないのに、殿下は常に令嬢へ視線を向ける。

令嬢の纏うドレスも宝飾品もとても高そうだ。
私だって、こんな辺鄙な田舎の子爵家に生まれず公爵家に生まれていたら……。


は?学園に入っていなくて既に卒業レベル!?
だからそれは公爵家に生まれたからでしょう!


そうだわ、王太子妃の第二子も女児だった。
側妃の選定に入るはず。
側妃は子爵家の娘はなれないと言われたけどお気に召して貰えればチャンスはある。
いっそ既成事実を……。

え?側妃はとらない? 仕方ない妾でも。


パ「娘は健康ですし、器量も悪くはないと思うのですが」

ク「それは、基本です。

テステュータル嬢のドレスは誰が選んでいるのですか? あのようなドレスで登城しただけで落とされる。

妾は男児を産むだけの存在で多くを求められないと思われがちですが、もしかしたら私の後に国王になる子を産ませるのです。
健康で多少の器量良しでは足りないのです。

まず成績です。学年で半数より上の順位を求めます。学園で努力出来ない者は脱落です。
せっかく与えてもらえた環境に感謝できないと見做します。余程の財政難なら別ですが。

そして人との関わり方も見ます。
誰かを貶めたりするようでは困りますからね。

令嬢は先程 私の従妹を貶めようとしました。
驚きましたよ。王兄の娘相手にですよ?
何の目的でその様なことをするのですかね。
これが格下や、思い通りの状態の相手なら、もっと品の無い会話を続けたのでしょう。

妾は王城で暮らすのですよ?
城には令嬢より身分や地位の高い者が多く働いていますし、客としても登城します。
妾は後宮で生活しますが 呼ばれたら城内を歩きますし、会話もします。

国王陛下や王妃や王太子妃とも話をしたり食事をすることも可能性としてはゼロではありません。
それなのに装いに品が無く、格上で王族の血を引く者にあのような口をきくなどあり得ません。城でもやらかすのが目に見えて分かります。

その時は不敬罪ですよ?私の子を産んでも関係ありません。妊娠中なら産み終われば刑を執行します。

我々は王子の産みの母が罪人だと蔑まされないように事前審査をするのです。

この調子ならメイドに遠慮なく矛先を向けそうです。

選ばれない理由がお分かりですか?夫人」

散々言われて悔しくて仕方ない。 

子を産むだけなのに学業なんか関係ないじゃない!
夜伽の技の方が大事でしょう?
その気にさせて搾り取らないと孕まないのだから!
ドレスだってその気にさせるためのものなのに!


従兄妹は結婚出来ないから手を出さないだけ。
殿下は令嬢が好きなのは一目瞭然。
私のことを傷付けた代償は払ってもらうわ。

クローゼットの奥の中の引き出しを開けると鍵付きの小箱を取り出した。

「もう一つ必要ね」



翌朝、お詫びの品を買いに行くと言って隣のバロウ辺境伯の領地に来た。夜までに帰らないと。

使用人に菓子や酒を買いに行かせて薬処へやってきた。

「ヒュドラの雫の解毒剤が欲しいの」

「身分証のご提示をお願いします」

「え?身分証!?」

「はい。この薬が必要ということは毒もお持ちですね?」

「ち、違うわ。友人が飲まされたみたいで」

「では提示に問題ございませんね?」

あの令嬢の滞在は数日。猶予が無い。

「ほら、これでいい?」

「アナベル様、確かに。
こちらは毒の量と同等以上でなければ効きませんので、飲んだ量が分からない場合は全部飲ませてしまった方が安心でしょう。
毒の服用から時間が経つ毎に効き目が弱まります。
10時間を超えれば助かりません」

大金を置いて馬車に戻った。



一人だけ違う食べ物や飲み物を口にさせるのは難しい。同じものでなければならない。
だから菓子にした。

ヒュドラの雫は昏睡しながら徐々に呼吸が弱まり死ぬ。この毒に気付く者はそう居ないと聞くが、念には念を入れておくことにした。

屋敷に戻り、部屋でこっそり全てのタルトに毒を2滴 垂らした。解毒剤も垂らした。
赤い星型のタルトだけ、解毒剤を1滴しか垂らさなかった。

全員が発症して、1人だけ回復しない。
毒だとバレたとしても、これなら運が悪かったと思われる。
同じものを摂取した私が疑われることはないわよね。



タルトの入った箱を持って厨房に行き、給仕係を呼び止めた。

「明日のティータイムに出してちょうだい。
星型は王族へ。黄色は男性、赤は女性用よ」

「かしこまりました」








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