【完結】見染められた令嬢

ユユ

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婚約する

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婚約を解消した私は平穏を取り戻す努力をした。

なんとか卒業したが、夜会は出られない。

レオナールに女の子が産まれ、妾として迎えたと聞いた。そして別の令嬢と婚約した。

「レイナは焦らなくていい。無理に結婚しなくていい」

「ありがとうございます、お父様」



さらに月日が経ち、レオナールが結婚した。

「レイナ、行きたいところはないのか」

「特にないわ。キナコもいるし」

「すっかり懐いたね」

「エルネストにも懐いているわ」

エルネストが他国から買い付けた猫を私の誕生日に贈ってくれたのだ。
ソマリに似た猫は薄い茶色からキナコと名付けた。

「これ、キナコの新しい首輪だよ」

猫なのにとんでもない値段で作っただろう首輪をしている。

「レイナにも」

「私はついでなのね」

「ハハッ」

「しかもキナコとお揃い」

「可愛いだろう」

ちゃっかりエルネストの瞳そのものと言いたくなるくらいの美しい宝石が揺れている。

1年前に結婚を申し込まれたが断った。

待つと言われて変わらぬ態度で接してくれる。

王家はそれでいいのだろうかと思ったが、王太子夫妻が大丈夫だと笑っていたから放っておいたがそれでは駄目だろう。

「ねえ、エルネスト。
そろそろお妃様を探したら?」

「見つけたよ。気長に待つことにした。

言っておくけど、君が望まない限り閨ごとはしない。

口付けはするけど」

「貴方は王族なのよ?」

「なら王族辞める」

「もう!」

「キナコ!おいで!」

「ニャ~」

「早くご主人様を口説いてくれよ。3人で暮らしたいだろう」

「ニャ~」

「そうしたら嫁さんを手に入れてやるからな」

「ニャ~」

「そんな美味しそうなのでキナコを釣らないで!」

「レイナも食べる?」

「食べない!」




さらに2年後、レオナールと正妻との間に男児が産まれている。


今日は王太子殿下が国王に即位する日だ。

“カッコつかないからパートナー役をやってよ”

そう言われて昼過ぎからの式典のために王宮に来て、磨かれてドレスを着せられている。

「もう!また作ったの!?」

豪華なエルネスト色の宝飾品に呆れ気味だ。

「お金の管理をしてる人に怒られないの?」

「怒られるわけがない」

「? とにかく、高価すぎるから次は質素なのにして!」

「次があるんだね。良かったよ」

「そういうつもりじゃ」

「今日は私だけを見ていて。余所見したら駄目だよ」

「新国王と新王妃様を見ないと」

「見なくていい」

そんなことを言いながら会場に向かった。

ほとんどエルネストしか見なかった。
他に目線を向けようとすると顔をグイッと戻される。

新国王陛下が呆れた顔で見ているのにエルネストはお構いなしだ。
新王妃様はニヤニヤしてるし。

第二王子は我関せずな感じだ。




無事戴冠式が終わり、パーティとなった。

三番目に第二王子夫妻と私達が踊る。

ふと思った。大丈夫そう。

曲が終わると私はエルネストに告げた。

「お受けします」

「え?」

「プロポーズ」

エルネストは大きく目を見開くとその場で崩れ落ちた。

まさに土下座状態だ。

「やっと、やっとだ……」

ダンスホールのほぼ中央で私の足元に土下座スタイルで泣き崩れるエルネストを第二王子は冷静に言葉をかける。

「エルネスト、邪魔だ。無様だとフラれるぞ」

エルネストはサッと立ち上がり涙と鼻水を拭うと私を抱き上げて退場した。


後日、第二王子妃のお茶の席に呼ばれた。

「すごい噂になっているわよ」

「何がですか?」

「冷酷王子を公衆の面前で土下座させ、泣いて詫びをいれさせた最強の令嬢ってね」

「!! 」

ん? 冷酷??

「冷酷って誰のことですか?」

「エルネスト様よ。貴女にだけ猫被っているのよ」

「ええっ!」

「知らなかったの?」

「最初は喧嘩したこともありましたが、それ以降は楽しくて優しい友人でした」

「貴女限定なのよ。
そのエルネスト様を涙と鼻水に塗れさせた上に床に額を付けさせるなんて」

「ち、違います!」

「ふふっ、分かっているわ。

義父様達も、国王様たちも色んな意味で喜んでいたわ」

喜んでいいのですかね…。

「なんで承諾したの?」

「ふと、エルネストなら大丈夫と感じたのです」

「そう」

「エルネストはまだでしょうか」

「あ~、色々と注文をしてるから長引いているのかもしれないわ」

まさか!

「それ、宝石商ですか!?」

「当たり!」

「もう!婚約する前から散財して!
前から止めてって言っても止めてくれないのです」

「まあ、予算はある程度使わないとね」

「えっ?」

「ずっと貴女に第三王子の婚約者として予算が付いてるの。貴女が卒業する直前からずっとね」

「ええっ!! 横領になっちゃうじゃないですか!」

「だって、貴女と以外、絶対結婚しないと言うんだもの。決まったようなものじゃない」

「私、断ってますけど」

「エルネスト様が諦めるわけがないじゃない。精巧な猫の被り物だったのね」

「では、私が承諾しなければ…」

「独身のまま一生付き纏ったでしょうね」

「ヒィッ!」

「怯えないで。レイナには甘々なんだからいいじゃない」

バン!

「ごめんね、レイナ!待った!?」

「エルネスト様、私もおりますわよ?」

「義姉様、こんにちは。

レイナ!明日ドレスを作ろう!」

「嫌よ」

「レイナ~!」

「じゃあ、さっき頼んだ宝石をキャンセルしてきてくれたらドレス作ります」

「レイナ~! グスン」

「何で泣くの!」

「レイナが冷たいから」

「冷たくない」

「じゃあ、レイナのために別荘でも建てようかな~」

「は?」

「愛の城だよ!時々過ごしに行く建物のことだよ」

「そうじゃない!要らないから!」

「シャルム家を建て直そうかな」

「明日何時ですか!」

「時間は気にしなくていいよ。泊まりだとお義父上に連絡したから」

「エル!」

「義姉上!聞きましたか!
レイナが私のことを“エル”と呼んでくれました!」

「はいはい、お祝いしなきゃいけませんね。お祝いと言ったらケーキですよ。厨房に行って直接指示をしてきたらどうですか?」

「行ってくる!」

バタン!

「これで1時間は静かになるわね」

「つ、強い」

「ん?」

「素敵です!」

「あら、ありがとう」
























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