転生したら幽閉王子でした~これどうすんの?

サクラ近衛将監

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第二章 ハンターとして

2ー14 隣国の王族 その三

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 サルバドル王国のクロイゼル王太子殿下を診たリックは、傍にいた国王夫妻や宰相に問いかけた。

「私のたてを申し上げますと、クロイゼル王太子殿下の病状は、病ではなく呪いによるものと思われます。
 その解呪は可能かと存じますが、これほど強い呪いだと少々時間を要するかもしれません。
 それと、この呪いをかけた術者が必ず存在しますが、解呪をすると当該術者に呪いが返ります。
 おそらくは解呪と同時にその者は死ぬことになりますが、それはよろしいでしょうか?」

 国王が眉をひそめて言った。

「王太子に呪いじゃと?
 一体誰が・・・・。
 あ、いや、それはともかく、解呪するとその呪術者が死ぬのじゃな。
 事前にその者が誰かを知ることはできぬのか?」

 リックにできないわけでは無いが、面倒ごとに巻き込まれることになるのが御免だ。
 だから、リックは嘘をついた。

「今回の場合、解呪の前に、術者を探すのは非常に難しいと存じます。
 それとも、王子殿下をこのまま放置して術者を探すことを優先いたしますか?」

 それを聞いて慌てて、王様が言った。

「いや、無論、王太子の快癒かいゆが優先じゃ。
 術者については、別途探ることにいたそう。
 其方は、是非とも解呪をしてくれい。」

 リックは小さく頷くと、その場で解呪を始めた。
 強い呪術ほど解呪には時間がかかる。

 結局、王子の解呪には一刻以上もかかった。
 そうして解呪が成功した時に、キーンという甲高い音が王宮内に響き渡った。

 その時点で、王都の一画ですさまじい叫び声をあげて、一人の男が死に至った。
 当然に不審に思った近隣の住民が衛士に届け出て、後に衛士が身体中に黒い斑点を浮かばせ、苦悶の表情を見せたままの魔法師の死体を発見したのである。

 後刻、このことが王宮にも知らされて、呪術を行った者が、闇属性の魔法師でベレットなる男と判明した。
 というのもその男の住処に、とある人物からの依頼書が残されていたのである。

 その依頼書に名指なざしされていた人物は、既に病気で亡くなっていた(表向き病死と見做されている)が、死因に不審な点があって衛士が捜査中のものであったのだ。
 しこうして、王家からの特命もあって、この人物と交際のあった人物が根こそぎ調べられた。

 また、特命後の再捜索の結果、死んだ呪術師の家の地下に巧妙に隠されていた書類が発見され、その書類からサルバドル王国の大公の名前が挙がったのである。
 最終的に当該大公については、裁判も無されずに、王家の陰の組織により密かに処断されたのであるが、それはリックがサルバドル王国を発ってから二月後のことであった。

 時間をさかのぼると、リックは解呪後のクロイゼル王太子の経過を見るために王宮に一日泊まったのだった。
 解呪とほぼ同時に容態が回復し始め、体力は低下していたものの、王太子の健康に問題は無いと判断されたので、リックは翌日にはサルバドル王国の王都を発ったのである。

 因みに、リックが請求した代金は、診療費が大銅貨一枚、途中の宿泊代や運賃は全て王家持ちなので、一日分の日当が大銅貨一枚として往復分と王都滞在中の分で十七枚、併せて小銀貨1枚と大銅貨八枚が請求されたのである。
 王家では多額の礼金を払おうとしたが、それはリックによって、丁重に断られた。

 ノルディック公国の王太后の際も同様の支払額と聞いていたので、止むを得ずサルバドル王国は引き下がったが、同時に前例もあることから、サルバドル王国からも勲章と名誉爵位の授与をすべく、再度ハーゲン王国に使者を立てたのである。
 そのため、リックが診療所に戻って二か月後には、サルバドル王家からわざわざ宰相が出向いてきて、リックに勲章の授与と、名誉伯爵の叙爵がなされたのである。

 これにより、リックはハーゲン王国以外の二つの国家から名誉伯爵の爵位を得たことになる。
 隣国二カ国から名誉伯爵の授与がなされるに及んで、流石にハーゲン王国でも捨て置けず、急遽きゅうきょ法を改めて、特段の功績を持って国に貢献した者については名誉職としての爵位を与えるとしたのである。

 サルバドル王国の爵位授与から二か月後、ハーゲン王国からもリックに対して名誉伯爵の叙爵がなされることになり、この時ばかりはリックが王宮に参内せざるを得なかった。
 この時初めてリックは、自分の親と対面したことになる。

 これに驚喜したのはクラウディア嬢である。
 リックに外国ではなくハーゲン王国の名誉伯爵の地位があれば、クラウディア嬢の嫁ぎ先として何の問題も無い筈なのである。

 後は、1年以内にリックとの婚約までこぎつけられるかどうかが切実な問題であった。
 さもなければ、クラウディア嬢も13歳になってしまうことから、社交界で『行き遅れ』と揶揄(やゆ)されることになりかねないからである。

