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第三章 熱き炎の華を廃墟に咲かせて
第三十七色 遥か過去から、今この時への依頼
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あの骨の部屋を少し見回していると、ある一点が目に留まった。
そこにはただ一つの機械。
画面には何も映らず、下にあるパネルが白く光っている。
「んえ」
無意識の内にそこに触れてしまっていた。
すると何をするべきかが頭の中に流れ込んでくる。
その指示のとおりに『色』を使う。
「『白洗』」
すると洗われた記憶に別の記憶が流れ込む。
「ようこそ。未来の『白』。」
そう語りかけてきた男は黒い装甲で身を包み、顔も何も見えない。
そして、その背中にあるのは…
〈白剣〉。
本能的にこの人が本来の持ち主だと悟る。
『血染』を使っていたのも。
「あなたは…?」
どうしても気になることを聞く。だが、その問いに答えることは無い。
「悪い。これはお前のいる未来への一方的な手紙だ。お前の質問に答えることはできない。」
手紙。
あなたは誰なのか。この施設はなんなのか。機械獣とはなんなのか。聞きたいことは沢山あった。だがそれを聞くことは叶わない。
だって、既にこの人は死んでいるのだから。
何故そう思ったのかは分からない。
ただ、この人の言葉に、何か一種の諦めのような感情が混ざっている気がしたからかもしれない。
「さて。前置きはこのくらいにして本題に入ろう。」
「お前は恐らく俺たちが作った〈色彩都市〉からここ、〈2238年8月27日博物館〉に入った。」
「それまでに機械で出来た獣、機械獣に会った、もしくはそれを破壊したんじゃないか?」
…その通りだ。僕達が知っている動物の範囲から大きく逸脱したあの獣。一体何か全く分かっていない。
「まずはあいつらのことから話そう。」
「機械獣は大きく分けて二種類ある。」
「一つ、完全に身体の全てが機械で出来たもの、一型。」
「二つ、身体の一部が機械、他は肉や別の素材で出来ているもの、二型。」
僕達が戦ったのは二型。一型は多分まだ見てすらいない。
「この中で最もクソなのは一型だ。」
「こいつらは何故か知らんが寿命が無い。」
「殺す方法はただ一つ。」
「身体の何処かにあるコアと呼ばれる心臓部分。」
「ここを完全に破壊することだ。」
どうやら、二型のようにただ機械の動きを阻害し、破壊すればいいという単純な話では無いらしい。
ん?一箇所破壊するだけなら二型より楽じゃ…?
「俺らの時に一型は粗方潰した。」
「だが完全に一型を潰さないと二型は現れ続ける。」
「あのクソ厄介な奴らがだ。」
「お前らに出来れば全ての一型を破壊してもらいたい。」
「ただそれは結構不可能に近い。一型は世界中に散らばってるしな。」
「だから、俺からお前に依頼だ。」
「東京中心部に巣食う最強の一型、ギアドラゴン。」
「あいつを破壊…いや、殺してくれ。」
「俺たちには時間も力も覚悟も、何も足りなかった。」
「無責任なのはわかる。だが、やってくれ。頼む。」
この人は、見るだけで分かる。僕なんかよりも圧倒的に強い。
戦闘能力ならあの時の『白英雄』にも匹敵する…というより超えるかもしれない。
そんな人が倒せなかったものを僕達が倒せるのか?
「最後に、お前に一言アドバイスだ。」
思考を止め、一字一句聞き逃さないように集中して聞く。
「他の人の『白』を自分と違うと思うな。」
「あらゆる『白』はお前の物だ。お前の『白』だ。」
「他の人に扱えて、お前に扱えない筈がないだろう?」
「以上だ。頼む。あれを…あいつを、殺してくれ。」
意識が遠のく。
その間にも僕は『白』とは何なのか、考えていた。
そこにはただ一つの機械。
画面には何も映らず、下にあるパネルが白く光っている。
「んえ」
無意識の内にそこに触れてしまっていた。
すると何をするべきかが頭の中に流れ込んでくる。
その指示のとおりに『色』を使う。
「『白洗』」
すると洗われた記憶に別の記憶が流れ込む。
「ようこそ。未来の『白』。」
そう語りかけてきた男は黒い装甲で身を包み、顔も何も見えない。
そして、その背中にあるのは…
〈白剣〉。
本能的にこの人が本来の持ち主だと悟る。
『血染』を使っていたのも。
「あなたは…?」
どうしても気になることを聞く。だが、その問いに答えることは無い。
「悪い。これはお前のいる未来への一方的な手紙だ。お前の質問に答えることはできない。」
手紙。
あなたは誰なのか。この施設はなんなのか。機械獣とはなんなのか。聞きたいことは沢山あった。だがそれを聞くことは叶わない。
だって、既にこの人は死んでいるのだから。
何故そう思ったのかは分からない。
ただ、この人の言葉に、何か一種の諦めのような感情が混ざっている気がしたからかもしれない。
「さて。前置きはこのくらいにして本題に入ろう。」
「お前は恐らく俺たちが作った〈色彩都市〉からここ、〈2238年8月27日博物館〉に入った。」
「それまでに機械で出来た獣、機械獣に会った、もしくはそれを破壊したんじゃないか?」
…その通りだ。僕達が知っている動物の範囲から大きく逸脱したあの獣。一体何か全く分かっていない。
「まずはあいつらのことから話そう。」
「機械獣は大きく分けて二種類ある。」
「一つ、完全に身体の全てが機械で出来たもの、一型。」
「二つ、身体の一部が機械、他は肉や別の素材で出来ているもの、二型。」
僕達が戦ったのは二型。一型は多分まだ見てすらいない。
「この中で最もクソなのは一型だ。」
「こいつらは何故か知らんが寿命が無い。」
「殺す方法はただ一つ。」
「身体の何処かにあるコアと呼ばれる心臓部分。」
「ここを完全に破壊することだ。」
どうやら、二型のようにただ機械の動きを阻害し、破壊すればいいという単純な話では無いらしい。
ん?一箇所破壊するだけなら二型より楽じゃ…?
「俺らの時に一型は粗方潰した。」
「だが完全に一型を潰さないと二型は現れ続ける。」
「あのクソ厄介な奴らがだ。」
「お前らに出来れば全ての一型を破壊してもらいたい。」
「ただそれは結構不可能に近い。一型は世界中に散らばってるしな。」
「だから、俺からお前に依頼だ。」
「東京中心部に巣食う最強の一型、ギアドラゴン。」
「あいつを破壊…いや、殺してくれ。」
「俺たちには時間も力も覚悟も、何も足りなかった。」
「無責任なのはわかる。だが、やってくれ。頼む。」
この人は、見るだけで分かる。僕なんかよりも圧倒的に強い。
戦闘能力ならあの時の『白英雄』にも匹敵する…というより超えるかもしれない。
そんな人が倒せなかったものを僕達が倒せるのか?
「最後に、お前に一言アドバイスだ。」
思考を止め、一字一句聞き逃さないように集中して聞く。
「他の人の『白』を自分と違うと思うな。」
「あらゆる『白』はお前の物だ。お前の『白』だ。」
「他の人に扱えて、お前に扱えない筈がないだろう?」
「以上だ。頼む。あれを…あいつを、殺してくれ。」
意識が遠のく。
その間にも僕は『白』とは何なのか、考えていた。
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