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ヴェアトリスの怒り
【 ヴェアトリスの視点 】
夕食は部屋食に変わった。
食べ終わるとまた呼び出された。
日中とは違う部屋だけど応接間らしい。
部屋の中には第二王子と知らない令息がいた。
「この女がヴェアトリス・エンブレーズか?」
「そうだよ」
値踏みをするように頭から足先まで見られた。
何なの!誰なのよ!
「大公女、座ってください。
彼はジオ公爵家のヒューゴ。王妃の甥です」
「初めまして」
王妃の甥!?
私は国王の姪なのよ!?全然違うじゃない!
王妃は元はただの貴族なのよ!
「今、自分は国王の姪で、俺より勝ってると思っただろう」
「!!」
「そんな事だから留学に逃げることになるんだよ」
「はぁ!?」
「同じ国王でも国力で違うし、貿易やどんな友好国を抱えているかでも力関係は変わってくる。
貴族相手でも同じだ。力を持った貴族を怒らせれば王子や王女など冷遇に追いやられることもある。
継承権のない大公女など王族の末端とも言えない」
「なっ!」
「いいか、おまえが本来の二年生として留学出来なかったのはジオ公爵家が頼んだからだ。
問題児のおまえが俺のクリスティーナと同じクラスになる可能性を先に潰した。
なのに食堂でクリスティーナに絡んで水を掛けた?
おまえの何処にクリスティーナに勝てる要素があるんだ?」
「私は大公家の娘よ!」
「だから、エンブレーズ大公家ではジオ家の付いたセルヴィー家に勝てないんだよ。
セルヴィー家自体が各国にコネがあるし財力もセルヴィー家の方が上だ。ジオ家が付いたということは、国王夫妻も付いたことを意味する。
国力もこっちが上なんだ」
「あ、あなたっ!
あの娘は婚約者がいるじゃない!」
「顔だけの婚約者がな」
目の前の男 ジオ公爵令息が鼻で笑った。
「だがあの二人は貞操の縛りがない。つまりお互いに恋人や愛人を作るのは自由なんだ。
おまえがクリスティーナに絡まずにヘインズだけを見て股を開いていれば、その顔でも留学中だけは相手をしてもらえたんだ。さすがにヘインズも もうおまえを相手にはしたくないだろう」
「既に国王からエンブレーズ大公に文を出したから、反応が楽しみですよ。
貴族達が集まる王立学園の食堂で令嬢に王族を欺けと強要しては褒められはしないでしょうね」
「たかがパートナーを譲る話しなのに欺くもなにもありませんわ!」
「このルールは昔の国王陛下がお決めになったことです。結果 秩序が守られるようになったと聞いています。つまり明確な理由のある王命なのです。他国の娘が口を出していい問題ではありません。それに強要されたクリスティーナ嬢は 王族を欺く行為だと受け取って拒否をしました。その時点でもうたかがとは受け止める貴族はいないんですよ。
もちろん我々も、自国の貴族令嬢が過去から守られている王命を守るために、他国の格上の令嬢に逆らったとなれば 動かざるを得ないのです。貴族が必死に守ろうとしているのに王族が前に出ないわけにはいかないでしょう?ここで守らなかったら貴族からの信頼は薄れてしまいますからね」
「さ、さあね。謝罪をすることになるのはどちらかしら」
「では、エンブレーズ大公からの返事を待つことにしよう。ただし、クリスティーナに近付いたら俺がこの手でおまえの目をくり抜いてやる。忘れるなよ」
ジオ公爵令息が 手で去れというハンドサインを出すと、世話係が近づいた。
「大公女様、お部屋へご案内いたします」
「っ!」
屈辱的だった。
【 エンブレーズ大公の視点 】
娘ヴェアトリスが留学のためにエンブレーズを出て十数日。
一番近い隣国にしたのは親心だ。
「今頃あの子は学園に馴染んだかしら」
「だといいな」
妻と結婚して長男はすぐに生まれたが、2人目はなかなか授からなかった。
妻をもう一人娶った方がいいと補佐官や国王から言われていた。
私は愛する大公妃にそんなことは言えず、長男がいるから気に病むなと声をかけた。
結婚10年目、待望の妊娠が分かった。
生まれたのは元気な女の子だった。
妻似の美しい長男と違って、娘ヴェアトリスは私と妻のいい部分を受け継がず、容姿は並だった。だが、可愛くて仕方がなかった。
国王夫妻には女児は生まれていなかったため、ヴェアトリスを可愛がってくれた。王子達も妹のように可愛がってくれた。
当然私達もヴェアトリスに甘かった。
私だけでも厳しく躾けておけばと今更思っても遅い。
あんな事件を起こして罰を受け学園で爪弾きにされた後では。
留学先の国にもヴェアトリスのことは伝わっていたが、子供の時のことだからと短期留学を許可してくれた。ありがたかった。
数ヶ月で楽しい思い出と友人を作り、戻ってきても文通したり、パーティなどではなければ滞在も可能だから呼べばいい。恋をしたり見初められたりして嫁ぎ先を見つけてくれたらと淡い期待をしていた。
「閣下、大至急こちらをご確認願います」
手紙を受け取ると、ヴェアトリスの留学先の国王陛下からだった。
ヴェアトリスが怪我でもしたのかと急いで封を開けた。
「………これはどうやって届いた?」
「使者が早馬で届けにいらっしゃいました」
「待たせているのだな?」
「はい」
「使者が休憩を終えたら面会をしよう」
「かしこまりました」
便箋を出しペンを手に取り手紙を書き始めた。
夕食は部屋食に変わった。
食べ終わるとまた呼び出された。
日中とは違う部屋だけど応接間らしい。
部屋の中には第二王子と知らない令息がいた。
「この女がヴェアトリス・エンブレーズか?」
「そうだよ」
値踏みをするように頭から足先まで見られた。
何なの!誰なのよ!
