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僕のお披露目
しおりを挟む仕事が始まったが、本当に副団長の小間使という職だ。時には副団長の荷物持ちで終わる日もある。
そうなれば当然、妬みも生まれる。
陰口を言われているのは分かっていた。同期からは不満は出ていないようなのが救いだった。
ある日、副団長の後について移動をしていると僕の悪口が聞こえて来た。
「サモールだろう? 何で騎士服なんか着てるんだ? 使用人の作業服でいいだろう」
「庭師とか似合いますよね」
「ついて回るだけで補佐官の賃金がもらえるのだから俺が代わりたいよ」
「いいですね。その金で飲みに行きましょう」
「ハハハッ」
副団長は足を止めて向き直り、声の方へ向かって行った。
「下等な話をしていたのは近衛の副隊長と部下じゃないか」
「副団長っ!」
2人は姿勢を正し敬礼をした。
「お前は自分の役割を分かっていなかったのだな。
午後一番に訓練場に来れるだけの近衛を集めろ。
お前達2人は必ず来い。団長に話を通しておく」
そう言って立ち去った。
僕への鋭い視線が突き刺さるが、副団長の後に続いた。
「副団長、僕が役に立っていないだけです。
下っ端からやりますので配属を変えてください」
「クリス。上官は私だ。
それに今、下っ端の仕事をさせているだろう」
「でも、団結が乱れます」
「それがおかしいんだよ。我々が忠誠を誓っているのは?役目は?
脇見をして輪を乱す者は害でしかない。
防具を持ってこい」
「かしこまりました」
副団長は団長室へ入って行った。
そして午後。防具を持って訓練場に行くと、団長、副団長、近衛隊、騎士隊の隊長達、そして王太子殿下がいらしていた。
「副団長、すみません、遅れましたか」
「遅れていないから気にするな」
少しして、午前中に僕の陰口を言っていた2人が防具を着けてやって来た。
「では、近衛隊バード副隊長とサモール卿の訓練を始める。
副隊長、今から1分間、サモールに打ち込みをしてみろ。側頭部、首、顔面は狙うなよ。
クリスは攻撃するな。木刀で防げ。分かったな」
「はい」
「本当にいいんですか?副団長」
「バード副隊長、木刀を待て。始めるぞ」
向かい合い、構えると、副団長の合図とともにがむしゃらに木刀を振り下ろしてきた。
だが、全部受け止めた。
これでいいんですか?副団長。
「では交代だ。副隊長、胴体の防具をもう一つ着けろ」
「それでは動きが抑制されます」
「動かなくていい。副隊長は一撃だけ受ければいい。正面から一度だけ振り下ろす。
受け止めきれたら副隊長の不満を解消してやろう。
正し、木刀が防具に付いたら負けだ。分かったな?」
「では新人のサモール卿に騎士団の雑用係をさせることを望みます」
「いいだろう。
クリス。上から振ると危ないから横に振れ。
副隊長。木刀は胸の位置に横に振る。木刀を顔の正面に構えると鼻が折れるどころか退職だ。
気を付けろ」
副隊長は鼻で笑って少し斜めに構えた。
「クリス。本気でいけ」
「でも」
「責任は私にある。大丈夫」
「分かりました」
僕は構えて合図と共に渾身の力を込めて振った。
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