二つの異世界物語 ~時空の迷子とアルタミルの娘

サクラ近衛将監

文字の大きさ
78 / 99
第六章 それぞれの兆し

6-9 アリス ~ブラビアンカ本番と結婚の準備

しおりを挟む
 もう一つ、ハイスクールの吹奏楽部についても指導の依頼があった。
 ブラビアンカに出場する7チーム全部の指導を頼まれたのである。

 彼女たちは10月18日から三日間の予定でブラビアンカに出場するのである。
 そのため9月半ばにはメィビスに参集することが決っていた。

 しかしながら社交ダンス・コンテストは9月20日から25日までの予定で有るので、その間は難しく、残りの日程では7チーム全部の指導は無理なので、指導をしていない4チームだけを5日間、シュルツ校とランスロップ校について2日間、カインズ校については1日だけ請け負った。
 それでも20日間を要するのでぎりぎりである

 私達は、8月中はリレーの練習に、9月に入ってブラビアンカの陸上競技に、それが終わると社交ダンスに、それが終わってハイスクール生徒の演奏指導に、それらの合間に事業の準備にと大忙しであった。
 それでも日常のジョギングは時間を早めて変わらず続けていた。

 9月1日のブラビアンカ開会式は盛大なものであった。
 2日から始まった陸上競技で私たちは出場した全ての競技で金メダルを勝ち取った。

 世界記録はマイクが4つ、私が5つ更新しただけであったが、それ以上は望むべくもない。
 特にリレー競技で金メダルを取ったのが、チームにとっては最高の栄誉だった。

 私達が勝ち取った金メダルは16個、他の競技でも4つの金メダルを獲得して近年にない成果を残して、陸上競技大会は終えた。
 其の2日後、社交ダンス大会が始まった。

 こちらも前夜祭があり、色々と趣向を凝らした出し物があって遠来の出場者を和ませた。
 出場チームは45組と過去最大になった。

 このコンテストでも強豪であるビルブレン共産同盟とギデオン帝国の代表選手を抑えて私達が1位に輝いた。
 バッケス夫妻が運よく得意な曲に当たったために7位に食い込んだものの、他のディフィビア連合の代表選手は逆に難しい曲に当たって入賞できなかった。

 その後はハイスクールの生徒達を相手に奮戦し、そのおかげかどうか彼女たちはいずれも好成績を残した。
 7校全部が10位以内に入り、5校は7位までに入賞したのである。

 無論順当にカインズ校が1位、ランスロップ校が僅差で2位、シュルツ校が3位に入った。
 5位にエマーソン校、7位にディケンズ校が入った。

 4位以下は本当に僅差であり、オーソンズ校とドルトン校が入賞できなかったのは、残念なことであった。
 もう少し時間が有ればこの二校も7位までに食い込んでいたかも知れない。

 いずれにせよ上位三位までディフィビア連合が独占し、7位までに5校が入るなどブラビアンカ始まって以来の成績であり、協会関係者の喜びようは大変なものが有った。
 大会に参加した生徒達も貴重な経験を得て、大会が終了した後の祝賀会では、生徒達がかわるがわる挨拶に来て大変であった。

 何せ総勢で280名を超える数である。
 一人一人に短い言葉をかけても優に1時間以上はかかってしまう。

 そんな私達の傍には慣れない正装に身を包んだハーマンとサラが立ち、応対に忙しい私達と生徒の交流を微笑ましく見つめていた。
 10月30日、数々の記録と名勝負を人々の記憶に残して、ブラビアンカは終了した。

 既に各政体から送り出された代表団の半分ほどは帰途についているが、閉幕式には大勢の参加者が臨んだ。
 ブラビアンカの様子は二日遅れから四日遅れで各政体の星系にまで映像や音声が送られている。

 推計で1兆を超える人々がその映像に一喜一憂していただろう。
 いずれにせよ私とマイクは随分とホロ・ビジョンを賑わせたようだ。

 メィビスだけでなく多くの星系の人々が二人の活躍を見たのだから無理もないことではあるが、増々世間が狭くなった。
 一応の懸案が済んだので、私とマイクは12月の16日に結婚をすることにした。

 結婚式には、マイクの親族が訪れるし、クレアラスに来てからの知り合いもいる。
 私達は、シェラヌートン・ホテルを式場として選び、予約をしたのである。

 式場のスケジュールは混んでいたが、16日の夕刻6時からの分は空いていた。
 6時からの宴会場の利用は倍額になるので、避ける傾向が有ったようである。

 招待客はこれまで関わり合った人だけでもかなりの人数になる。
 それにマイクの親族一同が大挙してやってくるので400人規模の結婚披露宴を予定した。

 招待状の発送は一カ月前にすることになる。
 それと、忙しくなった7月、8月、9月は、ハーロック宝飾店へのアクセサリーの出品を毎月3個に減らしたのだが、9月のオークションではそれまでの三倍を超える買値に跳ね上がっていた。

