【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ

文字の大きさ
4 / 11

新たな生活

しおりを挟む
体が怠い。
時々額が冷たくなる。

〈まだ熱が下がらないぞ〉

〈熱冷ましが効かなければどうすることもできません。怪我もありませんし、内臓の不調による兆候もありません。ただ熱を出して昏睡しているのです〉

そうか。力をたくさん使って倒れたのね。

その後も時々額が冷たくなり、誰かが手を握っていた。



「ん…」

空気が変わった気配で覚醒していった。

「ミーナ……ミーナ」

目を開けるとグリフィス大公閣下が私の手を握っていた。窓が開いて風が流れ込んでいた。

「寒いか?ちょっと空気の入れ替えをしていたんだ。直ぐに閉めるからな」

「そのままで」

「何か飲むか?食べるか?」

「お風呂に入りたい」

「風呂…風呂? 熱が下がったばかりなんだけどな」

「お風呂ぉ~」

「分かった分かった。用意させる」

メイドさん達が用意してくれて、服を脱がされタオル代わりの布を巻き付けられた。

「ご主人様、ミーナ様の支度が整いました」

隣の部屋にいた閣下が戻って来た。

「えっ、えっ?」

「危ないから動かないでくれ。まだ歩かせるのは怖いしメイド達に運ばせるのも怖いから俺が運ぶ。
5日間も寝込んでいたんだ。本来なら風呂も駄目なんだぞ」

「……」

横抱きで運ばれて浴槽の中にゆっくり降ろされた。

「大丈夫か?具合が悪くなったら直ぐに言うんだぞ。ドアの向こうにいるからな」

「…はい」


その後はメイドさん達がキャッキャと私を洗い始めた。

「ずっとご主人様が付きっきりで看病なさって」

「側近のベルナード様が説得して仮眠を促して」

「時折額を付けて熱をはかって」

「「「愛ですわ~」」」

「ないない」

「ミーナ様は吸い付くようなお肌ですね」

「触り心地がよろしいですわ」

「羨ましい…水を弾きますわ」

「それ、寝込んでいたから脂ぎっているだけよ」

「二の腕が柔らかくて気持ちいいです」

「お胸も信じられないくらい柔らかいです」

「なのに足腰は引き締まっているだなんて」

「「「羨ましいですわ~」」」

「仕事が運動不足になる仕事で、その代わり夫から全速力で逃げられるように脚だけは鍛えていたの」

「「「 夫!! 」」」

「8歳で婚姻させられて、めでたく離縁してこっちに来させてもらったの」

「「「 8歳!? 」」」

「いうなれば政略結婚ね」

「酷い」

「あんまりです」

「お相手も同じ歳頃の方だったのですか?」

「10歳近く歳上だったの」

「変態ですわ」

「あり得ませんわ」

「抹殺すべきです」

「ある意味抹殺してきたから大丈夫よ。
私は8歳から休みなく仕事をしていたから接触はほぼ無かったのよ。
彼は私に興味が無くて浮気三昧だったわ」

「まあ!8歳から休み無く働かせて、自分は浮気三昧だなんてクズですわ!」

「アレを踏み潰してやらないと気が済みませんわ」

「名前と居場所を教えてください。刺客を送り込みますから」

「制裁してきたから大丈夫よ。取り戻すかのように働かされていると思うわ」

入浴が終わり布を巻くとまた閣下に運ばれた。
ちょっと恥ずかしい。全裸に布を巻いただけなんて。
閣下を見ると少し顔が赤い。

私を降ろした閣下はまた隣の部屋へ向かった。

「こっちが寝室なら閣下の向かった部屋は?」

「居間のような部屋です。ここはご主人様のプライベートルームで応接間、居間、書斎、寝室、水回りが備わっております」

ひえっ!

「移ります。今すぐ客室に移ります」

「何を仰っているのですか」

「そうですわ。体調が良くなるまで この部屋から出ることは叶いません」

「私ども3人がお世話させていただきます」

部屋から出ようとする私を羽交締めにするメイドさん達との攻防の最中に閣下が戻ってきて事情を聞くと、

「駄目だ。
普通食をしっかり食べて正常に戻るまでは、この部屋から出さない」

「そんなぁ」

「そんなに嫌か」

「嫌とかではなくてですね、」

「なら問題ないな。
ミーナにスープを持ってきてやってくれ。
病み上がりの者が飲めるようにして欲しい」

「すぐにお持ちいたします」

「さあ、髪を乾かさないと また熱が出るからな」

「自分でやります」

「ぷよぷよの二の腕では重労働だろう。俺に任せろ」

閣下はメイドさんに聞きながら髪を乾かしてくれた。



スープも飲み、歯も磨き、ベッドに寝かされた。 
シーツも交換してくれたようだ。

話しているうちに眠くなってしまった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

捨てられた聖女、自棄になって誘拐されてみたら、なぜか皇太子に溺愛されています

日向はび
恋愛
「偽物の聖女であるお前に用はない!」婚約者である王子は、隣に新しい聖女だという女を侍らせてリゼットを睨みつけた。呆然として何も言えず、着の身着のまま放り出されたリゼットは、その夜、謎の男に誘拐される。 自棄なって自ら誘拐犯の青年についていくことを決めたリゼットだったが。連れて行かれたのは、隣国の帝国だった。 しかもなぜか誘拐犯はやけに慕われていて、そのまま皇帝の元へ連れて行かれ━━? 「おかえりなさいませ、皇太子殿下」 「は? 皇太子? 誰が?」 「俺と婚約してほしいんだが」 「はい?」 なぜか皇太子に溺愛されることなったリゼットの運命は……。

婚約破棄されたので、聖女になりました。けど、こんな国の為には働けません。自分の王国を建設します。

ぽっちゃりおっさん
恋愛
 公爵であるアルフォンス家一人息子ボクリアと婚約していた貴族の娘サラ。  しかし公爵から一方的に婚約破棄を告げられる。  屈辱の日々を送っていたサラは、15歳の洗礼を受ける日に【聖女】としての啓示を受けた。  【聖女】としてのスタートを切るが、幸運を祈る相手が、あの憎っくきアルフォンス家であった。  差別主義者のアルフォンス家の為には、祈る気にはなれず、サラは国を飛び出してしまう。  そこでサラが取った決断は?

