ハイカラ・オブ・リビルド『雷クモと乙女たちのモダン戦記』

蒼伊シヲン

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Intermezzo-間章02-

間章-リボンとパトロン-

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 首都にある帝国海軍の基地内にある一室では、瓜二つの銀髪の少女3人による真剣勝負じゃんけんが起きている…
勝負開始から一時間が経過しているが…戦マキナの一種である有左アリサ達は、あいこが続いていて終わりが見えない。

「何故、あなたは既に赤色のリボンを身に付けているのですか?まだ、勝負は決してはいないのですよ?」
真ん中の有左が、葵から3つのリボンを受け取った上に…既に赤色のリボンで長い銀髪を結んでいる左側の有左へ詰め寄る。

「その通りです…貴方だけズルいですよ。」
右側の有左も、真ん中の有左に同意する。

「この赤色は、葵から私が直々に受け取った物ですので…後の2色から選んで下さい。」
左側の有左の瞳からは、この赤色のリボンは譲らないという強固な意思を感じる。

「いいえ、そういう訳にはいきません!」
真ん中と左側の有左が同時に声を上げる。

再び終わりの見えない勝負が始まる直前に、部屋の主が鶴の一声を上げる。

「お前ら、いつまでも続けているんだ!?いい加減にしてくれよ…仕事に集中出来ん!」
有左達の総責任者であり、海軍の中尉でもある影盛が悲鳴を上げる。

「じゃんけん以外の決め方を知らんのか?…その、あれだ…あみだくじで決めろ!俺が書いてやるから…」
影盛がやれやれっとぼやきながらも…手元にある鉛筆であみだくじを書き始める。

「ほぅ?…確かに、あみだくじという手がありましたね…ご主人さま感謝します。」
3人の有左が同時に納得する。
「だから、ご主人さまと呼ぶなと言っているだろうが…ほれ、出来たぞ。」
有左達が影盛の手製のあみだくじに群がる。

同時に…右に…左に…っと有左達は首を傾げる。
そして、同時に線を選び、右、真ん中、左とそれぞれ書く。

「よし、開けるぞ…」
何故か影盛も若干、緊張気味である。

右の有左が選んだ線から辿っていくと…その結果は、黒のリボンであり、何処か寂しげな表情を見せる。

次に真ん中の有左が選んだ線を辿ると…その結果は、青のリボンだった為に…必然的に、左側の有左の結果も赤のリボンで決定する。

その瞬間、最初から赤色のリボンを選んでいた左側の有左が思わず、声にならない喜びと共に小躍りする。
そして、真ん中の有左は、落胆する。

「私が赤色を入手出来る確率は100%だったのです。」
小さな勝利を掴んだ赤のリボンの有左は、少しだけ誇らしげな顔を見せる。

長きに渡る勝負が終わった事に影盛が、安堵しているところに、ドアをノックする音が聞こえてくる…

「失礼します!先日から追っていた反逆者共の一人を捕えたとの報告が入りました。」
部下の一人が、敬礼と共に…影盛が担当していた一件に関する進捗を報告する。

「そうか、俺が直々に話を聞こう…お前達も付いてこい。」
その影盛の一言に対して、先ほどまでじゃんけんで受かれていた有左たちの表情が、真剣な面持ちに変わり、短く頷く。

ーーー

海軍のとある地下施設に投獄されているのは、青年である…
椅子に拘束されている彼は、身体中に拷問の跡が見られる。

そこに、影盛と有左たちが、コツコツ…っと足音を響かせながら近付いてくる。

「影盛中尉、ヤツはなかなか口を割りません。」
「そうか…まぁ、ここは俺が聞いてみようか…」
影盛のその一言を聞いた部下たちは、その場を離れる。

「私は、平影盛だ…君は?」
鉄格子越しに、捕らえられた青年と視線を合わせる。
「ふっ…たいらの人間か…あんたは、何も知らないのか?」
御三家の内の一つの名前を聞いた青年がようやく口を開く。

「何についてだ?」
異邦人ピルグリムがもたらした革新的な技術を独占し過ぎると、列強たちとの軋轢が深まって…滅ぼされるって話だよ。」
青年の言葉に耳を傾けた影盛は、少し考えてから口を開く。

「成る程…だから、君たちの一団は軍の基地を襲撃して…今、君の目の前にいる少女達の情報を盗もうとしたわけか…」
そう返した影盛が一瞬だけ、有左たちの方を見る。

「その通りだよ…いくら技術面で勝っていても、純粋な工業力と資源力で劣れば、この帝国は勝てないってことを何故、あんたら軍部は見抜けない?」
青年の言葉が強くなる。

青年と目線を合わしていた影盛は、背中を向ける。

「その一言は、国家反逆と名誉毀損に当たるぞ…」
その言葉を機に、部下たちが…青年を牢屋から別の場所へと連行していく…

ーーー

目隠しをされていた青年の視界に次に映った場所は、何処かの山の中だった…
ここは何処だ!っと声を上げようとするが、口元は布で覆われ猿ぐつわの状態の為に叶わない。

ドラム缶に拘束されている青年の目の前には、有左たち3人が佇んでいる…
そして、有左たちは黒い十字架を取り出す。

その十字架をよく見ると…十字の縦の部分がアンプルとなっており、中には赤色の液体が内包されている。
すると、有左たちは十字架の縦の部分の先端を齧り取り…その赤色の液体を飲み干す。

そして、有左たちは周囲の草木が揺らぐ程の絶叫を上げる。
突然の大声に呆気に取られる青年を一人にして、有左たちは姿を消す。

それから…数分後…青年の周囲に近付いてくる足音が複数、聞こえてくる…
その正体に感付いた青年は、声にならない絶望を漏らす。

「なんだ?仲間の声がしたと思いきや…人間メシじゃないか…」
「まぁ、いい…メシにするか…」
違和感を感じつつも寄って来た雷クモ達は、獲物に食らい付く。

「5体ですが、獲物に集まりました。」
青年が食われる様子を遠くから視認する兵士が、影盛へと報告する。

「そうか…今回は共鳴の能力のみを行使する為に、安全装置セーブトウブを有左たちに飲ませたが…効果は見られたようだな…」
双眼鏡で状況を確認した影盛は、振り上げた右手を勢い良く下ろし…別部隊に指示を出す。

すると、次の瞬間には…青年と雷クモ数体がいる場所に対して、轟音と共に砲弾の集中砲火が降り注ぐ。

そして、爆音が静まり…爆煙がモクモクっと漂うなか影盛が独り言を漏らす。

「お前たち、小わっぱが気付いている事を、軍部が見過ごす訳なんてないだろ…しかし、なぁ…2度も戦争を勝たせて貰った、我が帝国のパトロン達はすっかりと盲目となってしまったのだよ…」
影盛は、数日前に呼ばれた会食の最後に、成金達が灯りの代わりに紙幣を燃やす様を思い出しながら…心中を吐露する。
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