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ルイーズ 孤独
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【 ルイーズの視点 】
お母様は大国のお姫様だった。
側妃の子ではあったが嫁ぎ先で王妃になり私を産んだ。
お母様は妊娠が難しかった。弟妹は産まれなかった。
お父様は国王の仕事で忙しく頻繁には会えなかったけど、お母様に瓜二つの私は、お母様にとても可愛がってもらえた。
『ルイーズは世界一可愛いお姫様よ』
母はいつも眠る時に私に言ってくれた。
『王女様はとてもお可愛らしいですわ』
『何をお召しになってもお似合いですわ』
メイド達もいつも笑顔で私を褒めた。
ある日、お母様が天国へ行ってしまった。
そして直ぐに新しい王妃がやってきた。
王妃はすぐ王子を産んだ。
王子を産んだ数年後には王女を産んだ。
なかなかお父様に会えず、お勉強は難しくなるばかり。
ある日、学園の食堂で噂話が聞こえてきた。
『エレナ王妃殿下のお茶会に招待していただいた際は国王陛下も出席なさって仲睦まじくなさっていらしたわ。ね、ミリアーヌ』
『ええ。シャルル王子殿下は国王陛下に瓜二つ、ジュリエット王女殿下は王妃様に似て美少女。
礼儀正しく利発で、将来が楽しみですわ』
『シャルル王子殿下やジュリエット王女殿下に縁談が殺到しているとか』
『私も同じ年頃に産まれていたら良かったわ』
『国王陛下のお膝の上でケーキを召し上がるジュリエット王女殿下の愛らしいこと』
『国王陛下はデレデレでしたわね。葡萄の皮を剥いて食べさせて、口の周りをふいて差し上げて』
『朝食は出来るだけ必ず一緒に召し上がって、夜は寝かし付けに寝室に足をお運びになるそうよ』
知らない!知らない!知らない!
何よそれ!
お母様がいた頃は一緒にお茶会に出たけど、お父様は来なかった。
お母様が天国へ行ってからは一度もお茶会に出ていない。
膝の上に乗せてもらったこともない。
朝食!?私はいつも部屋食なのに!
寝かし付け!?私の部屋に来た記憶がない!
きっと継母が意地悪しているんだわ!
帰って、お父様に話があると言っても合わせてもらえない。
隙を見て、お父様のいそうな所を探して辿り着いたのは執務室だった。
『お父様!』
『約束も無しに何だ』
『親子なのに約束!?』
『親子の前に国王と王女だろう』
『だから親子ですわ!』
『はぁ』
お父様の溜息を無視して訴えた。
『エレナ王妃が私に意地悪をしているのです!』
お父様の顔が険しくなり、側近を1人残して人払いをした。
『何故そう思う』
私は学園の食堂で聞いた話をした。そして、
『私はお茶会にも食事の場にも呼ばれません!
仲間外れをしているのですわ!』
『よく聞け。茶会の出席を禁止したのは私だ』
『え?』
『出せるレベルではないからだ』
『お父様?』
『礼儀は合格レベルにないし、招待した令嬢を虐げるし、会話は文句か自慢話、気に入った令息がいれば婚約者がいる令息であろうとべったりと付き纏う。王女どころか貴族令嬢としてもあり得ない有様だ』
『そんなことは…』
『監視を付けて一語一句記録させた報告書を読んで愕然とした。その後も教師を付けたが落第点だった。学園もギリギリで入学した、忖度があっての進級になるそうだ』
『でも、』
『そんな悪い手本を将来の次期国王と可愛いジュリエットに見せられるわけがない。
2人はまだ幼いながらも懸命に礼儀を身に付け、勉強に勤しんでる。
そして私や使用人達に感謝の気持ちを忘れない。
扱いに差が出て当然だ』
『私は“世界一可愛いお姫様”だって…』
『そんなもの産みの親の贔屓目だ。お前の母もお前も平凡な顔だ。見た目も中身も劣ってはどうにもならない。縁談がひとつも来ないことが証拠だろう』
『あのエレナという女狐に、』
その後の記憶がない。
目覚めたのは離宮だった。
『王女様、お身体はいかがですか』
『体が痛いわ。顎がおかしいし、頬が熱を持っているのかしら』
『痛み止めの煎じ薬をどうぞ』
『ここはどこ?』
『王城から馬車で1時間走らせた場所にある離宮です』
『どういうこと?』
『まずはお飲みください』
飲んで少し経つと知らない男が3人が入室してきた。騎士のようだ。
『ルイーズ王女殿下にご挨拶を申し上げます。
私は近衛騎士団に属し、懲罰を担当する騎士で、バレットと申します。
ルイーズ王女殿下はエレナ王妃殿下を冒涜し、国王陛下のこれまでの温情を無にしてしまいました。
従って、こちらの離宮で過ごし、反省していただきます』
『は? 何よそれ』
『押さえろ』
バレット卿が命じると2人の騎士が私を押さえつけた。
『何をするの!』
バチン!!
『ギャァッ!』
寝巻きの裾を捲られた後、臀部に衝撃が走った。
正面に戻ったバレット卿が手にしていたのは短鞭だった。
この私の服を捲って下着の上から鞭で打ったの!?
『不敬よ! 処刑してやる!!』
またバレット卿が背後に回ると裾を捲り鞭で打った。
バチン! バチン! バチン! バチン! バチン!
