夫の愛が偽りだったと知った妻は離婚という名の復讐を決意する

ユユ

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離婚

6ヶ月ぶりにシトロス邸に帰って来た。

「エリン!! 今までどこに行っていた!!」

「買い付けです」

「半年もか!!」

「はい」

「話がある!」

「その前に、アレックス・マークス叔父様はご存知ですね? こちらの方は代理人です」

「代理人?」

「応接間で話の続きをしましょう」

私は叔父様と、大公家からお借りした補佐官を連れて来た。それに大公家から護衛を4人付けてもらっている。
夫は彼らを視界にも入れていない。


応接間でお茶が出てくるまで夫を無視した。
文句を言っていたが知ったことではない。

「私はピート・カートランドと申します。カートランド侯爵家の次男です。この度はエリン・シトロス夫人にご依頼いただき、ヘンリー・シトロス伯爵との離縁の手続きを代行いたします」

「は!? 離縁!?」

「伯爵は求婚時も結婚時も恋人がいて、夫人とは同時進行でしたね?」

「っ!」

「その後も女性と浮気を続けて最後はバウンズ子爵家に居候をしているモリーンさんと交際していました」

「な、何かの間違いじゃ」

「モリーンさんを妻と呼んで1年間も王都で逢瀬を重ねていたではありませんか。3つの高級宿の従業員、複数のレストランの従業員、ドレスや宝飾品の店の従業員、王都在住の貴族達からも証言を得ています。あれだけ大っぴらに連れ回しては言い逃れはできませんよ」

「仕方なかったんだ。エリンとの間に子が産まれなかったから」

「シトロス伯爵、だとしたら5年経ってから夫人と誰を迎えるか相談すべきでした。結婚4年の段階で妻と言って王都の高級宿で夫人よりも長く一緒に過ごしていては、その言い分は通じません。
しかも夫人が与えた利益を愛人に注ぎ込むなんて。どれだけの金額を注ぎ込んだか把握なさっていますか? 伯爵、1年間で夫人には何を贈りましたか? 誕生日にブローチ1つ。その金額は愛人への贈り物の最低価格よりもずっと低いんですよ?」

「それは……気持ちがこもっているんだ」

「他の女性に貢いでない場合に通じるセリフですね。しかも妻から与えてもらった金で浮気に貢物だなんて、プライドはないんですか?」

「っ!!」

「この離縁はシトロス伯爵が原因です。本来なら夫人が与えた利益全額と、慰謝料を請求するところですが夫人は別れるだけでいいとおっしゃっています」

「私は別れるつもりはない!」

「別れて子が産めそうな令嬢を娶ればいいではないですか。モリーンさんとはそのために交際したのですよね?」

「エリンと別れずに第二夫人を迎えればいいことだ」

「シトロス伯爵家に夫人を2人なんて無理ですよ。お金はどうするんですか? 子が産まれたら支出は増えるんですよ? 夫人をあてにしないでくださいね。夫人は今後一切、情報提供はしないそうです。個人資産をシトロス伯爵家に使うことも貸すこともしないそうです。伯爵の主張通り、跡継ぎを産ませるために夫人と別れて新しい妻を娶ってください」

「エリン、嘘だろう? 愛してると言ったじゃないか」

「私が愛していたのは、妻のお金で愛人と逢瀬を重ねて貢物をする男ではありません」

「ほんの出来心だったんだ、魔がさしただけだ。愛しているのはエリンだけだ!」

「私と同じベッドで寝るのをあれだけ嫌がっていたのに、モリーンさんと宿に泊まるときはベッドが1つのお部屋らしいですね。私がどれだけ傷付いたかわからないでしょうね。あなたは最初から私のことは愛していなかったんです。ただ金を稼ぐ女を捕まえたかっただけ。お金が欲しかっただけです」

「誤解なんだ、聞いてくれ」

「馬鹿ですよね。この目で見るまでは全く気付かなかったんですもの。あなたが宿のレストランで大きなルビーの付いた指輪を愛人に贈ったとき、私も叔父様も同じレストランで食事をしていたんです。あなたは何度もモリーンさんの手にキスをしていました。声も聞こえたんですよ」

「すまない……二度としないからやり直すチャンスをくれないか」

「嫌です」

「シトロス伯爵、一番の問題は1年前から愛人関係にあった平民のモリーンさんをシトロス伯爵夫人と言っていたことです。それは爵位を授与した国王陛下を欺く行為でもあります。結婚も国王陛下の許可が必要ですよね? シトロス伯爵夫人と名乗っていいかどうかを最終的に決めるのは国王陛下なのです。私の言っている意味がわかりますか?」

「欺くとかそんなつもりは微塵もなかったのです」

「ヘンリー様、同意しなければ強制的に別れることになりますわよ」

「どうしてもやり直さないつもりなのか?」

「はい」

「手切れ金をくれないか」

「はい?」

「エリンが帰って来なかったから領地の一部を担保に金を借りたんだ」

「私はシトロス伯爵家にお金を渡していたんですよ? それ以上に愛人に使っただけじゃないですか。私が帰って来なかったからだなんて責任転嫁はおやめください。手切れ金? 頭おかしいんじゃないんですか?」

「わかりました。お話は以上です。夫人は荷物をまとめてください」

「直ぐにまとめます」

「何で! エリン!!」

私を引き止めようと近寄る彼の前に大公家の騎士が立ち塞がった。

「エリン様はここを出ていく権利をお持ちです。物理的な邪魔をなさるのであれば我らがお相手をします」

「退け! エリンは私の妻でシトロス伯爵夫人なんだぞ!」

「モリーン・シトロス伯爵夫人の間違いでは?」

「エリン!!」


騎士達が私の部屋のドアの前で壁となっている間に荷造りをした。置いて行っていいものばかりだ。大事なものだけ鞄に詰めた。後はまた買えばいい。大きな箱と鞄を2つに詰め終えるとノックをした。騎士2人が荷物を運んでくれる。

「エリン、頼む、許してくれ」

「5日以内に届を提出してください。提出しなければ貴族裁判にかけます」

「エリン! モリーンとは別れたんだ! もう気にしなくていい!」

この人は最後まで……。

「妊娠できなくてごめんなさいね。モリーンさんとお幸せに」

「エリン!!」


馬車に乗ってシトロス伯爵邸をあとにした。
身も心も軽い。
そのまま王都の大公邸に向かった。離婚が確定することを確認するために少し滞在させてもらう。成立したらローズヴェルに向かう予定だ。




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