転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?

サクラ近衛将監

文字の大きさ
11 / 24
第二章 ハンターとして

2ー5 侯爵の依頼

しおりを挟む
 最初の患者もマザー・アリシアを良く知っている知人の人達だった。
 お年を召された方というのは、結構持病も多いのです。

 診療所の前に立てたポールに旗を掲げてすぐに、診療室にそうした人を順番に引き入れ、治癒魔法を施して行く。
 一人当たりの診療時間は、概ね五分以内にしている。

 一刻(約二時間)の間に診られる人数は、概ね二十人強だね。
 第一日目の終わりにエリアヒールを施す必要はありませんでした。

 但し、翌日は診療所の噂を聞き付けた人々が大勢診療所の前に並んでいました。
 優に50名は超えていたかもしれません。

 孤児院の子にお願いして、整理券を渡すようにしてもらっています。
 でも重篤じゅうとくな患者がいる場合には、そのお手伝いの子に教えてもらって、優先順位を上げるようにするんです。

 診療所に来る人にもわかるように、孤児院の子でお手伝いをしてくれる子には、赤い十字のマークが入った腕章を付けさせました。
 僅かに一刻程度の時間ですが、お手伝いをしてくれた子には大銅貨二枚の報酬を渡すことにしているんです。

 特に最後のエリアヒールに際しては、番号札と交換に金属の札を渡し、その代わりに大銅貨一枚をもらうのも、その子たちの仕事にしました。
 治療が終わって金属の札を回収するのもその子たちの仕事なのです。

 ◇◇◇◇

 仮設診療所は順調に稼働しています。
 但し、五日目には問題が生じました。

 診療所の前に騎士が数人現れ、きちんと並んでいる病人たちを押しのけて診療所に入り込んで来たのです。
 そうして俺の顔を見て偉そうに言いました。

「お前が、治癒魔法を使える小僧か?
 我らに今すぐついてこい。」

「お断りします。
 名乗りもせず、用件も言わず、まして病人を無理やり押しのけるような人の言うことなど聞けません。」

 そう言って患者に向かって、声をかけた。

「さぁ、もう大丈夫ですよ。
 今日はしっかり休んで下さい。
 明日には元気になっているでしょう。
 次の方どうぞ。」

 途端に騎士が怒り出した。

「貴様ぁ、我らを無視するかぁ。
 一体誰だと思っているんだ。」

「さぁ、知りませんね。
 ろくでもない貴族様の家臣でしょうか?」

「ふざけるな。
 我らはダイノス侯爵家の直臣だ。
 侯爵家より命ずる。
 我らに従え。」

「先ほども言いました。
 お断りします。
 あなたが、例え王家の近衛兵であって、それが王家の命令であってもお断りします。
 私に用があるのなら病人をここへ連れてきなさい。
 さすれば誰であろうと診てあげます。
 それ以外の要求には応じません。
 分かったならとっととお帰り下さい。」

「貴様ぁっ。」

 そう言って怒鳴りながら殴り掛かった騎士だが、その手が俺に触れる前に身体が電撃に打たれ、その場で倒れて硬直しながら痙攣している。
 周囲に居る精霊がそんな騎士の無法を許すわけがない。

 一瞬で死ぬような魔法を使われなかっただけ幸いと思わねばならないだろう。
 僕が日頃から、手を出すときは死なないように加減してねとお願いしているんだ。

「帰りなさいと言っているのがわからないのですか?
 あなた方が診療の邪魔ですから、どうしても帰らないと言うのならば実力を行使します。
 それでも良いなら私にかかってきなさい。
 但し、ここであなた方が揃って打倒されたなら、ダイノス侯爵なるお方の名誉に関わりますよ。
 それを承知ならばどうぞかかってきてください。」

 そう言って騎士達だけに限定してかなりの強さで威圧を掛けると、流石に他の騎士はビビったようだ。
 未だにしびれて硬直したままの男を二人で抱えて、彼らはあたふたと去って行った。

 さてさて、この手の話は二番手、三番手があるのだろうな。
 目立ちたくないけれど、場合によってはひと暴れすることになるのかな?

 まぁ、余り大騒ぎになれば、適当なところでトンヅラするしかないかもしれないね。
 王家の忌み子が、誰も知らないことを良いことに、外れとは言え王都に居るのがそもそもの間違いなのかも知れないから・・・。

 もし出て行くならどの方向かな?
 マザー・アリシアには予め王都を去るかもしれないことを断っておこう。

 仮にこの国でお尋ね者になるのなら別の国を目指すだけの話だ。

 ◇◇◇◇

 翌日の午後、いつものように定刻になったのでポールに十字の旗を掲げていると、広場の端に立派な馬車が止まっているのが見えた。
 昨日見た騎士と同じような服装の人が数人その馬車の周囲に居る。

 うん、これは昨日の続きか新手の二番手だなと俺はそう思った。
 だが、意外なことに執事バトラーと思しき人物が馬車から降りてきて列に並んだのだ。

 列は10人足らずだから、1時間と待たずにその人物の順番になるだろうが、彼が病人とは思えない。
 順番に治療を進めて行き、やがてその執事が診療所の入り口に顔を出した。

 但し、その背後に貴族と思しき人物が立っていた。
 執事が言った。

「私はセンドリックと申し、ダイノス侯爵家の執事をしております。
 昨日は当家の騎士がこちらで無礼を働いたと聞き及んでいます。
 ここに居られるのは、私の主であるダイノス侯爵でございます。
 昨日の部下の非礼をびるとともに、侯爵直々にお願いの筋があり、ここに参りました。」

 そこで侯爵が前に出て行った。

「私は、ブキャナン・ディル・フォン・ダイノス、王家より侯爵を拝命しておる。
 昨日は家臣が失礼をした。
 心よりその非礼を詫びる。
 しかしながら、この場に病人を連れて来ることがどうしても不可能な故に、其方に邸に来てもらい治療に当たってもらいたいのだが、その点如何なものだろうか?」

 貴族であろうとなかろうと、真摯しんしな態度で救いを願う人には相応の対応をしなければいけませんよね。

「私は、リックと申します。
 一介のハンターであって、治癒魔法を使える平民にしか過ぎません。
 恐れ入りますが、侯爵の地位にあるお方なれば、教会所属の高名な聖職者の治癒師を自宅にお招きすることも簡単なはずですが、何故に市井しせいいやしき治癒師を頼られますのか?」

「確かに王都でも高位の聖職者を邸に招いて治癒に当たってもらったが、彼らでは治せないとされた不治の病なのだ。
 しかしながら、其方はかつて聖女が使ったと言われる伝説のエリアヒールが使えるとも聞き及んだ。
 なれば高位の聖職者よりも治癒師としての能力が高いのではという我らの勝手な思い込みじゃ。
 くだんの高位の聖職者の見立てでは、後三日持つかどうかといわれている命じゃ。
 しかしながら、我妻が残したたった一人の愛娘まなむすめ故に何としても死なせたくない。
 侯爵ではなく、一人の親として頼む。
 どうか、どうか娘を助けてはくれまいか?」

「お嬢様をお助けできるという保証はありませんが、とりあえず私が診ることはできましょう。
 一刻を争う事態でなければ、ここでの診療が終わってからお屋敷に参りたいと存じますがそれでもよろしいでしょうか?」

 侯爵は、しっかりとうなずいた。
 執事が言った。

「では、旦那様はひとまずお屋敷へ。
 私がリック殿を邸までお連れ申します。」

 侯爵は馬車に乗って去って行き、診療所の脇には騎士一人と執事のセンドリックさんがその後の一時間余りを待っていた。
 最後に残った数名にエリアヒールをかけて、旗を降ろしながら執事と騎士に声をかけた。

「ここでの今日の診療は終えました。
 お屋敷に参上したいと存じますので、案内をお願いします。」

 執事は頷き、俺を広い通りに案内すると辻馬車を拾った。
 三人が乗ると馬車は貴族街へ向かって走り始めた。

 やはり貴族街まで徒歩で行くには時間がかかるようだ。
 何せ都市の中央にある王宮の反対側に貴族街があるのだから。

 それでも日没後の夕焼けの陽が残り、完全に暗くなる前までにはお屋敷に着いた。
 執事の案内でお屋敷に入り、まっすぐに二階の一室に案内された。

 部屋に入る前にひどい違和感を覚えた。
 鑑定をかけて、それが呪いの一種であることを確認していた。

 これは病気ではなく呪いなのか?
 部屋に一歩入り、死臭のような腐臭を感じ取った。

 確かに病人が死にかけている。
 しかも身体のあちらこちらが腐敗し始めている。

 これは何だろう?
 梅毒が末期になると患部のあちらこちらが腐敗を始めるというがそれに似ている。

 寝台に寝かされているのは女性であり、しかも若い、と言うよりは幼いのか?
 多分、身長からすれば俺と同じぐらいだが、いつ発病したかにもよる。

 例えば発症して以後発育が止まっている可能性もあるのだ。
 何せ露出して見えている腕や手は枯れ木のようにやせ細っており、十分な栄養が取れているとは思えないのだ。

 傍にはメイドが二人と侯爵がうつろな目で待機している。
 俺は、最初に精霊たちにお願いして部屋を調べ始めた。

 次いで寝台の周りを調べ、そうして寝台の上の患者を調べたのだ。
 精霊と俺が見つけた問題は三つあった。

 一つは、寝台の真上の天井に呪具じゅぐが見つかった。
 二つ目は、寝台の中に同じく呪具があった。

 最後に問題なのは、体の中に呪具が埋め込まれていたことだ。
 一体誰がこんなことをしたのだろうと思いながら、公爵とその周囲に居る人に尋ねた。

「ここに居る皆さんにお尋ねしますが、この周囲には三つの呪具があるのですけれど、それが置かれている理由をご存じの方はいらっしゃいますか?」

 侯爵が反応した。

「呪具とは?
 まさか、呪いの魔道具のことか?」

「はい、左様です。」

「まさか、そんなものが、・・・。
 あろうはずも無いのに・・・。
 一体どこにあるというのだ?」

在り処ありかはすぐに教えられますが、それに触れること自体も大変危険ですので、予め解呪かいじゅを成してからの方が良いかと存じます。
 ですから場所がわかってからも無暗に触れないようにしてください。
よろしいですね。」

 その場に居る全員がうなずいた。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢は鏡映しの夢を見る

重田いの
ファンタジー
とあるファンタジー小説の悪役令嬢の身体の中に入った日本人の社畜の魂である「私」。 とうの悪役令嬢は断罪イベントの衝撃で死んでしまったあと。 このままいけば修道院に押し込められ、暗殺されてしまう! 助けてくれる男はいないので魔物と手を組んでどうにかします!! ほぼ一人で奴らをみなごろすタイプの悪役令嬢です。

転生して捨てられたけど日々是好日だね。【二章・完】

ぼん@ぼおやっじ
ファンタジー
おなじみ異世界に転生した主人公の物語。 転生はデフォです。 でもなぜか神様に見込まれて魔法とか魔力とか失ってしまったリウ君の物語。 リウ君は幼児ですが魔力がないので馬鹿にされます。でも周りの大人たちにもいい人はいて、愛されて成長していきます。 しかしリウ君の暮らす村の近くには『タタリ』という恐ろしいものを封じた祠があたのです。 この話は第一部ということでそこまでは完結しています。 第一部ではリウ君は自力で成長し、戦う力を得ます。 そして… リウ君のかっこいい活躍を見てください。

【完結】竜騎士の私は竜の番になりました!

胡蝶花れん
ファンタジー
ここは、アルス・アーツ大陸。  主に5大国家から成り立つ大陸である。  この世界は、人間、亜人(獣に変身することができる。)、エルフ、ドワーフ、魔獣、魔女、魔人、竜などの、いろんな種族がおり、また魔法が当たり前のように使える世界でもあった。  この物語の舞台はその5大国家の内の一つ、竜騎士発祥の地となるフェリス王国から始まる、王国初の女竜騎士の物語となる。 かくして、竜に番(つがい)認定されてしまった『氷の人形』と呼ばれる初の女竜騎士と竜の恋模様はこれいかに?! 竜の番の意味とは?恋愛要素含むファンタジーモノです。 ※毎日更新(平日)しています!(年末年始はお休みです!) ※1話当たり、1200~2000文字前後です。

事故に遭いました~俺って全身不随?でも異世界では元気ハツラツ?

サクラ近衛将監
ファンタジー
 会社員の俺が交通事故に遭いました。二か月後、病院で目覚めた時、ほぼ全身不随。瞼と瞳が動かせるものの、手足も首も動かない。でも、病院で寝ると異世界の別人の身体で憑依し、五体満足で生活している。また、異世界で寝ると現代世界に目が覚めるが体の自由は利かない。  睡眠の度に異世界と現代世界を行ったり来たり、果たして、現代社会の俺は、元の身体に戻れる方法があるのだろうか?  そんな男の二重生活の冒険譚です。  毎週水曜日午後8時に投稿予定です。

僕に仕えるメイドは世界最強の英雄です1~またクビになったけど、親代わりのメイドが慰めてくれるので悲しくなんてない!!~

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
仕事を失い、居場所をなくした青年。 彼に仕えるのは――世界を救った英雄たちだった。 剣も魔法も得意ではない主人公は、 最強のメイドたちに守られながら生きている。 だが彼自身は、 「守られるだけの存在」でいることを良しとしなかった。 自分にできることは何か。 この世界で、どう生きていくべきか。 最強の力を持つ者たちと、 何者でもない一人の青年。 その主従関係は、やがて世界の歪みと過去へと繋がっていく。 本作は、 圧倒的な安心感のある日常パートと、 必要なときには本格的に描かれる戦い、 そして「守られる側の成長」を軸にした 完結済み長編ファンタジーです。 シリーズ作品の一編ですが、本作単体でもお楽しみいただけます。 最後まで安心して、一気読みしていただければ幸いです。

精霊が俺の事を気に入ってくれているらしく過剰に尽くしてくれる!が、周囲には精霊が見えず俺の評価はよろしくない

よっしぃ
ファンタジー
俺には僅かながら魔力がある。この世界で魔力を持った人は少ないからそれだけで貴重な存在のはずなんだが、俺の場合そうじゃないらしい。 魔力があっても普通の魔法が使えない俺。 そんな俺が唯一使える魔法・・・・そんなのねーよ! 因みに俺の周囲には何故か精霊が頻繁にやってくる。 任意の精霊を召還するのは実はスキルなんだが、召喚した精霊をその場に留め使役するには魔力が必要だが、俺にスキルはないぞ。 極稀にスキルを所持している冒険者がいるが、引く手あまたでウラヤマ! そうそう俺の総魔力量は少なく、精霊が俺の周囲で顕現化しても何かをさせる程の魔力がないから直ぐに姿が消えてしまう。 そんなある日転機が訪れる。 いつもの如く精霊が俺の魔力をねだって頂いちゃう訳だが、大抵俺はその場で気を失う。 昔ひょんな事から助けた精霊が俺の所に現れたんだが、この時俺はたまたまうつ伏せで倒れた。因みに顔面ダイブで鼻血が出たのは内緒だ。 そして当然ながら意識を失ったが、ふと目を覚ますと俺の周囲にはものすごい数の魔石やら素材があって驚いた。 精霊曰く御礼だってさ。 どうやら俺の魔力は非常に良いらしい。美味しいのか効果が高いのかは知らんが、精霊の好みらしい。 何故この日に限って精霊がずっと顕現化しているんだ? どうやら俺がうつ伏せで地面に倒れたのが良かったらしい。 俺と地脈と繋がって、魔力が無限増殖状態だったようだ。 そしてこれが俺が冒険者として活動する時のスタイルになっていくんだが、理解しがたい体勢での活動に周囲の理解は得られなかった。 そんなある日、1人の女性が俺とパーティーを組みたいとやってきた。 ついでに精霊に彼女が呪われているのが分かったので解呪しておいた。 そんなある日、俺は所属しているパーティーから追放されてしまった。 そりゃあ戦闘中だろうがお構いなしに地面に寝そべってしまうんだから、あいつは一体何をしているんだ!となってしまうのは仕方がないが、これでも貢献していたんだぜ? 何せそうしている間は精霊達が勝手に魔物を仕留め、素材を集めてくれるし、俺の身をしっかり守ってくれているんだが、精霊が視えないメンバーには俺がただ寝ているだけにしか見えないらしい。 因みにダンジョンのボス部屋に1人放り込まれたんだが、俺と先にパーティーを組んでいたエレンは俺を助けにボス部屋へ突入してくれた。 流石にダンジョン中層でも深層のボス部屋、2人ではなあ。 俺はダンジョンの真っただ中に追放された訳だが、くしくも追放直後に俺の何かが変化した。 因みに寝そべっていなくてはいけない理由は顔面と心臓、そして掌を地面にくっつける事で地脈と繋がるらしい。地脈って何だ?

俺を凡の生産職だからと追放したS級パーティ、魔王が滅んで需要激減したけど大丈夫そ?〜誰でもダンジョン時代にクラフトスキルがバカ売れしてます~

風見 源一郎
ファンタジー
勇者が魔王を倒したことにより、強力な魔物が消滅。ダンジョン踏破の難易度が下がり、強力な武具さえあれば、誰でも魔石集めをしながら最奥のアイテムを取りに行けるようになった。かつてのS級パーティたちも護衛としての需要はあるもの、単価が高すぎて雇ってもらえず、値下げ合戦をせざるを得ない。そんな中、特殊能力や強い魔力を帯びた武具を作り出せる主人公のクラフトスキルは、誰からも求められるようになった。その後勇者がどうなったのかって? さぁ…

異世界転生 剣と魔術の世界

小沢アキラ
ファンタジー
 普通の高校生《水樹和也》は、登山の最中に起きた不慮の事故に巻き込まれてしまい、崖から転落してしまった。  目を覚ますと、そこは自分がいた世界とは全く異なる世界だった。  人間と獣人族が暮らす世界《人界》へ降り立ってしまった和也は、元の世界に帰るために、人界の創造主とされる《創世神》が眠る中都へ旅立つ決意をする。  全三部構成の長編異世界転生物語。

処理中です...