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僕の妻
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一旦、副団長に連れられてコンラッド邸に帰った。
住んだのは…と言うよりはちょっと泊まった程度で我が家という気はまるでしない。“お邪魔します”とつい言ってしまった。
副団長は苦笑いをしていた。
湯浴みをして、メイド達がマッサージをしてくれた。
疲れが一気に出てきてしまった。
そのまま眠りに落ちた。
起きたのはまた夕方。ちょっと居眠りしたのかと思ったら丸一日眠り込んでしまったようだ。
夕食の時間に呼んでもらい、副団長とリリアナに謝罪した。
「昨夜はすみませんでした」
「7年も戦場に居たのだから相当疲れが溜まっているのだろう。当然だから気にするな」
「はい、ありがとうございます」
食事の間も終始静かなリリアナはとても美しかった。物語に出てくる女神のようだが少し細すぎる気がするし顔色も良くない。食べる量も少ない。
「リリアナ。食事の量はそれで大丈夫か?顔色も良くない」
「夫がずっと戦地へ行っていれば、妻は気が気じゃなくて食べ物など喉を通らなくなります」
「そうか。心配かけたな」
「もう、ここにいてくださるのですよね」
「コンラッドである限り、拠点はここになる」
「……」
「クリス。発つまではゆっくり体を休めなさい」
「発つまで?」
「陛下からエスペランド復興の手伝いを任命された」
「……いつ発つのですか」
「四日後だ」
「四日……パーティはなさらないのですか」
「あまりに長い戦いだったから、パーティをやるよりも復興支援にお金をかけようということになったんだ」
「そうですか」
「クリス。今夜もマッサージしてもらってしっかりと眠りなさい」
「そうさせていただきます」
「……」
結局、リリアナとは当たり障りのない会話を少し交わしただけで出発日前夜を迎えた。
マッサージを終えて寝るだけとなったところでリリアナが訪ねてきた。
「クリス。
結婚式の夜も、翌朝も、申し訳ありませんでした。
あの時の私は自分の気持ちを優先していました。
しかも私は未熟でした。
クリスに愛してもらいたい。待たせた分、一刻も早く癒したい。
焦りとか葛藤とか不安とか様々な感情が支配していて、負けてしまいました。
貴方に離縁を迫られて、辛かった。必要とされない女なんだなって悲しかった。
だけどどうしても諦めきれなくて、貴方を縛りつけました。
クリスを見かけたあの日から、クリスに抱っこしてもらった時から、私の心は貴方に囚われているのです。
クリスがどうしても、私とは夫婦としてやっていけない、結ばれたくない、というのであれば離縁に応じます。政略結婚でもしてコンラッドを未来に繋ぐことにします。
お返事をください」
「リリアナ。
私なりに君を大事にしたつもりだったし、好きだった。
だけど7年経ってしまったし、私には子が二人できた。
陛下も妻を二人娶ることを許可してくださったし、望んだ関係ではなかったが、私の子を産んでくれたルイーザに感謝しているし、蔑ろにはしたくない。
正直、リリアナのため、コンラッド家のためを思うのであれば、他の令息と結ばれた方がいいのではと思う。
私と夫婦として続けるのであれば、子やルイーザのことを認めなければならない。
君にそれが出来るとは思えない。
復興の任務が終われば、今度は違うかたちでエスペランドへ行くだろう。
今言われているのは、国とエスペランドの絆を維持し、カロン対策の手伝いをする任務だ。
陛下が配慮してくださっている。
それは陛下がルイーザとの関係を後押しなさっているからだ。
リリアナはやっていけるのか?」
「好きなんだから嫉妬はします。
だけどこうなった以上、私が別れたくないと思うなら受け入れなくてはなりません。
クリスが今、私に手を付けるのか嫌だと言うのであれば終わりにします」
「リリアナ、おいで」
住んだのは…と言うよりはちょっと泊まった程度で我が家という気はまるでしない。“お邪魔します”とつい言ってしまった。
副団長は苦笑いをしていた。
湯浴みをして、メイド達がマッサージをしてくれた。
疲れが一気に出てきてしまった。
そのまま眠りに落ちた。
起きたのはまた夕方。ちょっと居眠りしたのかと思ったら丸一日眠り込んでしまったようだ。
夕食の時間に呼んでもらい、副団長とリリアナに謝罪した。
「昨夜はすみませんでした」
「7年も戦場に居たのだから相当疲れが溜まっているのだろう。当然だから気にするな」
「はい、ありがとうございます」
食事の間も終始静かなリリアナはとても美しかった。物語に出てくる女神のようだが少し細すぎる気がするし顔色も良くない。食べる量も少ない。
「リリアナ。食事の量はそれで大丈夫か?顔色も良くない」
「夫がずっと戦地へ行っていれば、妻は気が気じゃなくて食べ物など喉を通らなくなります」
「そうか。心配かけたな」
「もう、ここにいてくださるのですよね」
「コンラッドである限り、拠点はここになる」
「……」
「クリス。発つまではゆっくり体を休めなさい」
「発つまで?」
「陛下からエスペランド復興の手伝いを任命された」
「……いつ発つのですか」
「四日後だ」
「四日……パーティはなさらないのですか」
「あまりに長い戦いだったから、パーティをやるよりも復興支援にお金をかけようということになったんだ」
「そうですか」
「クリス。今夜もマッサージしてもらってしっかりと眠りなさい」
「そうさせていただきます」
「……」
結局、リリアナとは当たり障りのない会話を少し交わしただけで出発日前夜を迎えた。
マッサージを終えて寝るだけとなったところでリリアナが訪ねてきた。
「クリス。
結婚式の夜も、翌朝も、申し訳ありませんでした。
あの時の私は自分の気持ちを優先していました。
しかも私は未熟でした。
クリスに愛してもらいたい。待たせた分、一刻も早く癒したい。
焦りとか葛藤とか不安とか様々な感情が支配していて、負けてしまいました。
貴方に離縁を迫られて、辛かった。必要とされない女なんだなって悲しかった。
だけどどうしても諦めきれなくて、貴方を縛りつけました。
クリスを見かけたあの日から、クリスに抱っこしてもらった時から、私の心は貴方に囚われているのです。
クリスがどうしても、私とは夫婦としてやっていけない、結ばれたくない、というのであれば離縁に応じます。政略結婚でもしてコンラッドを未来に繋ぐことにします。
お返事をください」
「リリアナ。
私なりに君を大事にしたつもりだったし、好きだった。
だけど7年経ってしまったし、私には子が二人できた。
陛下も妻を二人娶ることを許可してくださったし、望んだ関係ではなかったが、私の子を産んでくれたルイーザに感謝しているし、蔑ろにはしたくない。
正直、リリアナのため、コンラッド家のためを思うのであれば、他の令息と結ばれた方がいいのではと思う。
私と夫婦として続けるのであれば、子やルイーザのことを認めなければならない。
君にそれが出来るとは思えない。
復興の任務が終われば、今度は違うかたちでエスペランドへ行くだろう。
今言われているのは、国とエスペランドの絆を維持し、カロン対策の手伝いをする任務だ。
陛下が配慮してくださっている。
それは陛下がルイーザとの関係を後押しなさっているからだ。
リリアナはやっていけるのか?」
「好きなんだから嫉妬はします。
だけどこうなった以上、私が別れたくないと思うなら受け入れなくてはなりません。
クリスが今、私に手を付けるのか嫌だと言うのであれば終わりにします」
「リリアナ、おいで」
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