 これはブーラ原理教会を除く各政体から来た富裕層がハーロック宝飾店のアリスの宝石箱を見て、オークションに参加したからであり、参加者が増えたために急遽ホテル会場を借り受けてオークションを実施したほどである。
 9月に引き続き、10月にも更に値が上がった。

 それらの富裕層が引き上げた11月には値が下がるかと思っていたが、逆に増えてしまったのである。
 理由は富裕層が何としてもアクセサリーを手に入れるべく、クレアラスに法定代理人を置いて毎月のオークションに参加し始めたからである。

 旅費が高いのでオークションに合わせてクレアラスに来ることはできないが、購入したものを貨物で送る分には左程の金額は要しない。
 たかだか50ミーロ程の重量であり、小さな宝石箱を含めても輸送費は5000ルーブから1万ルーブほどしかかからないからである。

 私の作ったアクセサリーは、一つが100万ルーブに達し、更に越えようとしていたのである。
 異常なことではあるものの需要が有って供給が少なければそのような状況も生まれるということである。

 私は、ハーロック宝飾店を訪れてベン・ハーロックさんと相談した。
 私が、ケルヴィスの生産を請け負って、他の工芸士に回してはどうかと提案したのだが、彼は暫く考えた後で言った。

「他の工芸士にも確かに腕のいい者は居るでしょうね。
 しかしながら、私としては最初に値を付けて頂いたお客様の信頼を裏切れません。
 彼らは希少価値があると判断して値を付けられた。
 今回購入された方もその価値を認められて購入された。
 決して今後の値上がりを見越して購入された方ではないのです。
 勿論、アリス嬢の知名度も少なからず影響されているとは思います。
 でも、そこで別の品が溢れてはいけないと思うのです。
 そうした中にはいい品もありますが、悪い品も当然に出てくる。
 アリス嬢が作られた品はとてもいいものばかりです。
 意匠が悪ければ、或いは造りが悪ければ、絶対にこのような高値はつけられません。
 私は正直申しましてこのような高値が付くとは思ってもいませんでしたから、ある意味で不本意ではございますが、受け入れるしかありません。
 ケルヴィスを使っていることは誰でも承知しております。
 オークションの度に私どもが繰り返し説明していることなのです。
 これでは一般の人にはとても手が出ないことは百も承知ですが、質を落とさないためには今のままの方が宜しいと思います。
 これは私どもの儲けのためではございません。
 むしろ、これ以上値が上がるならば、私どもの半額という手数料を引き下げるしかないと存じています。
 手数料にしては法外に過ぎますから、いずれ公正取引委員会の調査が入ると覚悟している次第です。
 特に、メィビスは自由貿易を謳っている政権です。
 生産者と購入者の間に入る我々が巨利を貪るのは制限されるべきと考えている筈なので、これまでの裁定から推測するにその限度が一品について50万ルーブ前後でしょう。
 既にその分を超えているものについては、アリス嬢の口座に振り込んであります。
 生産者が利益を蒙るのは当然なのですから、アリス嬢は既定の税金を納めれば宜しいのです。
 メィビスは、生産者所得については他の星系よりも税率が安いので、精々2割ぐらいが税金の対象になりますかな。
 ところで、いよいよMAカップルもご結婚なされるとか、おめでとうございます。」

「あら、どうしてそんなことを?」

「あ、御存じなかったですかな。
 今日発売されたル・ベラという週刊誌に出ております。
 式場を抑えられましたでしょう。
 そこからわかったようですよ。
 たまたま別のカップルが式場の予約に行ったとき、ホワイトボードに書かれたMAという文字で分かったようです。
 それが週刊誌の女性記者でしたのでね。
 あちらこちらを調査してこれは間違いないと記事にしたようです。」

「あら、まぁ、なんてこと。
 余り世間の注意を惹きたくないのですけれど・・・。」

「もうそれは無理ですよ。
 ブラビアンカであれほど活躍したお二人です。
 いっそのこと陸上競技場を借り切って隠れファンを呼んで式を挙げた方が良いぐらいです。」

 私は、そそくさとハーロック宝飾店を辞去し、サラと一緒に我が家へと急いだが、コンドミニアムの玄関先はマスコミで一杯であった。
 そのままシートに隠れるようにして地下駐車場に入り、そこから家に上がったのである。

