笑顔で冷遇する婚約者に疲れてしまいました

ユユ

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療養

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この方だけは男性だけのお見舞いでも面会を許された。

「酷いことをするものだな」

「お忙しい殿下にお見舞いに来ていただけるなんて光栄です」

エルザの婚約者である第二王子殿下が見舞いに来てくださったのだ。

「また、ヘインズ家の息子絡みなんだって?」

「そうとは言えますが、これは公女の暴走です」

「サリモア公女にも困ったものだ。こんなことをしたら無事では済まされまい。
これは両親からの見舞いだよ」

王妃様からはお菓子だった。箱を開けると6種類の違う焼き菓子が2個ずつ入っていた。
国王陛下からはレターセットとペンとインクだった。

「これで6日間は楽しみがあるだろう?
こっちは しばらく療養になるから手紙を書いて大事な人を安心させるようにということらしい」

「素敵なお見舞いをありがとうございます」

「他に私達に何か出来ることがある?」

「エルザをびっくりさせて泣かせてしまったので慰めてください」

「分かった。よく休んで」

「ありがとうございました」


第二王子殿下がお帰りになり、次は学園長がお見舞いに来てくださった。

副学園長には大まかに説明をしたけど、学園長には、婚約の件でいろいろと言われ公女に苛立ってしまい反発したことも告げた。

「そうか…だが100%悪いのはサリモア嬢だな。
全く愚かなものだ。彼女は激しく後悔することになるだろうな」

「……」

「学園内で起きた傷害事件だから欠席扱いにはならないから安心して療養するように」

「ありがとうございます」

学園長は少しお疲れのように見えた。


3日目、ヒューゴ様に手を握りながら告げられた。

「数日留守をすることになった。寂しい思いをさせるが仕事を終えたら直ぐに戻って来る」

「お仕事なら気になさらないでください」

「大人しくしているんだよ」

「はい」

「それと今のところヘインズ家からの見舞いは断っているから」

「そうなのですね」

チュッ

「行ってくるよ」

「いってらっしゃいませ」  

唇にキスをして行ってしまった。
数日か…寂しいな。

ヒューゴ様の不在は3日間だった。


お見舞いの品が多過ぎる…
お返しのことを考えると頭が痛い。
それにお菓子もたくさん届く。
当然食べきれないので使用人や私兵の皆さんで食べてもらうようお願いをした。

そして私の側には女性騎士がいる。
彼女はシュゼット30歳。恋人は作っても婚歴なし。結婚すると子供の話になってしまうから避けて生きてきたという。何故なら騎士が続けられなくなるからと言っていた。顔にも傷があるけどかなりの美人だ。自分の名前が嫌いらしくゼットと周囲に呼ばせている。

「ゼットさん、座りませんか?」

「いいえ、いけません」

「ジオ家にいて私を襲う人なんてヒューゴ様くらいですよ?」

「プッ……まあ そうかもしれませんが万が一ということもあります。死して守りきれないなら役立たずと言われるだけですが、怠って守りきれないときには私は処分されてしまいます」

「処分だなんて……私が弱いばかりに結局迷惑をかけてしまいましたわ」

「クリスティーナ様が悪いわけではありません」

「でも、本当は避けようと思えば避けられたのにあえて避けなかったのです。その上で煽るように反発して…まさかあんなに強い平手打ちがくるとは思わなくて」

「くだらないことで理不尽に手を挙げる方が悪いのです。クリスティーナ様は悪くありません。
ただ、もう少し怪我が落ち着いたらお散歩を始めましょう。これでは不健康に太ってしまいます」

「はい、そうします」

制服の血、落ちたかな。


暇なので無地のハンカチと刺繍道具を貸してもらった。チクチクと絵図を参考に針を刺していく。
私が手にしているのは家門の基本情報が載った本で家門も描かれていた。

公爵には青紫色の糸で、ヒューゴ様には深緑の糸で家紋を刺繍した。夫人には薄い黄色の糸で家紋の他に百合の花を刺繍する予定で刺している。
こっそりゼットさんにも渡すつもりだ。彼女には大好きな剣に赤い薔薇の組み合わせにする予定。彼女が見ていない隙に刺しているのでなかなか進まない。

だから夜、就寝時間にこっそり進めていた。
その時間は廊下に男性の兵士が立つらしくゼットさんは朝まで私から解放されるからだ。

カチャッ

ノック無しにドアがあいた。

「まだ起きていたのか」

「ヒューゴ様」

彼が近寄ってやっと姿が見えた。手元が明るくなる程度の小さな灯りしかつけていなかったから、近寄るまで黒い人型にしか見えていなかった。

「ちゃんと寝ないとダメだろう」

「お帰りなさいませ」

「ただいま」

刺繍道具をカゴに入れてサイドテーブルに置いた。

ヒューゴ様はガウンを脱ぐとベッドに入ってきた。
石鹸の香りがする。髪からもいい香りが…

「ダメ、部屋に戻って」

「なんで」

「私、まだ頭をちゃんと洗えていないの。お湯洗だけだから」

「いいからこっちに来い。寂しかったんだろう?」

引き寄せられて、肩あたりに頭を置いて左半身を彼の身体の上に乗せた。

「寝るぞ」

「はい」

灯りが消えて真っ暗になり 瞼を閉じた。

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