5 / 29
序章-赤坂村のベッコウ師-
05『首都のマキナ』
しおりを挟む
暗闇に包まれる校舎の昇降口で再会した親友の信じがたい姿に対して、テフナの思考が停止してしまう。
「どうして…レイが…」
視線の先には、胸元に雷クモが寄生しているレイが佇んでおり…その足元には、テフナに襲い掛かってきていた2体の化物が倒れている。
「ねぇ、レイってば!」
テフナから強く呼び掛けられたレイが、ゆっくりと視線を合わせる。
「あぁ、テフナ…駄目じゃない…こんな雑魚2体に苦戦するなんてぇ…」
語尾のトーンが不気味に下がったレイは、自身にとっても面識があったテフナの元友人の亡骸に再び軍刀を刺して立たせる。
「や、止めてよ…寄生されて命を落としたとは言っても、同じ学校の生徒だったんだから…」
普段のレイでは絶対にあり得ない道徳心を軽視する行動に対して、更に動揺するテフナ。
「えぇ?そんなことを言っていては、源坂家のベッコウ師としての…『権利』と『責務』を…遂行…」
言葉を詰まらせたレイは、ゆっくりと足元の惨状…次に、目の前で怯えるテフナの順番で状況を改めて把握していく…
「えっ…いや!?どうして私が!」
そして、雷クモが寄生する胸元を見たレイは、ベッコウ師としての理性が戻る。
「ねぇ…今日の放課後、私と別れたあと何があったの?」
テフナが恐る恐る問い掛ける。
「それは…テフナ、ごめんね…!?」
理性が一時的に戻り言葉を振り絞ろうとしたが、新たな存在に感付いたレイは、校舎の外への出入口の方向に視線を向ける。
それに釣られてテフナも視線を向けると…そこには赤坂村では見慣れないセーラー服を着て、長い三つ編みの髪型に丸眼鏡が特徴的な同年代くらいの少女が立っていた。
そして、そのセーラー服姿の少女は、何の躊躇いも見せずに拳銃の銃口をレイへと向けて、そのまま連射する。
「っう!」
レイは自身に向けて放たれた銃弾を全て、軍刀で弾くという常人では有り得ない対処法を難なくとして見せる。
次の瞬間、レイに寄生した雷クモが激しく蠢き…その苦痛に対してレイは片膝を突いてしまう…
「テフナ…さようなら…せめて私の落ち度は…自分で片を付けてから…ねぇ…」
そう言い残したレイは、セーラー服姿の少女からの更なる発砲を避ける為に、廊下側の窓ガラスを突き破って去っていく…
「そんな…レイ…」
親友が去って行った方角を、見つめることしか出来ないテフナの元へ、足音が近付いて来る。
「貴方もベッコウ師なんですね…」
目の前に立ったセーラー服姿の少女は、テフナの足元…蜂が刺繍されたブーツに視線を落とす。
「はい…貴方もってことは…」
突然現れた少女に対して戸惑いながらもテフナは応じる。
テフナの顔に視線を戻したセーラー服姿の少女が言葉を続ける。
「すいません。名乗り遅れましたね…私は帝国空軍所属のベッコウ師…桜です。」
「桜さん?…えっと、私はこの赤坂村のベッコウ師の一人である源坂テフナです。」
一瞬、間を空けた後に下の名前しか名乗らなかった桜に対してテフナは怪訝に思う。
そして、テフナは出会い頭に抱いた桜への一番の疑問を投げ掛ける。
「どうして…暗闇の中で離れた距離の、私の隣にいた彼女が、雷クモに寄生されていた事が瞬時に分かったんですか?」
テフナは、再び廊下の割れた窓に視線を向ける。
「はぁ、確かに…疑問に思われても仕方ないですよね。」
そうワンクンション置いた少女が改めて名乗る。
「私は首都の空軍所属【藤原研究所】にて、雷クモの遺伝子情報を組み込んで培養されたクローンである…【試作型戦マキナ・桜】です。故に、雷クモの能力を僅かに使用する事が出来て、先ほどの彼女が寄生されている事を探知出来たのも、その能力の一つです。」
桜は淡々と自身の出自について語る。
「藤原って…まさか、御三家の内の一つの藤原家ですか!?」
テフナが唯一、聞き慣れた単語に対して反応する。
「はい。古くからこの国を支えて来た源家、平家に並ぶ名家の一つである、藤原家が管轄する研究所です。」
桜は再び淡々と答える。
「そうですか…それ以外の…遺伝子情報…クローン…は分からない単語だけど…納得は出来ました。」
テフナは頭を傾げる様子を見せながらも、レイの寄生を一瞬にして気付いたと言う現実と組み合わせることで全てを飲み込む。
「理解が早くて助かります…私は別件で、この赤坂村を訪れていたタイミングで…今回のレッドスプライトに巻き込まれたという状況です。」
軽く礼を告げた桜は、自身の現状に関して説明する。
「そうですか…差し支えがなければ教えて欲しいのですが、その別件というのは何ですか?」
状況を細かく知るためにもテフナが追及する。
「この状況下において、ベッコウ師同士として協力すべきでしょうし…お教えします。先に一つ忠告しておきますが…」
賛同した桜が、言葉を続ける。
「恐らく先ほどの寄生された彼女も、私の一件に関係していると思われます。そして、源坂さん…貴方が彼女の友人であるのであれば、一刻も早く貴方が彼女の命を終わらせて上げるべきだと思います。」
神妙な面持ちの桜に対して、テフナは驚くばかりで言葉が出ない。
その様子を見ながらも、目の前の首都からやって来たクローン【試作型戦マキナ・桜】は冷酷に、冷静に続ける。
「そうしなければ…彼女が雷クモに寄生された人間として死ぬ以上の地獄を見ることになると思います。」
「どうして…レイが…」
視線の先には、胸元に雷クモが寄生しているレイが佇んでおり…その足元には、テフナに襲い掛かってきていた2体の化物が倒れている。
「ねぇ、レイってば!」
テフナから強く呼び掛けられたレイが、ゆっくりと視線を合わせる。
「あぁ、テフナ…駄目じゃない…こんな雑魚2体に苦戦するなんてぇ…」
語尾のトーンが不気味に下がったレイは、自身にとっても面識があったテフナの元友人の亡骸に再び軍刀を刺して立たせる。
「や、止めてよ…寄生されて命を落としたとは言っても、同じ学校の生徒だったんだから…」
普段のレイでは絶対にあり得ない道徳心を軽視する行動に対して、更に動揺するテフナ。
「えぇ?そんなことを言っていては、源坂家のベッコウ師としての…『権利』と『責務』を…遂行…」
言葉を詰まらせたレイは、ゆっくりと足元の惨状…次に、目の前で怯えるテフナの順番で状況を改めて把握していく…
「えっ…いや!?どうして私が!」
そして、雷クモが寄生する胸元を見たレイは、ベッコウ師としての理性が戻る。
「ねぇ…今日の放課後、私と別れたあと何があったの?」
テフナが恐る恐る問い掛ける。
「それは…テフナ、ごめんね…!?」
理性が一時的に戻り言葉を振り絞ろうとしたが、新たな存在に感付いたレイは、校舎の外への出入口の方向に視線を向ける。
それに釣られてテフナも視線を向けると…そこには赤坂村では見慣れないセーラー服を着て、長い三つ編みの髪型に丸眼鏡が特徴的な同年代くらいの少女が立っていた。
そして、そのセーラー服姿の少女は、何の躊躇いも見せずに拳銃の銃口をレイへと向けて、そのまま連射する。
「っう!」
レイは自身に向けて放たれた銃弾を全て、軍刀で弾くという常人では有り得ない対処法を難なくとして見せる。
次の瞬間、レイに寄生した雷クモが激しく蠢き…その苦痛に対してレイは片膝を突いてしまう…
「テフナ…さようなら…せめて私の落ち度は…自分で片を付けてから…ねぇ…」
そう言い残したレイは、セーラー服姿の少女からの更なる発砲を避ける為に、廊下側の窓ガラスを突き破って去っていく…
「そんな…レイ…」
親友が去って行った方角を、見つめることしか出来ないテフナの元へ、足音が近付いて来る。
「貴方もベッコウ師なんですね…」
目の前に立ったセーラー服姿の少女は、テフナの足元…蜂が刺繍されたブーツに視線を落とす。
