21 / 35
アレックス 何を起こらせたのか
しおりを挟む
【 馬乗りになっていた侯爵家の次男
アレックス・エナードの視点 】
早々に留学できそうな国を探したが隣国に限ると、受け付けていない国が二つ、文化がかなり異なる国が一つ、あまり関係が良くない国が一つ。微妙にスペルが違ったり、同じスペルでも発音が違う国が一つ。
文化がかなり違う国は服も違うし、女性主導で貴族という存在がない。世継ぎという考えもない。
国を等分に分けて区域毎に区長を選出する。そして区長経験者の中から国の長である代表を選出する。
投票制で任期もある。だから私が侯爵家の息子だと言っても優遇されることはない。平民と同じ扱いになる。
関係が良くない国は差別を受けるようだ。トラブルに巻き込まれることも少なくないと聞く。
つまり言葉が少し違う国しか選択肢がない。
教師が付けられて必死に勉強している。
まず入試で合格すること、次は卒業できること。
それが成されなければ跡継ぎではなくなる。
失敗すると、学園も出ていない跡継ぎでもない私は、間違いなく家を出なくてはならない。
弟とはあまりいい関係ではなかったから、弟が侯爵になれば援助は望めないだろう。
「アレックス、顔色が少し悪いわね」
「最近、悪夢を見るようになって体が怠いのです」
母上は気に掛けてはくれるがそれだけで何かしてくれるわけではない。
初めは暗闇で彷徨う夢。
次は暗闇で地面が裂けて裂け目が焼けるように光っている。
次はそこから鋭い爪の生えた手が出てくる。
次は翼のようなものが見え、次に見えた頭部にはツノのようなものが生えていた。
今夜は夢を見るのか見ないのか。
見るとするならあの続きか。
そして眠りにつく。
また暗闇で地が裂け、焼けるように光る裂け目から鋭い爪を持った手が出てきて黒い羽が見え、ツノの生えた頭部が見え始めた。
目が見えそうだと思ったのに暗転した。
ピチャ
暗転して1、2秒で頬に湿った何かが触れた。
まるで長い舌で舐められたようだった。
「うわっ!」
目覚めて部屋中の灯りを付けた。
心臓が早打ちしている。
息遣いまで感じた気がした。とてもリアルだった。
そして翌日また同じように夢を見た。舐められた後、肩を掴まれた。
痛い!!
「うわっ!!」
また灯りを全てつけた。
朝になりメイドが身支度を手伝った。
「アレックス様、この肩はどうなさったのですか」
鏡を見ると手のようなものに掴まれた痣ができていた。
「あ…ああ……」
そこから眠れなかった。
正確には眠いが無理矢理起きていた。なのに誰かが薬を使ったようだ。
また闇から始まり舐められるところまできた。その後薬が切れて目覚めるまで化け物に追いかけ回され続けた。
「誰だ!薬を盛ったのは!!殺す気か!!」
そこから眠ることも何かを口にすることも出来なくなった。
医師が呼ばれたが、原因不明で精神的なものだと診断された。
父上は、心身ともに衰弱する私を教会に連れて行き、神父の中でもその手のの実力を持つ大司教に会わせた。
「悪魔に目を付けられたようですな」
「えっ!?」
「多分、夢で追いかけ回しているのは悪魔でしょう」
「な…んで」
その後は教会預かりになった。家に帰ると悪夢を見るからだ。
結局父上が寄付をして教会の下働きとして置いてもらえるようになった。下働きから昇進するには今までとは違う勉強と奉仕をしなくてはならない。
後からヤニクについて知らせが来た。
首を吊ったようだ。発見が早かったが手がつけられず、入院させたが隙を見て 再度首を吊り、自殺を遂げたらしい。
「私達は神を怒らせるようなことはしていません。どうしてでしょう」
「神というより、悪魔を怒らせたのでは?」
そう答えるのは助祭ケネスだ。彼は私が嫌いなようだが 侯爵家からの寄付金は必要なようで一応受け入れてはくれている。
あの事件から2ヶ月後、父上が会いに来た。
「令嬢は傷痕が残ることもなく完治した。体はな。
退学処分は最善の処遇だった。ネルハデス伯爵は何も求めなかった。ただ令嬢の許しを得ることを求められた。面会して謝罪をしたら直ぐに許してもらえたよ。
とても華奢で愛らしい娘だった。王子妃に望まれ、辞退した今も守ってもらえるだけあって見事な所作だったよ。
だから益々不思議でならない。あの子に二人がかりで襲ったことを。とても怖かっただろうに。
これから侯爵家は彼女に何かあれば力の限り助力するつもりだ」
「申し訳ありませんでした。よろしくお願いします」
「ヤニクは残念だったな」
「彼の分まで祈りを捧げます」
いつか灯りを消して眠れる日が来るのだろうか。
アレックス・エナードの視点 】
