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新たな生活
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体が怠い。
時々額が冷たくなる。
〈まだ熱が下がらないぞ〉
〈熱冷ましが効かなければどうすることもできません。怪我もありませんし、内臓の不調による兆候もありません。ただ熱を出して昏睡しているのです〉
そうか。力をたくさん使って倒れたのね。
その後も時々額が冷たくなり、誰かが手を握っていた。
「ん…」
空気が変わった気配で覚醒していった。
「ミーナ……ミーナ」
目を開けるとグリフィス大公閣下が私の手を握っていた。窓が開いて風が流れ込んでいた。
「寒いか?ちょっと空気の入れ替えをしていたんだ。直ぐに閉めるからな」
「そのままで」
「何か飲むか?食べるか?」
「お風呂に入りたい」
「風呂…風呂? 熱が下がったばかりなんだけどな」
「お風呂ぉ~」
「分かった分かった。用意させる」
メイドさん達が用意してくれて、服を脱がされタオル代わりの布を巻き付けられた。
「ご主人様、ミーナ様の支度が整いました」
隣の部屋にいた閣下が戻って来た。
「えっ、えっ?」
「危ないから動かないでくれ。まだ歩かせるのは怖いしメイド達に運ばせるのも怖いから俺が運ぶ。
5日間も寝込んでいたんだ。本来なら風呂も駄目なんだぞ」
「……」
横抱きで運ばれて浴槽の中にゆっくり降ろされた。
「大丈夫か?具合が悪くなったら直ぐに言うんだぞ。ドアの向こうにいるからな」
「…はい」
その後はメイドさん達がキャッキャと私を洗い始めた。
「ずっとご主人様が付きっきりで看病なさって」
「側近のベルナード様が説得して仮眠を促して」
「時折額を付けて熱をはかって」
「「「愛ですわ~」」」
「ないない」
「ミーナ様は吸い付くようなお肌ですね」
「触り心地がよろしいですわ」
「羨ましい…水を弾きますわ」
「それ、寝込んでいたから脂ぎっているだけよ」
「二の腕が柔らかくて気持ちいいです」
「お胸も信じられないくらい柔らかいです」
「なのに足腰は引き締まっているだなんて」
「「「羨ましいですわ~」」」
「仕事が運動不足になる仕事で、その代わり夫から全速力で逃げられるように脚だけは鍛えていたの」
「「「 夫!! 」」」
「8歳で婚姻させられて、めでたく離縁してこっちに来させてもらったの」
「「「 8歳!? 」」」
「いうなれば政略結婚ね」
「酷い」
「あんまりです」
「お相手も同じ歳頃の方だったのですか?」
「10歳近く歳上だったの」
「変態ですわ」
「あり得ませんわ」
「抹殺すべきです」
「ある意味抹殺してきたから大丈夫よ。
私は8歳から休みなく仕事をしていたから接触はほぼ無かったのよ。
彼は私に興味が無くて浮気三昧だったわ」
「まあ!8歳から休み無く働かせて、自分は浮気三昧だなんてクズですわ!」
「アレを踏み潰してやらないと気が済みませんわ」
「名前と居場所を教えてください。刺客を送り込みますから」
「制裁してきたから大丈夫よ。取り戻すかのように働かされていると思うわ」
入浴が終わり布を巻くとまた閣下に運ばれた。
ちょっと恥ずかしい。全裸に布を巻いただけなんて。
閣下を見ると少し顔が赤い。
私を降ろした閣下はまた隣の部屋へ向かった。
「こっちが寝室なら閣下の向かった部屋は?」
「居間のような部屋です。ここはご主人様のプライベートルームで応接間、居間、書斎、寝室、水回りが備わっております」
ひえっ!
