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序・第一夜 ひめごと
しおりを挟む男の眼前に、白装束に被われた娘が坐している。
乱れなく端正に造られた人形のように見える。
伏し目の娘は、男の視界から逃げるように少し離れ、自ら袴の緒を解く。戸惑いがちに膝行し、いざるようにしてふたたび男の目の前へ来る。
衣が肌蹴ぬよう懐あたりに手をあて、上身を起こしたまま、おずおずと男の腰の上に跨る。
白い花が舞い落ちるように、衣擦れの音しずかに男のひざの上に乗り身を寄せると、男の鼠径に娘の内腿のやわらかな肌があたる。
男には、この齢になるまで閨事の経験が無かった。今は幾分薄れてはいるが毒気が回り強ばった体で娘を見ている。女が閨でどんな顔をするのかさえ知らぬ。
男は床柱を背に、凭れ掛かるように座っている。
床柱をくるむよう敷きつめられた隈笹の上には布が被せられ、更にその上へ褥が重ねられている。手負いの男の胸にある傷の手あてのため、娘が心尽くしをして拵えた仮初めの座であろう。
娘は、男の袴の緒を解き、探り、辿り着いた先へ指を這わせる。
その目は伏せられたままで男の目を見ない。
娘はもう片方の手で、自らの花弁を指で押し開き、男の先端に触れ、花唇にあてがう。指先は袖に隠れ、白い腿が裾のあわいから覗く。
四肢に残る痺れのままに、男は娘に触れることもできず、娘の面を見る。
俯き苦しげに見えたが、唇は閉じられたまま歪むこともなく、ただひたすらに男を自分のなかへ迎え入れようとしている。
娘は僅かに前のめりになり、それでも男の胸の傷に触れぬよう不安定な姿勢のまま、不馴れな舟の川下りに怯えるように、男の上でぎこちなく揺れる。
娘の唇が薄くひらき、深く息を吸い、ふうと息を吐く。男の先端が娘のなかに飲まれると、娘の唇はふたたびきつく閉じられた。
強ばる四肢と裏腹に男の意識は冴え、眼前で起こることに戸惑いつつも、懸命に奮闘する娘がいじらしく抱きすくめたい思いに駆られながら、手負いの己れの体を呪った。
やがて慎ましやかな水音を聞く。娘のなかは抗い、吸いつき、壁を擦り、また抗い、くりかえし狭いなかへ男を導く。
男の首のうしろあたりへ蜘蛛の網のように快楽が這い上がる。
耐えがたい波が打ち寄せるのをこらえている。この娘をもっと見ていたい。刹那、ふと開かれた娘の瞳は潤んで、男の目をみて瞬き、きつく目を閉じる。
僅かに開かれた口に舌でも指でも
捩じ込みたい
娘は声にならぬ声をあげ、面をそむけるように仰け反り白い喉が覗く。男の思惑を遮るように何度も、何度も深く杭打つ。
娘のなかの肉は貫く男自身を包み、くちづけるように甘く吸い、鞘の肉が緊く搦まる。
男は娘のなかで果てた。
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