4 / 215
誤解されやすい立場
パーティ会場の片隅で談笑をする令息達の輪にモルゾン公子が入って、私を紹介した。
「ヒューゴ、紹介したい子がいるんだ。
クリスティーナ・セルヴィー、伯爵家の長女だ。
クリスティーナ嬢、彼がヒューゴ・ジオ、公爵家の長男だ」
「……」
「ご挨拶は初めてですね。
初めまして、クリスティーナ・セルヴィーと申します」
「初めまして。
セイン、女を紹介するのは止めてくれ」
「そういうんじゃないんだ」
「婚約者の友人をわざわざ?言い寄る女には辟易してるのを知ってるだろう!」
モルゾン公子とジオ公子は揉め出した。
「はぁ」
「ごめんなさい、ティナ」
「こうなって当然だわ。ジネットのせいじゃないもの。でもこれで分かってくれたでしょう?高貴な方たちに伯爵家の娘なんて紹介しても迷惑なだけだし、私には関係ないもの。
お兄様たちなら仕事の繋がりとか持てるかもしれないけど、私は学生よ?
ジオ公子にご迷惑だから失礼していいかしら。エステル様と話し足りないの」
「待ってくれ。ヒューゴの顔を見てくれよ。エステルのように治せるだろう?」
「さあ。私は医者ではありませんから」
「エステルのように指導してくれないか」
「その気のない方にはいたしません。できないのです。
それに私だって婚約者がいますから、言い寄っているなんて大声で言われるのは心外です。
公爵家でしたら素晴らしい主治医を抱えていらっしゃるでしょう?」
「ティナ、怒らないで」
「はぁ…怒っていないわ。冤罪をかけられた気分になって不愉快なだけよ。
モルゾン公子、ジオ公子、失礼しますわね」
カーテシーをしてエステル様を探した。
「ちょっとあなた」
振り向くと少し歳上らしい令嬢方に囲まれた。
「ヒューゴ様に近寄るのはおよしなさい」
「そうよ、あなたが言い寄っていいお方ではないのよ」
「ジオ公爵夫人は王妃様と姉妹でいらっしゃるのよ」
「そうですか」
バシャっ
「さっさとお帰りなさい」
令嬢が持っていたワイングラスの中身を頭から掛けられた。
「……」
「ちょっと、何をなさるのですか!」
追いかけて来たジネットが抗議しながら ハンカチで拭こうとした。
「大丈夫、帰るから。モルゾン公子に早々に帰る失礼をお詫びしていたと伝えてね」
「ティナ」
近くのドアから外に出て、馬車乗り場へ向かった。
床やカーペットを汚さないように気を遣ったつもりだ。
「セルヴィー家の馬車をお願いします」
「すぐに回します」
うちの馬車が到着し、御者側の姿を確認すると、私に拭くための布を渡し、座面に布を敷き始めた。
シャルル様と婚約して以来、飲み物を掛けられたり、皿に盛った食べ物をこぼされたりすることが何度かあったから慣れている。着替えも積んでいるけど、もう今日はここにいたくない。
コン コンコン コン
ギイ…ゴトゴトゴトゴト
合図をすると馬車が動き出した。
屋敷に到着するとメイド長と執事が心配そうに駆け付けた。
「お嬢様っ」
「大丈夫よ。今日はシャルル様絡みじゃないの。
公爵家だったでしょう?
私が場違いだったのよ」
「そんな、セルヴィー家に場違いなんてございません!」
「実際はあるのよ。腐っても爵位なのよ高位貴族は。
だけど毎度思うのよね。水にしてくれって。
このドレス、いくらすると思っているのかしら。請求したら次からは水にしてもらえるかしら」
「ええ、請求いたしましょう」
「残念。名前を聞かなかったわ。
今度からものすごく安いドレスを着ていこうかしら」
「同意したいところですが奥様がお許しになりません」
「そうよね。
お風呂に入るわ」
「かしこまりました」
「ヒューゴ、紹介したい子がいるんだ。
クリスティーナ・セルヴィー、伯爵家の長女だ。
クリスティーナ嬢、彼がヒューゴ・ジオ、公爵家の長男だ」
「……」
「ご挨拶は初めてですね。
初めまして、クリスティーナ・セルヴィーと申します」
「初めまして。
セイン、女を紹介するのは止めてくれ」
「そういうんじゃないんだ」
「婚約者の友人をわざわざ?言い寄る女には辟易してるのを知ってるだろう!」
モルゾン公子とジオ公子は揉め出した。
「はぁ」
「ごめんなさい、ティナ」
「こうなって当然だわ。ジネットのせいじゃないもの。でもこれで分かってくれたでしょう?高貴な方たちに伯爵家の娘なんて紹介しても迷惑なだけだし、私には関係ないもの。
お兄様たちなら仕事の繋がりとか持てるかもしれないけど、私は学生よ?
ジオ公子にご迷惑だから失礼していいかしら。エステル様と話し足りないの」
「待ってくれ。ヒューゴの顔を見てくれよ。エステルのように治せるだろう?」
「さあ。私は医者ではありませんから」
「エステルのように指導してくれないか」
「その気のない方にはいたしません。できないのです。
それに私だって婚約者がいますから、言い寄っているなんて大声で言われるのは心外です。
公爵家でしたら素晴らしい主治医を抱えていらっしゃるでしょう?」
「ティナ、怒らないで」
「はぁ…怒っていないわ。冤罪をかけられた気分になって不愉快なだけよ。
モルゾン公子、ジオ公子、失礼しますわね」
カーテシーをしてエステル様を探した。
「ちょっとあなた」
振り向くと少し歳上らしい令嬢方に囲まれた。
「ヒューゴ様に近寄るのはおよしなさい」
「そうよ、あなたが言い寄っていいお方ではないのよ」
「ジオ公爵夫人は王妃様と姉妹でいらっしゃるのよ」
「そうですか」
バシャっ
「さっさとお帰りなさい」
令嬢が持っていたワイングラスの中身を頭から掛けられた。
「……」
「ちょっと、何をなさるのですか!」
追いかけて来たジネットが抗議しながら ハンカチで拭こうとした。
「大丈夫、帰るから。モルゾン公子に早々に帰る失礼をお詫びしていたと伝えてね」
「ティナ」
近くのドアから外に出て、馬車乗り場へ向かった。
床やカーペットを汚さないように気を遣ったつもりだ。
「セルヴィー家の馬車をお願いします」
「すぐに回します」
うちの馬車が到着し、御者側の姿を確認すると、私に拭くための布を渡し、座面に布を敷き始めた。
シャルル様と婚約して以来、飲み物を掛けられたり、皿に盛った食べ物をこぼされたりすることが何度かあったから慣れている。着替えも積んでいるけど、もう今日はここにいたくない。
コン コンコン コン
ギイ…ゴトゴトゴトゴト
合図をすると馬車が動き出した。
屋敷に到着するとメイド長と執事が心配そうに駆け付けた。
「お嬢様っ」
「大丈夫よ。今日はシャルル様絡みじゃないの。
公爵家だったでしょう?
私が場違いだったのよ」
「そんな、セルヴィー家に場違いなんてございません!」
「実際はあるのよ。腐っても爵位なのよ高位貴族は。
だけど毎度思うのよね。水にしてくれって。
このドレス、いくらすると思っているのかしら。請求したら次からは水にしてもらえるかしら」
「ええ、請求いたしましょう」
「残念。名前を聞かなかったわ。
今度からものすごく安いドレスを着ていこうかしら」
「同意したいところですが奥様がお許しになりません」
「そうよね。
お風呂に入るわ」
「かしこまりました」
あなたにおすすめの小説
『愛人を連れて帰ってきた翌朝、名前すら呼ばれなかった私は離縁状を置いて旅に出ます。これからは幸せになります――そう思っていました。』
まさき
恋愛
夫に名前すら呼ばれず、冷たく扱われ続けた私は、ある朝、ついに限界を迎えた。
決定打は、夫が見知らぬ女性を連れて帰ってきたことだった。
――もういい。こんな場所に、私の居場所はない。
離縁状を残し、屋敷を飛び出す。
これからは自由に、幸せに生きるのだと信じて。
旅先で出会う優しい人々。
初めて名前を呼ばれ、笑い、温かい食事を囲む日々。
私は少しずつ、“普通の幸せ”を知っていく。
けれど、そのたびに――背中の痣は、静かに増えていた。
やがて知る、自らの家系にかけられた呪い。
それは「幸せを感じるほど、命を削る」という残酷なものだった。
一方その頃、私を追って旅に出た夫は、焦燥の中で彼女を探し続けていた。
あの冷たさも、あの女性も、すべては――。
けれど、すべてを知ったときには、もう遅くて。
これは、愛されていなかったと信じた私が、
最後にようやく“本当の愛”に気づくまでの物語。
王命での結婚がうまくいかなかったので公妾になりました。
しゃーりん
恋愛
婚約解消したばかりのルクレツィアに王命での結婚が舞い込んだ。
相手は10歳年上の公爵ユーグンド。
昔の恋人を探し求める公爵は有名で、国王陛下が公爵家の跡継ぎを危惧して王命を出したのだ。
しかし、公爵はルクレツィアと結婚しても興味の欠片も示さなかった。
それどころか、子供は養子をとる。邪魔をしなければ自由だと言う。
実家の跡継ぎも必要なルクレツィアは子供を産みたかった。
国王陛下に王命の取り消しをお願いすると三年後になると言われた。
無駄な三年を過ごしたくないルクレツィアは国王陛下に提案された公妾になって子供を産み、三年後に離婚するという計画に乗ったお話です。
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
「代わりはいくらでもいる」と言われたので、私は消えました。——お茶会ばかりしていた私が何をしていたのか、ご存じないようで
藤原遊
恋愛
下級貴族出身の私は、伯爵家に嫁いでから、ひたすらにお茶会を重ねてきた。
それはすべて、この家を支えるためのものだった。
けれど夫は、それを「無駄な遊び」と切り捨てる。
「代わりはいくらでもいる」と。
だから私は、何も言わずに去った。
——その日から、伯爵家は静かに崩れ始める。
お茶会で築いていたものが何だったのか、誰も知らないまま。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
【完結】私は側妃ですか? だったら婚約破棄します
hikari
恋愛
レガローグ王国の王太子、アンドリューに突如として「側妃にする」と言われたキャサリン。一緒にいたのはアトキンス男爵令嬢のイザベラだった。
キャサリンは婚約破棄を告げ、護衛のエドワードと侍女のエスターと共に実家へと帰る。そして、魔法使いに弟子入りする。
その後、モナール帝国がレガローグに侵攻する話が上がる。実はエドワードはモナール帝国のスパイだった。後に、エドワードはモナール帝国の第一皇子ヴァレンティンを紹介する。
※ざまあの回には★がついています。
《完結》氷の侯爵令息 あなたが子供はいらないと言ったから
ヴァンドール
恋愛
氷の侯爵令息と言われたアラン。彼は結婚相手の伯爵令嬢にとにかく冷たい態度で接する。
彼女は義姉イライザから夫が子供はいらないと言ったと聞き、衝撃を受けるが気持ちを切り替え生きていく。