「移ります。今すぐ客室に移ります」
「何を仰っているのですか」
「そうですわ。体調が良くなるまで この部屋から出ることは叶いません」
「私ども3人がお世話させていただきます」
部屋から出ようとする私を羽交締めにするメイドさん達との攻防の最中に閣下が戻ってきて事情を聞くと、
「駄目だ。
普通食をしっかり食べて正常に戻るまでは、この部屋から出さない」
「そんなぁ」
「そんなに嫌か」
「嫌とかではなくてですね、」
「なら問題ないな。
ミーナにスープを持ってきてやってくれ。
病み上がりの者が飲めるようにして欲しい」
「すぐにお持ちいたします」
「さあ、髪を乾かさないと また熱が出るからな」
「自分でやります」
「ぷよぷよの二の腕では重労働だろう。俺に任せろ」
閣下はメイドさんに聞きながら髪を乾かしてくれた。
スープも飲み、歯も磨き、ベッドに寝かされた。
シーツも交換してくれたようだ。
話しているうちに眠くなってしまった。
時々額が冷たくなる。
〈まだ熱が下がらないぞ〉
〈熱冷ましが効かなければどうすることもできません。怪我もありませんし、内臓の不調による兆候もありません。ただ熱を出して昏睡しているのです〉
そうか。力をたくさん使って倒れたのね。
その後も時々額が冷たくなり、誰かが手を握っていた。
「ん…」
空気が変わった気配で覚醒していった。
「ミーナ……ミーナ」
目を開けるとグリフィス大公閣下が私の手を握っていた。窓が開いて風が流れ込んでいた。
「寒いか?ちょっと空気の入れ替えをしていたんだ。直ぐに閉めるからな」
「そのままで」
「何か飲むか?食べるか?」
「お風呂に入りたい」
「風呂…風呂? 熱が下がったばかりなんだけどな」
「お風呂ぉ~」
「分かった分かった。用意させる」
メイドさん達が用意してくれて、服を脱がされタオル代わりの布を巻き付けられた。
「ご主人様、ミーナ様の支度が整いました」
隣の部屋にいた閣下が戻って来た。
「えっ、えっ?」
「危ないから動かないでくれ。まだ歩かせるのは怖いしメイド達に運ばせるのも怖いから俺が運ぶ。
5日間も寝込んでいたんだ。本来なら風呂も駄目なんだぞ」
「……」
横抱きで運ばれて浴槽の中にゆっくり降ろされた。
「大丈夫か?具合が悪くなったら直ぐに言うんだぞ。ドアの向こうにいるからな」
「…はい」
その後はメイドさん達がキャッキャと私を洗い始めた。
「ずっとご主人様が付きっきりで看病なさって」
「側近のベルナード様が説得して仮眠を促して」
「時折額を付けて熱をはかって」
「「「愛ですわ~」」」
「ないない」
「ミーナ様は吸い付くようなお肌ですね」
「触り心地がよろしいですわ」
「羨ましい…水を弾きますわ」
「それ、寝込んでいたから脂ぎっているだけよ」
「二の腕が柔らかくて気持ちいいです」
「お胸も信じられないくらい柔らかいです」
「なのに足腰は引き締まっているだなんて」
「「「羨ましいですわ~」」」
「仕事が運動不足になる仕事で、その代わり夫から全速力で逃げられるように脚だけは鍛えていたの」
「「「 夫!! 」」」
「8歳で婚姻させられて、めでたく離縁してこっちに来させてもらったの」
「「「 8歳!? 」」」
「いうなれば政略結婚ね」
「酷い」
「あんまりです」
「お相手も同じ歳頃の方だったのですか?」
「10歳近く歳上だったの」
「変態ですわ」
「あり得ませんわ」
「抹殺すべきです」
「ある意味抹殺してきたから大丈夫よ。
私は8歳から休みなく仕事をしていたから接触はほぼ無かったのよ。
彼は私に興味が無くて浮気三昧だったわ」
「まあ!8歳から休み無く働かせて、自分は浮気三昧だなんてクズですわ!」
「アレを踏み潰してやらないと気が済みませんわ」
「名前と居場所を教えてください。刺客を送り込みますから」
「制裁してきたから大丈夫よ。取り戻すかのように働かされていると思うわ」
入浴が終わり布を巻くとまた閣下に運ばれた。
ちょっと恥ずかしい。全裸に布を巻いただけなんて。
閣下を見ると少し顔が赤い。
私を降ろした閣下はまた隣の部屋へ向かった。
「こっちが寝室なら閣下の向かった部屋は?」
「居間のような部屋です。ここはご主人様のプライベートルームで応接間、居間、書斎、寝室、水回りが備わっております」
ひえっ!
「移ります。今すぐ客室に移ります」
「何を仰っているのですか」
「そうですわ。体調が良くなるまで この部屋から出ることは叶いません」
「私ども3人がお世話させていただきます」
部屋から出ようとする私を羽交締めにするメイドさん達との攻防の最中に閣下が戻ってきて事情を聞くと、
「駄目だ。
普通食をしっかり食べて正常に戻るまでは、この部屋から出さない」
「そんなぁ」
「そんなに嫌か」
「嫌とかではなくてですね、」
「なら問題ないな。
ミーナにスープを持ってきてやってくれ。
病み上がりの者が飲めるようにして欲しい」
「すぐにお持ちいたします」
「さあ、髪を乾かさないと また熱が出るからな」
「自分でやります」
「ぷよぷよの二の腕では重労働だろう。俺に任せろ」
閣下はメイドさんに聞きながら髪を乾かしてくれた。
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シーツも交換してくれたようだ。
話しているうちに眠くなってしまった。
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