 その代わりに婚約さえ済ませておけば、その相手(貴族に限る)がどんなヒヒ爺であろうと、非難めいた揶揄やゆは無くなるのである。
 但し、クラウディア嬢の思っているようには必ずしも運ばない問題もある。

 クラウディアは、ダイノス侯爵家のたった一人の跡取り娘であり、彼女は嫁に行くのではなく婿を取らねばならないのだ。
 嫁に行くのであれば、リックの下に嫁いでも構わないが、逆にリックに婿として来てもらうならば、リックに侯爵の地位も継いでもらわねばならない。

 リックが名誉伯爵になったことで、婿となる資格を得たものの、リックが侯爵になることを望むかどうかは別の問題なのである。
 クラウディアは、後に父ダイノス侯爵に相談して、その問題を初めて知ることになった。

 実際のところ、侯爵の地位を継いでもなお、リックの診療所を続けられるかというと、それはかなり難しいのである。
 貴族の慣行というものがある以上、余り他の貴族に比べて奇抜な言動は慎まねばならないし、平民の中に紛れ込むことは慎まねばならないものなのだ。

 貴族家当主が庶民の診療に当たる行為は、まさしくそれにあたるだろう。
 尤も、貴族家の嫁が、領民に対して施しを為したり、治癒魔法を行使することは慣例上許容されてはいる。

 一つには、過去において貴族家に嫁に入った聖女の言い伝えが残っているからである。
 当該聖女は人妻となった後でも、多くの人々の治癒に当たり、たくさんの命を救ったのである。

 しかしながら、男性である貴族の当主自らが治癒行為を為すことは、戦時等非常時にしか前例がない。
 果たしてリックがそのような貴族のしがらみについてどう思っているかまでは、クラウディアも確認はしていないのである。

 ダイノス侯爵は、次善の策として三人目の妻を迎えることも考えていた。
 侯爵自身は未だ子をなせる年齢であり、相応の身分の女性が居れば妻として迎え入れることは可能なのである。

 但し、未婚女性となるとクラウディアのいくつか上の年齢となり、嫁取りができないわけではないが、前妻同様のしこりが残ってしまう恐れもあったので大いに悩んでいるのである。
 今一つ養子を迎える手もあるのだが、あいにくと近親者で侯爵家の養子としてふさわしい人物が見つからないのである。

 他の貴族家からの養子となると、これまた派閥争いから相応の根回しと慣行が障害になるのである。
 いよいよとなれば、面倒でも動かざるを得ないとは思っているものの、何となくその気になれないでいる侯爵だった。

 ◇◇◇◇

 ダイノス侯爵家父子のそうした葛藤を知らぬリックは相も変わらぬ定常的な生活を続けている。
 今年初めには数えで13歳となり、成人となったことから、ハンターギルドで9級から8級へと昇格し、相応の依頼も受けられるようになっているのだが、診療所を頼りにしている人が多くなったことで、遠出が必要なクエストや泊りがけのクエストはできるだけ受けないようにしているのだ。

 リックの転移能力から言えば本来必要もないけれど、専用の馬を購入して診療所近くで飼っていることから、馬を使って可能な範囲で遠出して、それなりのクエストをこなしている。
 今年に入ってからのクエストの達成貢献度だけで7級へも昇格も目前である。

 ハンターギルドでは、12級から9級までが『見習い』、8級から7級までは『駆け出し』、6級から4級までは『中級』、3級から1級までが『上級』に区分されている。
 従ってリックの立ち位置では駆け出しの中位程度なのだが、ギルドでは大いに期待されている新人である。

 ギルドの規定では、最低でも昇格してから半年間は次の昇格ができないことになっているために、成人を迎えてからのリックの貢献度は既に7級に値するほどのものだけれど、8級昇格から半年を経ないと7級に昇格させられないのである。
 この分で行けば、今年半ばで7級となり、来年早々には6級になるだろうとギルド関係者は予想していた。

 何しろ、薬草採取のクエストだけでも、非常に採取が難しい稀な薬草を採取してくれるために、その貢献度は群を抜いているのだ。
 また、リックの場合、薬草採取の傍らで魔物を討伐しているのだが、これが平均して中程度の魔物が三匹以上になり、たまに上級クラスに属する魔物が討伐されていることさえあるのだ。

 リックが受けるクエスト自体は薬草採取を請け負っているのだが、採取中に魔物に襲われると自衛のために魔物を討伐することになり、魔物討伐のクエストを請け負ったのではないにもかかわらず、リックの魔物討伐数は多いのだ。
 ソロで活動している者であって、8級もしくは7級の駆け出しハンターでリックに並ぶ者は居ない。

 従ってハンターギルドからは大いにその将来が嘱望されている若手ハンターなのだ。
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