【完結】悪魔に祈るとき

ユユ

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ルイーズ 婚姻

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【 ルイーズの視点 】


様々な制約が書かれた婚前契約書が送られてきた。
これに署名しないと老人の慰みものになってしまう。

署名して約1年後に隣国へ渡り婚姻した。
式は数人の立ち会いで済ませ、披露宴などは無い。

質素な結婚指輪だけ贈られた。
だが夫を見て恋に落ちた。凛々しく端正な顔立ちで、特に瞳が美しかった。

初夜の準備が始まると思っていたが、メイドが普通の寝巻きを用意した。

『もっと魅力的なナイトドレスはないの?』

『ナイトドレスでご就寝なさるのですか?』

『初夜なのよ?』

『ルイーズ様、初夜はございません』

『え?』

『政略結婚ですし、子を成せません。
つまり閨は不要なのでございます』

『だって…殿方は女の体を求めるでしょう』

『私共ではどうなさっているのか分かりかねます』


朝は仕事で都合がつかない場合を除いて、一緒に食事をするのが決まりだった。

こんな人と結婚できたのに私を抱かないなんて。
そうだ。子を成さなくても、夫婦として夜を過ごしてもいいのだと伝えよう。そう思っていたのに。
2人きりになる時がなかった。
そしてやっと伝えることが出来たのは2ヶ月後だった。

『そのつもりはない。
寂しければ恋人を作っても構わない。自分の小遣いの範囲でやってくれ。
他の男との子ができたら離縁になる。
妻や婚約者のいる男は駄目だ。親族や管理職も駄目だ。王族付きの使用人や近衛騎士も駄目だ。それ以外なら構わない』

『不貞などしませんわ!』


そして国王が崩御なさって、王太子殿下が国王になった。
それからは夫の待遇が変わったが、身分を明かさないなどはそのままだった。

建国記念日と国王夫妻の誕生祝いだけパーティの参加が許された。
だが、騎士の妻。参加する貴族達に相手にされなかった。


懐柔できたメイドに調べさせたら、夫に愛人などといった類の女はいなかった。
ただし、定期的に女性が召し上げられていた。

『何者なの?』

『恐らく、プロと契約しているのか、夜伽係がいるのか。そのあたりは分かりませんが一定期間は同じ女性のようです』

殿方にはありがちだと聞いた。
許容する妻については、恋愛されるよりはプロで処理してもらう方がマシだという考えと、囲った女でないと病気が心配だという考えの二通りに分かれる。
だがそれは妻との営みをしている前提の話か、妻が行為を望んでいないことが前提だ。
私のように夫婦の交わりを望んでいるのに相手にしてもらえない妻には受け入れ難い話だった。
夫は女を抱けないわけではなく、私だけ抱かないのだ。

婚姻の儀で口付けさえしていない。署名と指輪の交換だけだった。抱きしめられたこともない。


『朝食後にこんな話はしたくありませんが、他に会う時間がないのでお尋ねします。
何故私では駄目なのですか。
子は成さなくとも夫婦として触れ合いがあって当然だと思います。ですが貴方は私に対してそうではない。他の女は抱けるのに、何故私は嫌なのですか』

『政略結婚だからだ』

『そこは関係ありませんわ』

『君を、体を提供するだけの女として扱っていいということか?政略結婚で元王女の君に何ができるんだ?男の喜ばせ方も知らないのに?』

『当然ですわ!私は王女でしたし、夫の為に貞操を守って生きてきたのですから!』

『恋愛結婚ならば、妻に尽くして抱くかもしれないが、子も成すわけではない政略結婚相手に尽くす気にはなれない』

『でも他の女を抱いているのでは、』

『理解しない女だな。
私はお前と違って仕事をしているんだ。相手は身分問わず、時には荒事もやらねばならない。
決まった休みなど無いに等しい。明日休みだと思っていても夜中、早朝、昼などに召集がかかることもある。
だから明日に影響させずに、疲れた体を癒す為に気を遣わず尽くす女を呼んでいるだけだ。
納得できないなら、できないままでいてくれ。何を言われても手を出すつもりはない。発情しているなら相手を探せ。探し難いなら充てがうぞ』

『…結構ですわ』


それ以来、別の男を探しているが数年経った今も相手が見つからなかった。

『奥様、旦那様は実質、この国のナンバー2です。
そんな方の妻に手を出そうとする者は王城内にはおりません。せめて外に出られたらいいのですが』

メイドは言いにくそうに説明してくれた。


そんな時、若い令嬢との噂を耳にした。
最近、時々機嫌が良いのはそのせいだと分かった。

『奥様、ご令嬢は旦那様の書斎にある続き部屋の寝室に通されているようです』

メイドに何か分かったら教えてほしいとお願いしておいたのだ。

『もっと調べてちょうだい』

そう言って手間賃を渡した。


『近衛騎士がご令嬢についていて守らせているようです』

『近衛をつけたの!?』


他のことは詳しく分からなかった。見て分かることだけ。

王族に守られているということね』
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