「君の代わりはいくらでもいる」と言われたので、聖女をやめました。それで国が大変なことになっているようですが、私には関係ありません。

木山楽斗
恋愛
聖女であるルルメアは、王国に辟易としていた。 国王も王子達も、部下を道具としか思っておらず、自国を発展させるために苛烈な業務を強いてくる王国に、彼女は疲れ果てていたのだ。 ある時、ルルメアは自身の直接の上司である第三王子に抗議することにした。 しかし、王子から返って来たのは、「嫌ならやめてもらっていい。君の代わりはいくらでもいる」という返答だけだ。 その言葉を聞いた時、ルルメアの中で何かの糸が切れた。 「それなら、やめさせてもらいます」それだけいって、彼女は王城を後にしたのだ。 その後、ルルメアは王国を出て行くことにした。これ以上、この悪辣な国にいても無駄だと思ったからだ。 こうして、ルルメアは隣国に移るのだった。 ルルメアが隣国に移ってからしばらくして、彼女の元にある知らせが届いた。 それは、彼の王国が自分がいなくなったことで、大変なことになっているという知らせである。 しかし、そんな知らせを受けても、彼女の心は動かなかった。自分には、関係がない。ルルメアは、そう結論付けるのだった。

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

偽者に奪われた聖女の地位、なんとしても取り返さ……なくていっか! ~奪ってくれてありがとう。これから私は自由に生きます~

日之影ソラ
恋愛
【小説家になろうにて先行公開中!】 https://ncode.syosetu.com/n9071il/ 異世界で村娘に転生したイリアスには、聖女の力が宿っていた。本来スローレン公爵家に生まれるはずの聖女が一般人から生まれた事実を隠すべく、八歳の頃にスローレン公爵家に養子として迎え入れられるイリアス。 貴族としての振る舞い方や作法、聖女の在り方をみっちり教育され、家の人間や王族から厳しい目で見られ大変な日々を送る。そんなある日、事件は起こった。 イリアスと見た目はそっくり、聖女の力?も使えるもう一人のイリアスが現れ、自分こそが本物のイリアスだと主張し、婚約者の王子ですら彼女の味方をする。 このままじゃ聖女の地位が奪われてしまう。何とかして取り戻そう……ん? 別にいっか! 聖女じゃないなら自由に生きさせてもらいますね! 重圧、パワハラから解放された聖女の第二の人生がスタートする!!

(完結)お荷物聖女と言われ追放されましたが、真のお荷物は追放した王太子達だったようです

しまうま弁当
恋愛
伯爵令嬢のアニア・パルシスは婚約者であるバイル王太子に突然婚約破棄を宣言されてしまうのでした。 さらにはアニアの心の拠り所である、聖女の地位まで奪われてしまうのでした。 訳が分からないアニアはバイルに婚約破棄の理由を尋ねましたが、ひどい言葉を浴びせつけられるのでした。 「アニア!お前が聖女だから仕方なく婚約してただけだ。そうでなけりゃ誰がお前みたいな年増女と婚約なんかするか!!」と。 アニアの弁明を一切聞かずに、バイル王太子はアニアをお荷物聖女と決めつけて婚約破棄と追放をさっさと決めてしまうのでした。 挙句の果てにリゼラとのイチャイチャぶりをアニアに見せつけるのでした。 アニアは妹のリゼラに助けを求めましたが、リゼラからはとんでもない言葉が返ってきたのでした。 リゼラこそがアニアの追放を企てた首謀者だったのでした。 アニアはリゼラの自分への悪意を目の当たりにして愕然しますが、リゼラは大喜びでアニアの追放を見送るのでした。 信じていた人達に裏切られたアニアは、絶望して当てもなく宿屋生活を始めるのでした。 そんな時運命を変える人物に再会するのでした。 それはかつて同じクラスで一緒に学んでいた学友のクライン・ユーゲントでした。 一方のバイル王太子達はアニアの追放を喜んでいましたが、すぐにアニアがどれほどの貢献をしていたかを目の当たりにして自分達こそがお荷物であることを思い知らされるのでした。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 全25話執筆済み 完結しました

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

現聖女ですが、王太子妃様が聖女になりたいというので、故郷に戻って結婚しようと思います。

和泉鷹央
恋愛
 聖女は十年しか生きられない。  この悲しい運命を変えるため、ライラは聖女になるときに精霊王と二つの契約をした。  それは期間満了後に始まる約束だったけど――  一つ……一度、死んだあと蘇生し、王太子の側室として本来の寿命で死ぬまで尽くすこと。  二つ……王太子が国王となったとき、国民が苦しむ政治をしないように側で支えること。  ライラはこの契約を承諾する。  十年後。  あと半月でライラの寿命が尽きるという頃、王太子妃ハンナが聖女になりたいと言い出した。  そして、王太子は聖女が農民出身で王族に相応しくないから、婚約破棄をすると言う。  こんな王族の為に、死ぬのは嫌だな……王太子妃様にあとを任せて、村に戻り幼馴染の彼と結婚しよう。  そう思い、ライラは聖女をやめることにした。  他の投稿サイトでも掲載しています。

処理中です...