『ギャァァァァァ!!』
『ルイーズ王女殿下。貴女への躾は国王陛下からのご命令です。体で判らせよとのことです。貴女はこの離宮から出るには、死ぬか嫁ぐかしかございません』
恥ずかしさと悔しさと痛みで涙が止まらなかった。
お母様は大国のお姫様だった。
側妃の子ではあったが嫁ぎ先で王妃になり私を産んだ。
お母様は妊娠が難しかった。弟妹は産まれなかった。
お父様は国王の仕事で忙しく頻繁には会えなかったけど、お母様に瓜二つの私は、お母様にとても可愛がってもらえた。
『ルイーズは世界一可愛いお姫様よ』
母はいつも眠る時に私に言ってくれた。
『王女様はとてもお可愛らしいですわ』
『何をお召しになってもお似合いですわ』
メイド達もいつも笑顔で私を褒めた。
ある日、お母様が天国へ行ってしまった。
そして直ぐに新しい王妃がやってきた。
王妃はすぐ王子を産んだ。
王子を産んだ数年後には王女を産んだ。
なかなかお父様に会えず、お勉強は難しくなるばかり。
ある日、学園の食堂で噂話が聞こえてきた。
『エレナ王妃殿下のお茶会に招待していただいた際は国王陛下も出席なさって仲睦まじくなさっていらしたわ。ね、ミリアーヌ』
『ええ。シャルル王子殿下は国王陛下に瓜二つ、ジュリエット王女殿下は王妃様に似て美少女。
礼儀正しく利発で、将来が楽しみですわ』
『シャルル王子殿下やジュリエット王女殿下に縁談が殺到しているとか』
『私も同じ年頃に産まれていたら良かったわ』
『国王陛下のお膝の上でケーキを召し上がるジュリエット王女殿下の愛らしいこと』
『国王陛下はデレデレでしたわね。葡萄の皮を剥いて食べさせて、口の周りをふいて差し上げて』
『朝食は出来るだけ必ず一緒に召し上がって、夜は寝かし付けに寝室に足をお運びになるそうよ』
知らない!知らない!知らない!
何よそれ!
お母様がいた頃は一緒にお茶会に出たけど、お父様は来なかった。
お母様が天国へ行ってからは一度もお茶会に出ていない。
膝の上に乗せてもらったこともない。
朝食!?私はいつも部屋食なのに!
寝かし付け!?私の部屋に来た記憶がない!
きっと継母が意地悪しているんだわ!
帰って、お父様に話があると言っても合わせてもらえない。
隙を見て、お父様のいそうな所を探して辿り着いたのは執務室だった。
『お父様!』
『約束も無しに何だ』
『親子なのに約束!?』
『親子の前に国王と王女だろう』
『だから親子ですわ!』
『はぁ』
お父様の溜息を無視して訴えた。
『エレナ王妃が私に意地悪をしているのです!』
お父様の顔が険しくなり、側近を1人残して人払いをした。
『何故そう思う』
私は学園の食堂で聞いた話をした。そして、
『私はお茶会にも食事の場にも呼ばれません!
仲間外れをしているのですわ!』
『よく聞け。茶会の出席を禁止したのは私だ』
『え?』
『出せるレベルではないからだ』
『お父様?』
『礼儀は合格レベルにないし、招待した令嬢を虐げるし、会話は文句か自慢話、気に入った令息がいれば婚約者がいる令息であろうとべったりと付き纏う。王女どころか貴族令嬢としてもあり得ない有様だ』
『そんなことは…』
『監視を付けて一語一句記録させた報告書を読んで愕然とした。その後も教師を付けたが落第点だった。学園もギリギリで入学した、忖度があっての進級になるそうだ』
『でも、』
『そんな悪い手本を将来の次期国王と可愛いジュリエットに見せられるわけがない。
2人はまだ幼いながらも懸命に礼儀を身に付け、勉強に勤しんでる。
そして私や使用人達に感謝の気持ちを忘れない。
扱いに差が出て当然だ』
『私は“世界一可愛いお姫様”だって…』
『そんなもの産みの親の贔屓目だ。お前の母もお前も平凡な顔だ。見た目も中身も劣ってはどうにもならない。縁談がひとつも来ないことが証拠だろう』
『あのエレナという女狐に、』
その後の記憶がない。
目覚めたのは離宮だった。
『王女様、お身体はいかがですか』
『体が痛いわ。顎がおかしいし、頬が熱を持っているのかしら』
『痛み止めの煎じ薬をどうぞ』
『ここはどこ?』
『王城から馬車で1時間走らせた場所にある離宮です』
『どういうこと?』
『まずはお飲みください』
飲んで少し経つと知らない男が3人が入室してきた。騎士のようだ。
『ルイーズ王女殿下にご挨拶を申し上げます。
私は近衛騎士団に属し、懲罰を担当する騎士で、バレットと申します。
ルイーズ王女殿下はエレナ王妃殿下を冒涜し、国王陛下のこれまでの温情を無にしてしまいました。
従って、こちらの離宮で過ごし、反省していただきます』
『は? 何よそれ』
『押さえろ』
バレット卿が命じると2人の騎士が私を押さえつけた。
『何をするの!』
バチン!!
『ギャァッ!』
寝巻きの裾を捲られた後、臀部に衝撃が走った。
正面に戻ったバレット卿が手にしていたのは短鞭だった。
この私の服を捲って下着の上から鞭で打ったの!?
『不敬よ! 処刑してやる!!』
またバレット卿が背後に回ると裾を捲り鞭で打った。
バチン! バチン! バチン! バチン! バチン!
『ギャァァァァァ!!』
『ルイーズ王女殿下。貴女への躾は国王陛下からのご命令です。体で判らせよとのことです。貴女はこの離宮から出るには、死ぬか嫁ぐかしかございません』
恥ずかしさと悔しさと痛みで涙が止まらなかった。
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