 マイクと相談し、最終的にはネットで結婚の予定を掲載した。
 場所時間は知らせる必要もないが、そうすることで鎮静化を願ったのだが、大きな反響もあった。

 ネットにお祝いの言葉が沢山溢れたのである。
 その日からしばらくはジョギングも出来なかった。

 何とコンドミニアムの周辺の空き地に記者のテント村が出現したからである
 これから寒くなるのにご苦労なことではあるものの、当事者の私達にはいい迷惑にしか過ぎない。

 その分、ハーマンやサラそれにジェイムスを相手に格闘技の稽古やプールでの水泳、それにトレーニングマシーンの利用が多くなった。
 このところ、スモークガラスで内部が見えないようになっている古びたバンタイプの浮上車でマイクが仮事務所に出向いている。

 顔を出してしまうと身動きできなくなるほどの記者が集まって来るのでそうするしかないのである。
 ヘインズさんにまたお世話になることになった。

 ハーマンとサラは外出の際に必ず一緒にいるから既に顔を知られている。
 ジェイムスも同じである。

 カレンかルーシーを使ってもいいのだが、彼女らも捕まってしまう恐れがある。
 何しろ彼女たちは食事の材料など二人で外出をしなければならないからだ。

 彼女たちの存在はほとんどマスコミには知られていない筈だった。
 実際コンドミニアムの住人は少なからず後を付けられているようだ。

 流石に古いタイプでガース塗装店のロゴ入りのバンは見向きもされていない。
 何とかそれで済んでいるが、困ったものではある。

 マイクとアリスは両人ともに記者会見などする必要もないと思っているからなおさらである。
 結婚式の後は、旅行に出かけることにしている。

 場所は、メィビスの楽園とも称されるサンゴ礁の島、オールバンド島。
 メィビトレン大陸から6000セトランも離れた南海の小さな島なのだがサンゴ礁の海がとても綺麗な所であり、リゾートホテルが随所にあるところでもある。

 マリンレジャーに最適な場所でもある。
 そこのティワナ・ホテルに5泊6日の予定で宿泊をすることになる。

 その間使用人たちも旅行をするように言っている。
 ハーベンとサラは逆に北の島タブランドに行ってウィンタースポーツをする予定であるそうだし、ジェイムスとルーシーそれにカレンもメィビトレン大陸南西部の保養地に行く予定を立てている。

 ここのところジュイムスとルーシーは急接近しているようだ。
 それを知っているカレンは遠慮しようとしていたが、ジェイムスとルーシーはカレンも一緒に行こうと強く誘ったのである。

 私達が招待状を作って発送したのが11月の6日、知り合った人々でもあくまでメィビス在住の人に限っている。
 私の学生時代の友人は全部アルタミル在住で来るのに2カ月近くかかるからそこへは無論招待状は出さないがお知らせだけはした。

 コルナス在住のジルさんやクレア女史にも一応招待状を出した。
 驚いたことに招待状を出した名宛の全ての人が出席の通知をしてきた。

 ジルさんとクレア女史も共に夫婦で出席するという。
 売れっ子歌手のアイリーンは、予定をキャンセルしても出席すると電話で伝えてきた。

 プロダクションの関係者も全員が出席すると伝えてきた。
 ダイアン女史の方は電話で伝えてきた。

 約束通り花嫁衣装は任せなさいと言ってくれた。
 無論スタッフ一同もモデルまで含めて全員が出席である。

 ブラビアンカの関係では、陸上競技会、社交ダンス協会がいずれも参加を表明し、ハイスクール吹奏楽協会がシュルツ校とランスロップ校の生徒代表2名ずつを引き連れて参加するとしてきた。
 全部の人数を数えるとそれだけで350名を超えていた。

 マイクの親族は120名を超えるらしいので、合計すると470名を超えることになる。
 シェラヌートン・ホテルにその旨を伝えると、ホテル側は500名収容のホールでは手狭になるので少し広いかもしれないが800名収容のホールに変えてはどうかと伝えてきた。

 800名収容のホールは空いているのだそうだ。
 止むを得ず、そのホールに変えてもらった。

 シェラヌートン・ホテルでも500名に近い結婚披露宴は初めての事らしい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

俺! 神獣達のママ(♂)なんです!

青山喜太
ファンタジー
時は、勇者歴2102年。 世界を巻き込む世界大戦から生き延びた、国々の一つアトランタでとある事件が起きた。 王都アトスがたったの一夜、いや正確に言えば10分で崩壊したのである。 その犯人は5体の神獣。 そして破壊の限りを尽くした神獣達はついにはアトス屈指の魔法使いレメンスラーの転移魔法によって散り散りに飛ばされたのである。 一件落着かと思えたこの事件。 だが、そんな中、叫ぶ男が1人。 「ふざけんなぁぁぁあ!!」 王都を見渡せる丘の上でそう叫んでいた彼は、そう何を隠そう──。 神獣達のママ(男)であった……。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~

あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。 彼は気づいたら異世界にいた。 その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。 科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。

処理中です...