「大公女、座ってください。
彼はジオ公爵家のヒューゴ。王妃の甥です」
「初めまして」
王妃の甥!?
私は国王の姪なのよ!?全然違うじゃない!
王妃は元はただの貴族なのよ!
「今、自分は国王の姪で、俺より勝ってると思っただろう」
「!!」
「そんな事だから留学に逃げることになるんだよ」
「はぁ!?」
「同じ国王でも国力で違うし、貿易やどんな友好国を抱えているかでも力関係は変わってくる。
貴族相手でも同じだ。力を持った貴族を怒らせれば王子や王女など冷遇に追いやられることもある。
継承権のない大公女など王族の末端とも言えない」
「なっ!」
「いいか、おまえが本来の二年生として留学出来なかったのはジオ公爵家が頼んだからだ。
問題児のおまえが俺のクリスティーナと同じクラスになる可能性を先に潰した。
なのに食堂でクリスティーナに絡んで水を掛けた?
おまえの何処にクリスティーナに勝てる要素があるんだ?」
「私は大公家の娘よ!」
「だから、エンブレーズ大公家ではジオ家の付いたセルヴィー家に勝てないんだよ。
セルヴィー家自体が各国にコネがあるし財力もセルヴィー家の方が上だ。ジオ家が付いたということは、国王夫妻も付いたことを意味する。
国力もこっちが上なんだ」
「あ、あなたっ!
あの娘は婚約者がいるじゃない!」
「顔だけの婚約者がな」
目の前の男 ジオ公爵令息が鼻で笑った。
「だがあの二人は貞操の縛りがない。つまりお互いに恋人や愛人を作るのは自由なんだ。
おまえがクリスティーナに絡まずにヘインズだけを見て股を開いていれば、その顔でも留学中だけは相手をしてもらえたんだ。さすがにヘインズも もうおまえを相手にはしたくないだろう」
「既に国王からエンブレーズ大公に文を出したから、反応が楽しみですよ。
貴族達が集まる王立学園の食堂で令嬢に王族を欺けと強要しては褒められはしないでしょうね」
「たかがパートナーを譲る話しなのに欺くもなにもありませんわ!」
「このルールは昔の国王陛下がお決めになったことです。結果 秩序が守られるようになったと聞いています。つまり明確な理由のある王命なのです。他国の娘が口を出していい問題ではありません。それに強要されたクリスティーナ嬢は 王族を欺く行為だと受け取って拒否をしました。その時点でもうたかがとは受け止める貴族はいないんですよ。
もちろん我々も、自国の貴族令嬢が過去から守られている王命を守るために、他国の格上の令嬢に逆らったとなれば 動かざるを得ないのです。貴族が必死に守ろうとしているのに王族が前に出ないわけにはいかないでしょう?ここで守らなかったら貴族からの信頼は薄れてしまいますからね」
「さ、さあね。謝罪をすることになるのはどちらかしら」
「では、エンブレーズ大公からの返事を待つことにしよう。ただし、クリスティーナに近付いたら俺がこの手でおまえの目をくり抜いてやる。忘れるなよ」
ジオ公爵令息が 手で去れというハンドサインを出すと、世話係が近づいた。
「大公女様、お部屋へご案内いたします」
「っ!」
屈辱的だった。
【 エンブレーズ大公の視点 】
娘ヴェアトリスが留学のためにエンブレーズを出て十数日。
一番近い隣国にしたのは親心だ。
「今頃あの子は学園に馴染んだかしら」
「だといいな」
妻と結婚して長男はすぐに生まれたが、2人目はなかなか授からなかった。
妻をもう一人娶った方がいいと補佐官や国王から言われていた。
私は愛する大公妃にそんなことは言えず、長男がいるから気に病むなと声をかけた。
結婚10年目、待望の妊娠が分かった。
生まれたのは元気な女の子だった。
妻似の美しい長男と違って、娘ヴェアトリスは私と妻のいい部分を受け継がず、容姿は並だった。だが、可愛くて仕方がなかった。
国王夫妻には女児は生まれていなかったため、ヴェアトリスを可愛がってくれた。王子達も妹のように可愛がってくれた。
当然私達もヴェアトリスに甘かった。
私だけでも厳しく躾けておけばと今更思っても遅い。
あんな事件を起こして罰を受け学園で爪弾きにされた後では。
留学先の国にもヴェアトリスのことは伝わっていたが、子供の時のことだからと短期留学を許可してくれた。ありがたかった。
数ヶ月で楽しい思い出と友人を作り、戻ってきても文通したり、パーティなどではなければ滞在も可能だから呼べばいい。恋をしたり見初められたりして嫁ぎ先を見つけてくれたらと淡い期待をしていた。
「閣下、大至急こちらをご確認願います」
手紙を受け取ると、ヴェアトリスの留学先の国王陛下からだった。
ヴェアトリスが怪我でもしたのかと急いで封を開けた。
「………これはどうやって届いた?」
「使者が早馬で届けにいらっしゃいました」
「待たせているのだな?」
「はい」
「使者が休憩を終えたら面会をしよう」
「かしこまりました」
便箋を出しペンを手に取り手紙を書き始めた。
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