「はい…貴方もってことは…」
突然現れた少女に対して戸惑いながらもテフナは応じる。
テフナの顔に視線を戻したセーラー服姿の少女が言葉を続ける。
「すいません。名乗り遅れましたね…私は帝国空軍所属のベッコウ師…桜です。」
「桜さん?…えっと、私はこの赤坂村のベッコウ師の一人である源坂テフナです。」
一瞬、間を空けた後に下の名前しか名乗らなかった桜に対してテフナは怪訝に思う。
そして、テフナは出会い頭に抱いた桜への一番の疑問を投げ掛ける。
「どうして…暗闇の中で離れた距離の、私の隣にいた彼女が、雷クモに寄生されていた事が瞬時に分かったんですか?」
テフナは、再び廊下の割れた窓に視線を向ける。
「はぁ、確かに…疑問に思われても仕方ないですよね。」
そうワンクンション置いた少女が改めて名乗る。
「私は首都の空軍所属【藤原研究所】にて、雷クモの遺伝子情報を組み込んで培養されたクローンである…【試作型戦マキナ・桜】です。故に、雷クモの能力を僅かに使用する事が出来て、先ほどの彼女が寄生されている事を探知出来たのも、その能力の一つです。」
桜は淡々と自身の出自について語る。
「藤原って…まさか、御三家の内の一つの藤原家ですか!?」
テフナが唯一、聞き慣れた単語に対して反応する。
「はい。古くからこの国を支えて来た源家、平家に並ぶ名家の一つである、藤原家が管轄する研究所です。」
桜は再び淡々と答える。
「そうですか…それ以外の…遺伝子情報…クローン…は分からない単語だけど…納得は出来ました。」
テフナは頭を傾げる様子を見せながらも、レイの寄生を一瞬にして気付いたと言う現実と組み合わせることで全てを飲み込む。
「理解が早くて助かります…私は別件で、この赤坂村を訪れていたタイミングで…今回のレッドスプライトに巻き込まれたという状況です。」
軽く礼を告げた桜は、自身の現状に関して説明する。
「そうですか…差し支えがなければ教えて欲しいのですが、その別件というのは何ですか?」
状況を細かく知るためにもテフナが追及する。
「この状況下において、ベッコウ師同士として協力すべきでしょうし…お教えします。先に一つ忠告しておきますが…」
賛同した桜が、言葉を続ける。
「恐らく先ほどの寄生された彼女も、私の一件に関係していると思われます。そして、源坂さん…貴方が彼女の友人であるのであれば、一刻も早く貴方が彼女の命を終わらせて上げるべきだと思います。」
神妙な面持ちの桜に対して、テフナは驚くばかりで言葉が出ない。
その様子を見ながらも、目の前の首都からやって来たクローン【試作型戦マキナ・桜】は冷酷に、冷静に続ける。
「そうしなければ…彼女が雷クモに寄生された人間として死ぬ以上の地獄を見ることになると思います。」
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
不倫妻への鎮魂歌 ―サレ夫が選んだ、最も残酷で静かな復讐―
MisakiNonagase
大衆娯楽
「サレ夫、再生。不倫妻、転落。──その代償は、あまりに重い。」
「嘘で塗り固めた20年より、真実で歩む明日がいい。」
失って初めて気づく、守られていた日々の輝き。
46歳の美香にとって、誠実な夫と二人の息子に囲まれた生活は、退屈で窮屈な「檻」だった。若い男からの甘い誘惑に、彼女は20年の歳月を投げ打って飛び込んだ。 しかし、彼女が捨てたのは「檻」ではなく「聖域」だったのだ。 不倫、発覚、離婚、そして孤独。 かつての「美しい奥様」が、厚化粧で場末のスナックのカウンターに立つまでの足取りと、傷つきながらも真実の幸福を掴み取っていく夫・徹の再生を描く。 家族とは何か、誠実さとは何か。一通の離婚届が、二人の人生を光と影に分かつ。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる