笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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足りない覚悟

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シャルル様の胸に手と頬を付けたサリモア公女は私を睨んでいた。

シャルル様の顔を見ると笑みが消えていた。

え?何!?

「あっ」

腰に腕を回されて引き寄せられた。

ち、近い!近い!

「余所見をするな。今は俺だけのクリスティーナだ」

「違いますけど」

「違わない」

曲が流れると力強くリードされた。
引っ張り回されている気はするのに苦ではない。寧ろ楽しいかもしれない。やはりこんなのでもジオ公爵家のご令息なのだわ。

「軽いな」

「何がですか?」

「ヘインズと極力2人きりになるなよ」

「はい?」

「気を許すな」

「シャルル様は婚約者です」

「婚約者だろうが他人で男だろう」

あなたの方が気を許してはいけない危険な人物なのに?

「私は彼を愛しているのです」

「顔をだろう?
考えてみろ。あの顔に飽きたらどうするつもりだ?良いところが無い浮気者だぞ?」

「そんなことは…」

「じゃあ あいつの良いところを言ってみろ」

「優雅」

「優雅とは言えないな。顔と髪でそう見せているだけだ。俺の方がよっぽど優雅だ」

「異議あり」

「はぁ、他は?」

「伯爵家の嫡男」

「どんな伯爵家なのかが大事だろう。セルヴィー家が相手にする価値はない。良く言えば伯爵家 それだけだ。
うちは公爵家だし金も権力もコネもある。それに一人息子だ」

「兄弟がいたら危なかったですね」

「どういう意味だ?」

「黙秘です。

彼は優しいんです」

「どんな女にでもな。だがクリスティーナには微笑みながらじゃないか」

冷遇?

「私は結婚したら正妻として敬ってもらえます。権利も守ってもらえます」

「愛人を作っても 愛人との間に子を作っても 愛人と愛人の子を引き取り同じ屋敷に住まわせてと言われている未来の夫人のことか?
それは敬われているとは言わない。お飾りの妻で、伯爵夫人の仕事だけしていろという意味だ」

「え?」

「例えば夫婦の結婚記念日に、愛人か愛人の子が仮病を使って邪魔をしたら あいつはどっちを優先すると思う? 愛人側だ。執事に言って花でもおまえに贈っておけば祝ったことになる」

「そんなことは、」

「祝いのディナーに愛人と子を同席させる可能性もある」

「まさか、」

「おまえは“愛人”の意味が分かっていない。
一時期の愛人として割り切れるなら同居はしないし責任感があれば愛人との間に子など作らない。正妻が不妊か女児しか産めなかったら別だが、あいつは最初から孕ませることも屋敷に住まわせることも視野に入れている。
つまり妻は仕事上の契約妻、愛人は心も身体も満たす愛おしい女ということだ。
ヘインズ伯爵家に影響するようなことだけは妻を優先するだろうが、それ以外は愛人を優先させるはずだ。
毎日、庭園や食堂や居間から あいつと愛人と愛人の子の笑い声が聞こえるのだぞ?ほぼ毎夜 あいつは愛人の寝室で眠るのだぞ?」

「違う」

「考えが甘いんだよ。
目の前でキスどころかヤってるところもその目で、」

「何でそんな意地悪を言うの? ううっ…」

ヒューゴ様はダンスを止めて、私を連れ出した。
指で私の涙を拭いながら真面目な顔をした。

「意地悪で言ったんじゃない。選択肢のある今だから忠告したんだ。式を挙げたら間に合わないからだ。クリスティーナが傷付くと分かっていて教えないなんてことはできない。俺達は友達以上だろう」

「友達?」

「友達だ」

「…この婚約は私の気持ちを察した父が交渉して決まったものなのです。嬉しかったですし条件をのまなければ破談になると思ったから承諾しました。
本当にそれが起きても、私のせいです。覚悟が足りなかったのは私なのです」

「絶対に上手くいかない。辛い結婚生活を死ぬまで…もしくは離縁するまで続けるつもりなのか?
クリスティーナが男児を産んでも あいつは変わらない。寧ろ閨事は無くなる。
それを恐れて黙って避妊したら、不妊妻と認定して愛人を正式に娶る理由にされてしまう。
美術品を鑑賞するような気持ちならまだいいが、愛があると思っているのなら それは苦行だぞ」

ヒューゴ様の目は真剣だった。

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