早々に留学できそうな国を探したが隣国に限ると、受け付けていない国が二つ、文化がかなり異なる国が一つ、あまり関係が良くない国が一つ。微妙にスペルが違ったり、同じスペルでも発音が違う国が一つ。
文化がかなり違う国は服も違うし、女性主導で貴族という存在がない。世継ぎという考えもない。
国を等分に分けて区域毎に区長を選出する。そして区長経験者の中から国の長である代表を選出する。
投票制で任期もある。だから私が侯爵家の息子だと言っても優遇されることはない。平民と同じ扱いになる。
関係が良くない国は差別を受けるようだ。トラブルに巻き込まれることも少なくないと聞く。
つまり言葉が少し違う国しか選択肢がない。
教師が付けられて必死に勉強している。
まず入試で合格すること、次は卒業できること。
それが成されなければ跡継ぎではなくなる。
失敗すると、学園も出ていない跡継ぎでもない私は、間違いなく家を出なくてはならない。
弟とはあまりいい関係ではなかったから、弟が侯爵になれば援助は望めないだろう。
「アレックス、顔色が少し悪いわね」
「最近、悪夢を見るようになって体が怠いのです」
母上は気に掛けてはくれるがそれだけで何かしてくれるわけではない。
初めは暗闇で彷徨う夢。
次は暗闇で地面が裂けて裂け目が焼けるように光っている。
次はそこから鋭い爪の生えた手が出てくる。
次は翼のようなものが見え、次に見えた頭部にはツノのようなものが生えていた。
今夜は夢を見るのか見ないのか。
見るとするならあの続きか。
そして眠りにつく。
また暗闇で地が裂け、焼けるように光る裂け目から鋭い爪を持った手が出てきて黒い羽が見え、ツノの生えた頭部が見え始めた。
目が見えそうだと思ったのに暗転した。
ピチャ
暗転して1、2秒で頬に湿った何かが触れた。
まるで長い舌で舐められたようだった。
「うわっ!」
目覚めて部屋中の灯りを付けた。
心臓が早打ちしている。
息遣いまで感じた気がした。とてもリアルだった。
そして翌日また同じように夢を見た。舐められた後、肩を掴まれた。
痛い!!
「うわっ!!」
また灯りを全てつけた。
朝になりメイドが身支度を手伝った。
「アレックス様、この肩はどうなさったのですか」
鏡を見ると手のようなものに掴まれた痣ができていた。
「あ…ああ……」
そこから眠れなかった。
正確には眠いが無理矢理起きていた。なのに誰かが薬を使ったようだ。
また闇から始まり舐められるところまできた。その後薬が切れて目覚めるまで化け物に追いかけ回され続けた。
「誰だ!薬を盛ったのは!!殺す気か!!」
そこから眠ることも何かを口にすることも出来なくなった。
医師が呼ばれたが、原因不明で精神的なものだと診断された。
父上は、心身ともに衰弱する私を教会に連れて行き、神父の中でもその手のの実力を持つ大司教に会わせた。
「悪魔に目を付けられたようですな」
「えっ!?」
「多分、夢で追いかけ回しているのは悪魔でしょう」
「な…んで」
その後は教会預かりになった。家に帰ると悪夢を見るからだ。
結局父上が寄付をして教会の下働きとして置いてもらえるようになった。下働きから昇進するには今までとは違う勉強と奉仕をしなくてはならない。
後からヤニクについて知らせが来た。
首を吊ったようだ。発見が早かったが手がつけられず、入院させたが隙を見て 再度首を吊り、自殺を遂げたらしい。
「私達は神を怒らせるようなことはしていません。どうしてでしょう」
「神というより、悪魔を怒らせたのでは?」
そう答えるのは助祭ケネスだ。彼は私が嫌いなようだが 侯爵家からの寄付金は必要なようで一応受け入れてはくれている。
あの事件から2ヶ月後、父上が会いに来た。
「令嬢は傷痕が残ることもなく完治した。体はな。
退学処分は最善の処遇だった。ネルハデス伯爵は何も求めなかった。ただ令嬢の許しを得ることを求められた。面会して謝罪をしたら直ぐに許してもらえたよ。
とても華奢で愛らしい娘だった。王子妃に望まれ、辞退した今も守ってもらえるだけあって見事な所作だったよ。
だから益々不思議でならない。あの子に二人がかりで襲ったことを。とても怖かっただろうに。
これから侯爵家は彼女に何かあれば力の限り助力するつもりだ」
「申し訳ありませんでした。よろしくお願いします」
「ヤニクは残念だったな」
「彼の分まで祈りを捧げます」
いつか灯りを消して眠れる日が来るのだろうか。
応援ありがとうございます!
1,034
お気に入りに追加
1,542
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる