1 / 35
誰かによる悪魔との契約
しおりを挟む
痛い。
体がバラバラになりそうなほど痛い。
いや、バラバラなのだろう。
だって私は塔の5階から飛び降りたのだから。
下は石で整えられていて しっかりと叩きつけられたはず。即死ではなく瀕死?
瞼を開いたつもりなのに何も見えない。
失目したのか暗闇にいるのか。
体が動かないから何もできない。
私はまだもう少し苦しまなくてはならないらしい。
何も考えずに待っていた。時間の流れは分からないがとても長く感じた。
突然地面が沸々と揺れて少し明るくなった。
地面が割れて、ランタンの光のように眩しい光が漏れ出ていたからだ。
失目ではなかったようだ。
《 ふむ。不運だったようだな 》
漆黒の鱗に覆われた肌、
体の形は人間のようだが筋肉質で巨体だ。
爪は長く鋭い。舌は長く蛇のように割れていた。
鉛の様な瞳で 瞳孔は何かの赤い紋が浮かび上がっている。
銀のツノが二つ生えていて黒い翼を持っていた。
《 どういう意味ですか 》
声は出せないが頭の中で返事をしていた。
《 魔女の生まれ変わりがお前の前に現れたようだ。
さらに、どこかの神が血を欲したようだ 》
私は魔女と神に目を付けられたのね。納得したわ。
《 早く死なせてください 》
長い舌が私の頬を舐めた。
《 やり直させてやろう 》
《 結構です。死なせてください 》
《 だが、本来の寿命が40年以上残っているから、此処で待つなら40年苦しまねばならない 》
《 ここでその年月分待ちます 》
《 我は気に入らん 》
《 どんな目に遭ったのか知れば此処を選んだことに納得がいくでしょう 》
《 だからこそだ。お前を甦らせよう。
そして抗えるように特別な力を授けてやろう 》
《 何故構うのです 》
《 お前が気に入ったからだ 》
《 貴方も私をおもちゃにするのですね 》
《 悔しくはないのか 》
《 魔女の生まれ変わりに陶酔した男は王子ですよ?どう対抗しろと? 》
《 お前に害をもたらす相手には、その度に悪夢を見せてやろう。見るたびに衰えていく。
お前に味方を見分ける目を授けよう。
悪意を持つ者の瞳孔が変形するから直ぐに分かる。
そしてお前の血を一滴でも飲ませたら、魅了の影響を解くことができる 》
《 貴方はどうしても戻れというのですね 》
《 お前の死後に命を捧げて我にお前の甦りを願った者がいる 》
《 え!? 》
《 復讐でも何でもするがよい 》
ソレは鱗を一枚剥ぎ取ると、私の口の中に入れた。
「リヴィア、聞いてるの?」
お母様……
「リヴィア、大事なことなのよ」
もしかして死んだときに戻ったのではなく、もっと遡っているの?
「ヘンリー王子殿下のお妃様になるということは、大変なことなのよ?」
もしかして
「まだ、私に婚約者はいない?」
「当たり前でしょう」
「リヴィア、一目惚れだけでは難しい。
血の滲むような努力を求められるんだぞ」
お父様……二人とも瞳孔が正常ということは、味方?
「お父様、お母様。私は王子妃は嫌です」
「一目惚れはいいのか?」
「はい。仰る通り、妃教育で身も心も擦り減ってしまうでしょう。
私、爵位は気にしません。男爵位でもかまいません。夫となる方とその家族の人柄を重視します。
すごく歳上の後妻でもかまいません。
困窮していなければお金持ちでなくてかまいません。人柄を徹底的に調査して候補を決めて欲しいのです」
「本気か?」
「はい。よろしくお願いします」
この時の私は先月の茶会で王子に一目惚れをして、妃になりたいと両親に言っていた。
茶会に参加した令嬢の中から王室によって選り分けられ、婚約者候補の打診が来たのが今日。
死ぬ前の私は大喜びだった。3人の候補から勝ち抜いて婚約者になったのは一年生の終わりだった。
進級すると、魔女の生まれ変わりが全てを奪い地獄へと塗り替えていくことも知らずに。
体がバラバラになりそうなほど痛い。
いや、バラバラなのだろう。
だって私は塔の5階から飛び降りたのだから。
下は石で整えられていて しっかりと叩きつけられたはず。即死ではなく瀕死?
瞼を開いたつもりなのに何も見えない。
失目したのか暗闇にいるのか。
体が動かないから何もできない。
私はまだもう少し苦しまなくてはならないらしい。
何も考えずに待っていた。時間の流れは分からないがとても長く感じた。
突然地面が沸々と揺れて少し明るくなった。
地面が割れて、ランタンの光のように眩しい光が漏れ出ていたからだ。
失目ではなかったようだ。
《 ふむ。不運だったようだな 》
漆黒の鱗に覆われた肌、
体の形は人間のようだが筋肉質で巨体だ。
爪は長く鋭い。舌は長く蛇のように割れていた。
鉛の様な瞳で 瞳孔は何かの赤い紋が浮かび上がっている。
銀のツノが二つ生えていて黒い翼を持っていた。
《 どういう意味ですか 》
声は出せないが頭の中で返事をしていた。
《 魔女の生まれ変わりがお前の前に現れたようだ。
さらに、どこかの神が血を欲したようだ 》
私は魔女と神に目を付けられたのね。納得したわ。
《 早く死なせてください 》
長い舌が私の頬を舐めた。
《 やり直させてやろう 》
《 結構です。死なせてください 》
《 だが、本来の寿命が40年以上残っているから、此処で待つなら40年苦しまねばならない 》
《 ここでその年月分待ちます 》
《 我は気に入らん 》
《 どんな目に遭ったのか知れば此処を選んだことに納得がいくでしょう 》
《 だからこそだ。お前を甦らせよう。
そして抗えるように特別な力を授けてやろう 》
《 何故構うのです 》
《 お前が気に入ったからだ 》
《 貴方も私をおもちゃにするのですね 》
《 悔しくはないのか 》
《 魔女の生まれ変わりに陶酔した男は王子ですよ?どう対抗しろと? 》
《 お前に害をもたらす相手には、その度に悪夢を見せてやろう。見るたびに衰えていく。
お前に味方を見分ける目を授けよう。
悪意を持つ者の瞳孔が変形するから直ぐに分かる。
そしてお前の血を一滴でも飲ませたら、魅了の影響を解くことができる 》
《 貴方はどうしても戻れというのですね 》
《 お前の死後に命を捧げて我にお前の甦りを願った者がいる 》
《 え!? 》
《 復讐でも何でもするがよい 》
ソレは鱗を一枚剥ぎ取ると、私の口の中に入れた。
「リヴィア、聞いてるの?」
お母様……
「リヴィア、大事なことなのよ」
もしかして死んだときに戻ったのではなく、もっと遡っているの?
「ヘンリー王子殿下のお妃様になるということは、大変なことなのよ?」
もしかして
「まだ、私に婚約者はいない?」
「当たり前でしょう」
「リヴィア、一目惚れだけでは難しい。
血の滲むような努力を求められるんだぞ」
お父様……二人とも瞳孔が正常ということは、味方?
「お父様、お母様。私は王子妃は嫌です」
「一目惚れはいいのか?」
「はい。仰る通り、妃教育で身も心も擦り減ってしまうでしょう。
私、爵位は気にしません。男爵位でもかまいません。夫となる方とその家族の人柄を重視します。
すごく歳上の後妻でもかまいません。
困窮していなければお金持ちでなくてかまいません。人柄を徹底的に調査して候補を決めて欲しいのです」
「本気か?」
「はい。よろしくお願いします」
この時の私は先月の茶会で王子に一目惚れをして、妃になりたいと両親に言っていた。
茶会に参加した令嬢の中から王室によって選り分けられ、婚約者候補の打診が来たのが今日。
死ぬ前の私は大喜びだった。3人の候補から勝ち抜いて婚約者になったのは一年生の終わりだった。
進級すると、魔女の生まれ変わりが全てを奪い地獄へと塗り替えていくことも知らずに。
応援ありがとうございます!
1,051
お気に入りに追加
1,543
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる