【完結】二度目は先に裏切ろうと思います

ユユ

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二度目

29 戻れない過去

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【 ローランの視点 】

死ぬ…
こんな生活を続けていたら死ぬ…


『昔はこんな…』

王子教育の中の剣術はこんな酷いものではなかった。

『以前は近衞騎士に守られる王子殿下の最低限の剣術を怪我をさせないように優しく教えました。
ですが今は生き延びるための剣術です。これでも兵士達より優しくしています。木刀を使い、大事な部分は避けています。
いいですか。賊は木刀を使ってくれるでしょうか。
もし使ってくれたとしても、顔面を打たないと?頭を打たないと?喉を打たないと?股間を打たないと?

はぁ…。殿下、甘え過ぎなんですよ。命が掛かっているのに甘えていたら死にますよ?
すんなり殺してくれたらまだいいですよ。殿下のような弱くてお綺麗な顔をした華奢な若い男はどうなると思います?女日照りの続いた賊達に輪姦まわされるか、脚の腱を切るなり膝を割るなり何なりして逃げられなくして男娼として売るんですよ。
娼館か金持ちの屋敷か知りませんがね。
それが嫌なら顔を焼くとか落ちない染料を塗るとか、自害用の短剣を隠し持っておくとか。

無事に生き残りたいなら最低でも手加減せずに打ち込みをしてもらえるまで頑張った方がいいですよ』

嘘だろう!?


そして乗馬の時間は馬糞を含む藁の始末で更に腰が痛くなった。

『殿下。嫌そうな顔は止めてください。馬は生き物です。排泄するのは当たり前じゃないですか』

『……』

そして

『殿下。令嬢じゃないんですから、もっと早く走ってください』

『前はこのくらいだった』

『今は賊が馬で追いかけてきても逃げ切れるように訓練するのですよね?馬車にも追いつかれますよ?』

『っ!』

『しかもここは整備されています。地方領地や辺境は草木も生えていますし木の根もあります。石も大小様々、でこぼこしていて穴もあります。泥濘んでいることもありますし、人や動物が飛び出してきて、馬が驚いて暴走することもあります。
いいですか、馬は怪我は命取りです。新しい馬を買えますか?買えないはずです。ヴァルス邸に住まわせてもらうなら何も言いません』

その後シャワーを浴びて仕事をして、質素な食事にメイドが手伝わない湯浴み。

「それでは失礼します」

「待ってくれ。身体を揉んでくれないか。
背中と腰と脚だけでいいんだ」

「業務外です。失礼します」

「っ!!」



訓練が始まって3日後、マリエナを呼び出した。
謝罪をしたいと手紙に書いた。
だが、謝罪はもう要らないと返事が返ってきた。
だから、会わなければ付き纏うと手紙に書いてようやく訪ねてきた。

「久しぶ……何でアルシェが?」

「彼は私の婚約者ですから」

「婚約したのか!」

「はい」

「チッ…座ってくれ」

「「失礼します」」

「マリエナ、今まで冷たくしてすまなかった。浮気もあの女に惑わされただけで、胎の子もあいつの企みだったんだ。
反省している。私とやり直そう」

「嫌です。それに婚約しています」

「未来の公爵夫人より、未来の王妃の方がいいだろう」

「いいえ。アルシェ様の妻がいいです」

「そんなはずはない。意地を張るな」

「意地ではありません。アルシェ様との愛です。
それに、私はもう王族には嫁げません」

「どういうことだ?」

「アルシェ様との初夜を済ませておりますので、純潔ではないからです」

「は!?」

2人は手を繋ぎ、目を合わせて微笑みあっていた。

「なるほどな。だとしたら私との婚約中にこいつと寝てたんだろう!だったらこっちが慰謝料をもらうべきだろう!私ばかり責められてどんな目に遭ったと思っているんだ!狡猾な女狐め!!」

「……」

「殿下、マリエナを侮辱しないでください」

「騙された!
来い!父上の前で罪を暴いてやる!!」

「陛下を呼ぶのですか?」

「そうだ!」

「では宮廷医も呼んでください」

「何故だ!」

「もう復縁などと言わないようにです」

「わざわざ純潔じゃない確認をさせるのか?馬鹿だな」

呼び鈴を鳴らして、マリエナが嘘をついていたから陛下を呼んでくれと命じて待った。

待たされたが、父上が宮廷医と他にも何人か連れて現れた。

「アルシェ・デスターが国王陛下にご挨拶を申し上げます」

「マリエナ・マルブールが国王陛下にご挨拶を申し上げます」

「座ってくれ。
で、何なんだ?」

「父上!この2人は元々デキていたんです!慰謝料を払う必要なんかないんです!純潔ではなかったんです!」

「本当かね」

「いいえ。マリエナと結ばれたのは、ローラン殿下とマリエナが婚約破棄をした後です」

「嘘だ!破棄から日数が経ってないだろう!」

「煩い、ローラン。
マリエナ。どういうことだ?」

「私は婚約破棄の日も純潔でした。アルシェ様と友人になり好感を持ってはいましたが 婚約条件を破っておりません」

「嘘だ!!」

「ローラン!」

「っ!」

そんなこと、信じられるか!
破棄してすぐ純潔を捧げた?前から関係があったから破棄を選んだんだろう!

「先生」

「陛下、私から宜しいでしょうか」

父上は頷いた。

「婚約破棄のあった日、マルブール嬢は私に純潔の確認をして欲しいと申されました。
よくは分かりませんでしたが、マルブール嬢のことですから意味があるのだろうと、承諾しました。
確かに証はありました。その旨をカルテに記載しております」

「え?」

嘘だろう!?

「間違いないな?」

「はい。しっかりとアレがございました。助手も確認しております」

「分かった。
マリエナ。またローランが侮辱して申し訳ない」

「もしかしたらと、私に非が無い事を記録に残させていただきました。正解でしたわ。
出来れば2度とローラン殿下に“来ないと付き纏うぞ”などという手紙を出させないでいただけると助かります」

「もちろんだ。今後もしローランから手紙が届いたら読まずに私宛に送って欲しい」

「かしこまりました」

「本当にすまなかった。帰ってくれ」

「「失礼いたします」」

マリエナとアルシェが退室すると、父上は私の頬を平手打ちして無言で退室した。



私の人生は終わったのだな……

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