夫の愛が偽りだったと知った妻は離婚という名の復讐を決意する

ユユ

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負けを認める

「これでよし」

翌日の遅い朝、私を湯浴みさせたのはルシアン。
食事を食べさせたのもルシアン。
メイドが髪を乾かした後、服を着せたのもルシアン。

拷問のような夜は3時間前にやっと終わり解放された。
今は10時半。

全く疲れた様子のないルシアンの顔は艶々でいきいきしている。
私はぐったりしていて立つことも歩くこともできない。

「チュッ すごくよかったよ」

「死にそう」

「それは困る。父君がお待ちかねだ」

「え!? お父様が!?」

「昨夕到着しているよ。でも、私達は手が離せなかったし」

彼は私の顔中に唇をつけた。

誰か助けて……。



抱き上げて運ぼうとするルシアンを制止したけど、足腰が震えてどうにもならない。だから車椅子で応接間に入ったらお父様が驚いていた。

「エリン!? どうした! 怪我をしたのか!?」

「お父様、彼に挨拶を」

「もうしたよ。 それより、歩けないのか?」

「エリンはさっき、窓から入ってきた鳥に驚いて腰を抜かしたんです」

「……娘がご迷惑をおかけしております」

違うの! こうなったのはルシアンのせいなの!
でも、長時間の交わりでこうなったなんて言えない!

「エリン、明日にでも帰るぞ」

「お待ちください、彼女はもう大人ですし、私も彼女も独り身です。咎められることはないと思います」

「そうはいきません。娘はすぐに次の嫁ぎ先を選ばなくてはなりません。大公夫人がいらっしゃれば夫人の招待と言えますが、独身の大公様と過ごしているとなれば、縁談に影響が出てしまいます」

「ですが、これよりいい縁談はおありですか?」

何の書類?
ルシアンはお父様に三枚の書類を渡した。
読み終えたお父様は十数秒考え込んだ後、書類を返した。

「本気ですか?」

「はい。冗談でこんな契約書は作りません」

契約書?

「ローズヴェル家は醜聞にまみれたことがありますし、没落しかけたこともあります。今ではエリンが立て直してくれましたが、そのエリンは婚歴があります」

「承知です」

え? 私!?

「エリンは特別美人でもありません。普通なんです」

ちょっと! 

「いいや、とても魅力的です」

「大公様には身分の高い令嬢や美女やさまざまな誘惑があるはずです。とてもエリンが幸せになれると思えません。今は物珍しいかもしれませんが近いうちに飽きるのでは?」

わかってる、わかってるけど、このフォークをお父様に刺したくなってきたわ。

「しかも婚歴があるのですよ?」

「ですから、全て承知しています。伯爵は私が馬鹿だとおっしゃるのですか?」

「失礼だとは思いますが、私はただ娘に幸せになって欲しいだけなんです。娘に大公夫人は荷が重すぎます」

まさか、私に結婚を申し込んでるの!?

彼から書類を取り上げて確認した。

「ほら、大公夫人には相応しくない振る舞いです」

「いいえ、自分に関して契約が交わされそうだと察知する勘の良さ、大公家に何かあってはいけないからと発揮する機敏な行動力、どちらも相応しいと思いませんか?」

“以下の事由に該当した場合、エリン・ローズヴェルが望むだけ慰謝料を支払うものとする”

決められた予算を妻に与えなかったとき
妻に無断で外泊したとき
他の女性と関係を持ったとき
妻に暴力を振るったとき
理由なく妻と会話を交わさない日があったとき
 ・
 ・
 ・

三十項目もある禁止事項の一番下に “理由なく妻との閨事を三日あけたとき” とかいてあった。

これではずっと車椅子生活じゃない!!
ローランドにペンの催促をして、三日の部分を三ヶ月に書き換えた。

「クッ……、ほら、積極的ですよね?」

お父様が何をしているんだという目で見て気が付いた。この行為はもう同意だ。この契約を結ぶつもりがないなら訂正書きなどする必要はない。

発掘したお宝の書類などを一緒に扱っていたので、この行為が癖になっていた。

「こ、これは、」

「エリン・ローズヴェル、愛している。結婚してくれ」

立ち上がり、ポケットから箱を出し跪いた。箱の中身は目が眩みそうな大きなダイヤモンドのついた指輪。しかもサイズピッタリ。

もしかして、時々私から離れていたのは契約書の作成や指輪を作らせるため?

「エリンの気持ちは決まっているようですね」

は? 決まってない! 決まってない!!

「お父様、私は、」

「もういい、反対しない。わかったから。大公様、娘をよろしくお願いします」

「署名をお願いします」

「ま、待って」

「エリン、私を弄んだのか? 君が上、」

「わーっ!!」

慌ててルシアンの口を塞いだ。

「エリンが、上がなんですか?」

「モゴモゴ」

「エリン、大公様がお話になっている最中に失礼だろう」

ルシアンの目は私を脅している。
昨日、私が彼の上に乗って何をしたかバラすぞと目で言っている。

彼の口から手をどけた。

「ルシアン、ありがとう」

「こちらこそ受け入れてくれて嬉しいよ。さっきはエリンが身分差を気にしていると困るから、私達には上も下もないと言おうとしたんです」

「そうですか」

お父様は署名をした。
私も無言の圧をかけられて署名をした。
ルシアンは鼻歌付きで署名した。



その夜。

「無理……立っていられない」

「エリンが言ったんだぞ? “今夜はベッドで交わったりしない” って」

立ってって意味ではないのに!!

壁に押し付けられて、小刻みに押し上げられている。

震えながら爪先立ちを維持し続ける理由は、もっと深く届いてしまうから。

「あ、明日移動だから」

一度連れて帰るとお父様が譲らないので、ルシアンもついて行くと言い出した。明日は早朝出発で歩けなくなっている場合じゃない。

「そうだね。行きは父君がいるけど、帰りは二人きりだ。馬車の中ではエリンが上だぞ」

何で私にそんなに盛るのよ!

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